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ミサイルが休めば、今度は雨が降る。ドバイは雷雨への対応を迫られる一方、戦時下ならではの切実な不安も抱えている。それでも土曜のメイダンでは、ドバイワールドカップが予定通り行われる見通しで、日本のフォーエバーヤングと世界王者のカランダガンが主役を務める。

ドバイのモハメド殿下は、この開催に見合う顔ぶれを集めるべく、できる限りの手を打っている。馬運車には大がかりな警察の先導がつき、日本勢の大量回避が出ると、3頭の日本馬を運ぶために専用のチャーター便まで送った。

今回のドバイ遠征が渡航勧告違反にあたる可能性はないのか。この点は火曜日に日本の国会でも議論となったが、JRAを管轄する農林水産大臣は、この勧告には強制力はないとの見解を明言した。

その飛行機で運ばれた一頭が、モハメド殿下が率いるゴドルフィン所有馬のパイロマンサーだった。JRAのダート路線でも特に有望株とされる1頭であり、開催全体で6鞍に騎乗する英国のジェームズ・ドイル騎手にとっても、大チャンスの騎乗依頼となった。

パイロマンサーは今回、G2・UAEダービーでG1・ケンタッキーダービーへの出走ポイント獲得を狙う。前走では川崎のJpn1・全日本2歳優駿を制しており、このレースは2年前にフォーエバーヤングも勝っている。

ドイルはIdol Horseに対し、「陣営はこの馬をかなり高く評価していると聞いています」と話した。「レース映像も見ました。フォーエバーヤングはあのレースを7馬身差で勝ちましたし、この馬は半馬身差でしたが、それでもいい内容だったと思います」

「パイロマンサーは勝負根性を見せていましたし、UAEダービー向きの条件をしっかり備えているように見えます。輸送にも対応できそうですし、距離も持つ。最後まで食い下がるタイプです」

「さらに、陣営がケンタッキーダービーを目指しているという期待のコメントからも、並大抵の馬ではないことがうかがえます」

ドイルが騎乗する6頭のうち4頭は、カタール王族のワスナンレーシングの所属馬、すなわち主戦契約先だ。そのうちの1頭が、G1・アルクオーツスプリントに出走するラザットである。

昨夏のロイヤルアスコットでは、今週日曜に中京で行われるG1・高松宮記念の有力馬とされるサトノレーヴを破ったが、その後は4戦して未勝利。勝ち星に恵まれず、3度の2着がある。

ドイルは「サトノレーヴを負かした時は本当に素晴らしい走りでしたし、その反動が少しあったのではないかとも思います。その後のレースで少し調子を落とした印象がありましたから」とラザットの走りについて分析する。

「ただ、サウジでリーフランナーの2着だった時の内容は本当に素晴らしかったと思います。最悪の枠から運びながら、最後にわずかに甘くなっただけでした」

「あの時は各馬からかなりマークされる立場でした。今度は直線でリーフランナーに借りを返せればと思っています」

Lazzat beating Satono Reve at Royal Ascot in 2025
LAZZAT, SATONO REVE / G1 Queen Elizabeth II Jubilee Stakes // 2025 /// Ascot //// Photo by Alan Crowhurst (Getty Images)

ドイルはG1・ドバイワールドカップでは、同じくワスナンレーシングのタンバランバに騎乗する。

アメリカから移籍したこの馬について、ドイルは「この馬のことも少しずつ分かってきました」と話す。初戦のメイダンでは「まだ万全ではなかった」と見ており、その次走でインペリアルエンペラーの2着に入った際は、単にまだ切れが足りなかったという。

「その切れが戻ってきたのが、サウジカップでフォーエバーヤングの3着に入った時でした。スタートを決めて、道中もいい形で運び、最後までしっかり伸びていました」

「今回も厳しい競馬にはなりますが、十分に上位争いできていい馬です」

同じくワスナン勢のデビッドオブアセンズは近隣のジェベルアリ開催で勝ち星を重ねてきたが、今回はG2・ゴドルフィンマイルへ向かう。一方、同じ陣営のメイクミーキングは、英ゴドルフィン拠点のオンブズマンらが待つG1・ドバイターフへ挑む。

