「昨年より10%は良い」カーインライジングが豪州到着、静寂の中で“ジ・エベレスト連覇”へ遠征が始動
カーインライジングが約16時間の輸送を経てシドニーに到着。デヴィッド・ヘイズ調教師は、ジ・エベレスト連覇を目指す世界最高レーティング馬について、「控えめに見ても昨年より10%良くなった」と語った。
「昨年より10%は良い」カーインライジングが豪州到着、静寂の中で“ジ・エベレスト連覇”へ遠征が始動
カーインライジングが約16時間の輸送を経てシドニーに到着。デヴィッド・ヘイズ調教師は、ジ・エベレスト連覇を目指す世界最高レーティング馬について、「控えめに見ても昨年より10%良くなった」と語った。
2026 09 22カーインライジングが前回、オーストラリアの競馬場に姿を現したとき、熱狂的な観客から浴びせられたのはブーイングだった。大一番で対戦相手に野次を飛ばす、熱の入ったフットボールファンを思わせる反応だった。
それから11カ月。鉛色の空が広がる午前7時8分、香港競馬界が誇る伝説的名馬は、シドニーの別の競馬場に、軽やかな足取りで姿を現した。見守るのは関係者、記者、カメラマンら十数人ほど。街の大半は、ようやく眠りから覚めようとしていた。
そこには、にぎやかな歓声も野次もなく、聞こえてくるのはほとんど静寂だけ。世界最高の競走馬は、豪州に戻ってきてから初めて脚を伸ばした。
カーインライジングは、デヴィッド・ヘイズ調教師が拠点を構えるシャティン競馬場の厩舎から、豪州・カンタベリーパーク競馬場の検疫施設まで、16時間に及ぶ長距離輸送を終えたばかりだった。
来月、賞金総額2000万豪ドル(約22億円)のジ・エベレストで連覇を狙うカーインライジングにとって、今年もここが滞在拠点となる。この朝は、速歩になるかならないかというほどの軽めな運動に留めた。
数々の記録を塗り替えてきたカーインライジングだが、この日は別の新記録に挑んでいるかのようだった。これほど速い馬を、これほどゆっくり動かした例があるだろうか。運動不足気味の競馬ファンでも、スニーカーを履けば隣でついていけただろう。
調教助手はカーインライジングを外ラチ沿いに進ませ、ごく軽い運動でコースを2周半。400メートル地点で引き返し、26分後に厩舎へ戻った。すべて予定どおりだ。
ヘイズ調教師はその後、調教の意図をこう説明した。「来月のバリアトライアルへ向けて、ゆっくりした運動の時間を延ばしていきます。ジ・エベレストに備え、今シーズンずっと続けてきたことです」
ヘイズ師ほど前向きな人は、そう多くない。昨年のジ・エベレストでは、カーインライジングはロイヤルランドウィック競馬場で地元豪州の一流スプリンターたちを難なく退けた。そして今回、ヘイズ師は調教後わずか数分のうちに、同馬を「控えめに言っても昨年より10%良くなった」と評価した。
月曜日、カーインライジングは輸送を終えてカンタベリー競馬場へ到着すると、すぐに頭を下げた。眠るためではなく、地面の草を食むためだ。
「危うく、厩務員まで引っ張っていくところでした」とヘイズ師は笑った。「香港では草を目にする機会がありませんからね。昨年も草を食むのを本当に喜んでいました」
長時間に及んだ長距離輸送を経て体重計に乗ると、減ったのはわずか5キロ。元々、今シーズンのカーインライジングは昨年より7キロ重い。体温は正常で、食欲も落ちていない。どちらも合格だ。
「先ほど獣医師と話したのですが、昨年より輸送にうまく対応できたと感じているそうです」とヘイズ師は説明する。「昨年も問題はありませんでしたが、一度経験した分、私たちも慣れていますから」
「今シーズンは昨年より馬体重が重く、それは私にとって大きな好材料です。海外への輸送で過信は禁物です。それでも、これから進める調整には自信があります」
世界最高賞金の芝競走まで1カ月を切った。しかし、10月17日の決戦への出走が正式に決まっているのは、カーインライジングを除けば、マイケル・フリードマン調教師が管理するニンジャだけだ。
昨年の2着馬テンプテッド、ロイヤルアスコット開催で3着以内に入ったジョリースター、実力派3歳馬のゲストハウスなど、豪州のトップスプリンターたちも出走が見込まれるが、挑戦を表明した馬はまだ少ない。
カーインライジングの存在が、ライバルの参戦をためらわせているのだろう。ブックメーカーは同馬の前売りオッズを1.35倍の大本命に据えている。ここを勝利すれば「22連勝」となる一戦だ。
では、ライバルはどこから現れるのか。
「そのことはまったく気にしていません」とヘイズ師は話し、昨年のジ・エベレスト以降にカーインライジングがシャティン競馬場のコースレコードを更新し続けてきたことを引き合いに出した。
「昨年は、その強さが遠征先でも通用するか、皆が気にしていました。今年はさらに良くなっていると確信しています」
「今年のスプリンターたちのことは注意深く見ていますし、優秀なライバルがいるのは間違いありません。ただ、私の見方としては、相手はかなり力をつける必要があります。こちらが少し調子を落とさなければ、逆転は難しいでしょう」
「そして、この馬が調子を落としているとは思いません」
ヘイズ師は昨年と似た手順で調整を進め、本番前の10月6日にカーインライジングをバリアトライアルに出す予定だ。
昨年のバリアトライアルでは、神経を高ぶらせたカーインライジングが期待を下回る走りを見せ、大きな騒ぎとなった。数日後には、馬の状態が悪くジ・エベレストを回避するかもしれないという憶測がネット上に広がった。ブックメーカーのオッズは急上昇し、やがて前売り馬券の取引は全面的に停止された。
しかし、当のヘイズ師によれば、カーインライジングに問題はまったくなかった。
「問題ないと皆さんに納得してもらうまで、おそらく10日ほどかかりました」とヘイズ師は昨年を振り返る。
「レース当日、装鞍所で準備をしているときには大勢の人が見に来ていました。それからコースに出ると、私は少し驚きました。観客からブーイングを浴びたんです。それも、かなり大きな声でした」
「でも勝った後は温かく迎えてくれました。今年は一般のファンにも、もっと温かく迎えてもらえればと思います」