Aa Aa Aa

カーインライジングを警戒する声はあちこちから次々と上がっている。高松宮記念を制したスプリンター、サトノレーヴを管理する堀宣行調教師もその一人だ。

焦点は、世界最強スプリンターに対し、再び挑戦状を突きつけるべきか否か。4月末に開催されるG1・チェアマンズスプリントプライズを前に、サトノレーヴに届いた招待を受けるべきか慎重に検討している。

堀調教師は香港遠征の名手としても知られている。モーリスは香港遠征でG1・3勝を挙げ、さらにネオリアリズム、サトノクラウン、タスティエーラでもシャティン競馬場で大きな勝利を収めてきた。

モーリスは10年前のG1・香港マイルを制した際、当時の香港競馬を代表する名チャンピオンだったエイブルフレンドを真っ向勝負で撃破。それでもなお、香港をよく知るトレーナーは、今回直面するのはそれとは全く異なる任務だと理解している。

堀宣行調教師は「カーインライジングは非常に強い馬で、ここまで何回か一緒にレースで走らせていただいて、本当にもう手が届かないところにいるなという印象です」と、日曜に中京で行われたG1・高松宮記念でサトノレーヴが勝利した直後に語った。

調教師の言葉は現実主義そのものだった。昨年10月、地元香港での勢いそのままに短距離王国のオーストラリアへと乗り込み、世界最高賞金のスプリント戦であるG1・ジ・エベレストを制したカーインライジング。あの快速馬を相手に、再び厳しい戦いを強いられることを認めた上での発言だ。

デヴィッド・ヘイズ厩舎のカーインライジングは現在18連勝中で、サイレントウィットネスが築き上げた旧香港記録の17連勝を現在進行形で更新している。

さらに、カーインライジングはサトノレーヴをこれまで3度破っており、その中にはサトノレーヴを2馬身1/4差の2着に退けた昨年のチェアマンズスプリントプライズも含まれる。直近の対戦となった昨年12月のG1・香港スプリントでは、日本勢は総じて精彩を欠き、同馬も8馬身以上離された9着に終わっている。

Dual Takamatsunomiya Kinen winner Satono Reve
SATONO REVE / G1 Takamatsunomiya Kinen // Chukyo Racecourse /// 2026 //// Photo by Grant Courtney

サトノレーヴの高松宮記念連覇は、同馬が日本最強スプリンターであることを改めて裏づけた。昨年6月のロイヤルアスコット開催、G1・クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスでの2着も十分に高く評価できる。だがそれでもなお、威圧的なまでの強さを誇るカーインライジングには届いていない。

それでも、日本国内では10月のスプリンターズステークスまでスプリントG1が存在しない以上、チェアマンズスプリントプライズは自然と次走候補に挙がる。もし、サトノレーヴが4度目となるカーインライジング征伐に向かうとしても、堀師は現実的なビジョンを持って臨むだろう。

「チェアマンズスプリントプライズへの招待は来ています」と調教師は説明。「今は早く招待した順に色々な優先順位がつけられるので、通常でしたらレース後の馬の状態を確認してから受諾するんですけれども、そういった事情ですでに受諾はしています」

それでも堀調教師は「ただし」と前置きし、「この後に馬の状態をしっかり見極めて、改めて行くか行かないかという判断をしたい」と補足。また、レース中に馬が左後肢の蹄鉄を落鉄していたことにも触れ、「馬の状態と、オーナーとも相談になります」と述べている。

サトノレーヴの陣営が仮に、チェアマンズスプリントプライズでのカーインライジングとの対戦を回避する選択肢を選んだとしても、それは決してこの陣営だけの話ではない。

カーインライジングは現在、地元香港ではほとんど無敵の存在と見なされている。前香港短距離王のラッキースワイネスは同馬を避けるようにマイル路線へと転向。世代が違えば“短距離界の新星”とされていたであろう逸材、ファストネットワークも同様に別路線へ追いやられている。

なお、カーインライジングの主戦騎手を務めるザック・パートン騎手は、ファストネットワークの次走に騎乗することが決まっている。

サトノレーヴが高松宮記念を2年連続で制したことは、カーインライジングの実績を改めて際立たせた。そして、この7歳馬もG1戦線を代表するトップスプリンターとして、侮れない強さを見せつけた。

高松宮記念で騎乗したクリストフ・ルメール騎手もサトノレーヴの強さを強調し、「マッスルカーですね……フォード・ムスタングGTっぽいね。それだけパワーがある」と表現していた。

しかし、その“スーパーカー”という表現で言うならば、ムスタングGTがいかにパワフルで速く、印象的であっても、純粋なスピードとパワーではフェラーリ・SF90には敵わない。トレーナーの言い方を借りるなら、そのフェラーリは「手が届かない」ところにいるようだ。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

デイヴィッド・モーガンの記事をすべて見る

上保周平、Idol Horseのジャーナリスト。日本、海外問わず競馬に情熱を注いでいる。これまでにシンガポール、香港、そして日本の競馬場を訪れた経験を持っている。

上保周平の記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録