ドイルは「コミッショナーキングがいなければ、ゴドルフィンマイルはかなり混戦だと思います」と見通しを話す。

「メイクミーキングは今まさに絶好調です。ただ、それくらいの状態でなければ厳しいでしょう。オンブズマンは明らかに抜けた存在です」

そして残る1頭が、G1・ドバイシーマクラシックで世界最高レーティングのカランダガンと対戦するジアヴェロットだ。ドイルは金曜朝、ニューマーケットで2024年香港ヴァーズ勝ち馬に初めて跨った。前走、カタールで3着だった一戦は不運だったと見ているという。

ドイルは「感触はすごくいいですし、本当にいい馬です」とコメント。「厳しいレースになるでしょうし、カランダガンにどこまで迫れるかはやってみないと分かりません。これまでカランダガンには及んでいませんが、相手は本当に素晴らしい馬です」

いま焦点となるのは、天気予報では降るとされている雨がこの開催にどう影響するかだ。通常ならレース当日のドバイは乾いて暑い。

しかし、ここ1カ月は、競馬開催中にも上空で爆発音が響くような不安定な情勢が続いてきた。そのなかでは、土曜に空から降ってくるものが雨だけで済むなら、誰もが安堵するはずだ。

米国クラシック三冠馬として2頭目となったギャラントフォックスは、1927年3月23日にケンタッキー州クレイボーンファームで誕生した。

その米三冠馬ギャラントフォックスの産駒で、自身も米三冠を達成したオマハは1932年3月24日に誕生。親子で米三冠馬となった史上唯一の名馬として、今なお特別な存在である。

さらにそのちょうど8年後、1940年3月24日には、後に米三冠馬となるカウントフリートがケンタッキー州ストーナークリークスタッドで生まれている。

1980年代以降、世界各地のG1で青と白の勝負服で知られたシャドウェル創設者、シェイク・ハムダン・アル・マクトゥームは、2021年3月24日に死去した。

1943年3月26日には、テキサス州キングランチでアソールトが誕生し、のちに1946年の米国クラシック三冠を制することになる。

そして1996年3月27日、世界最高賞金レースとして銘打たれた第1回ドバイワールドカップがナドアルシバ競馬場で行われた。勝ったのはビル・モット厩舎の北米王者、シガー。同じく米国馬でリチャード・マンデラ厩舎のソウルオブザマターを半馬身差で退けた。

Cigar winning the inaugural Dubai World Cup in 1996
CIGAR / G1 Dubai World Cup // Nad al Sheba /// 1996 //// Photo by Matthew Ashton

マーク・ニューナム調教師の香港ダービー挑戦は今年で2度目だった。最初の挑戦はアタマ差で敗れた1年前、そして2度目の今年はついに勝利をつかんだ。

香港競馬界ではいまや大レースに強い調教師の1人とみなされるようになった同師にとって、この勝利がどれほど大きいものかを、デイヴィッド・モーガン記者が解説した。

ジェームズ・マクドナルド騎手は先週土曜、豪州騎手のG1最多勝記録を更新した。アダム・ペンギリー記者は、その偉業の裏側にいる人々を取材し、このニュージーランド出身の名手にとっての強さの源泉に迫った。

ペンギリー記者の記事に続き、シェーン・ダイ氏の週刊連載コラムでは、マクドナルド騎手の“巧さ”を解説。ニュージーランドでの若手時代から彼を知る人物ならではの視点で分析する。

元騎手で競馬評論家のシェーン・ダイ氏は、マクドナルド騎手がなぜこれほど優れているのか、香港で何を身につけたのか、そして名牝オータムグローが今後にどのような影響を与えるのかを語っている。

それほど昔のことではない。10年近く前、ジャック・カラン騎手はシャティンの遊び場を「子供用」の勝負服で走り回る子どもだった。

J-Macの域に達するまでにはまだ長い道のりがあるが、デイヴィッド・モーガン記者の記事が伝えるように、ニール・カラン騎手の若き息子は出世の道を歩んでいる。今年の英国見習い騎手チャンピオンを目指すうえで、周囲の支えにも恵まれているようだ。

今週の世界の注目馬リストは、フランスから一頭を紹介。

火曜日、サンクルー競馬場で行われたリステッドのロゼドメ賞。この10ハロン戦を制したのは、ジェローム・レニエ調教師のアーカンソーだった。12頭立ての後方で脚をためる形から、直線では馬群をうまくさばき、最後は力強く抜け出して2馬身差で快勝した。

アーカンソーはレニエ厩舎へ移って初戦。レニエ師はラザット、ファクトゥールシュヴァル、スカレティといったG1馬を手掛けてきたことで知られる。以前はクラシック勝ちのマリオ・バラッティ厩舎に所属しており、昨年7月のデビュー戦では3馬身差の完勝を収めていた。

その後はG2・カルヴァドス賞で6着、10月のシャンティイではジャドモントのリーガルリゾルヴの3着で2歳シーズンを終えた。今回はそこから一段前進した内容で、ソットサス産駒のこの牝馬が、今年の3歳牝馬中距離路線で存在感を示す可能性を感じさせた。

G1・仏オークスを目標に、G3・ヴァントー賞やG2・サンタラリ賞のようなレースを経由していくことも考えられる。同馬はクリセリアム、ベリースペシャル、エヴァズリクエストと同じ牝系の出身でもある。

あわせて注目しておきたいのが、先週土曜、英ニューカッスル競馬場のタペタコースで行われた1マイルの未勝利戦を14馬身差で圧勝したウォリスだ。

まだ幼さを残しながらの大差勝ちで、今後レーティングを大きく伸ばしていく可能性を感じさせた。

低級戦での圧勝だけに慎重な見方は必要だが、デビュー戦に騎乗したホリー・ドイル騎手は、この3歳のシーザスターズ産駒について期待を隠さず、非常に前向きな言葉を残している。

ドバイワールドカップデー
メイダン(ドバイ)、3月28日

中東情勢の緊迫が続くなかでも、9競走が組まれたドバイワールドカップデーは予定通り行われる見通しだが、海外勢の参戦は例年より手薄となっている。

日本のフォーエバーヤングは、G1・ブリーダーズカップクラシックと過去2回のG1・サウジカップに続き、G1・ドバイワールドカップ制覇を狙う。勝てば、かつてのライバルであるロマンチックウォリアーを抜いて、世界最高賞金獲得馬となる。

世界最強馬のカランダガンは少頭数のG1・ドバイシーマクラシックへ出走。ゴドルフィンの英国馬、オンブズマンは手薄になったG1・ドバイターフで中心視される。ほかにもG1・アルクオーツスプリント、G1・ドバイゴールデンシャヒーン、G2・ゴドルフィンマイル、G2・ドバイゴールドカップが行われる。

オーストラリアンカップデー
フレミントン(オーストラリア)、3月28日

バードマンはここ2戦でG2・ブレーミーステークス、G2・ピーターヤングステークスを連勝しており、G1・オーストラリアカップではG1・オールスターマイル連覇のトムキトゥンや、快速牝馬のプライドオブジェニを抑えて1番人気に推される可能性がある。

2000メートルで行われるオーストラリアンカップは、マカイビーディーヴァ、ロンロー、ボーンクラッシャー、ダルシファイといった名馬たちが勝ってきたレースでもある。

タンクレッドステークスデー
ローズヒル(オーストラリア)、3月28日

アエリアナは先週のG1・ランヴェットステークス勝利を受け、G1・タンクレッドステークスの1番人気候補に浮上したが、出走するかどうかは今後決定される。

仮に出走が実現するなら、前年覇者のドバイオナーと対戦することになる。ドバイオナーは英国からの遠征馬で、2023年にはG1・ランヴェットステークスとG1・クイーンエリザベスステークスも制している。

他の有力馬として、元アイルランド調教馬で、前走でG3勝ちを収めたヴォバンも候補に入る。

このハイレベルな開催では、豪オークス前哨戦のG1・ヴァイナリースタッドステークスも行われ、NZオークス馬のオーホープウィンズは4連勝を狙う。またG2・タロックステークスも組まれており、来年の香港ダービーを見据えた有望な輸入馬を探す香港のバイヤーから注目を集める一戦となる。

ドンカスターマイルデー
ランドウィック(オーストラリア)、4月4日

メインはハンデ戦のG1・ドンカスターマイル。例年通り有力馬が顔をそろえ、G1・ランドウィックギニーを制したシーザアリバイ、その時の2着馬で後にG1・ローズヒルギニーを勝ったオータムボーイのほか、トムキトゥン、ラインバッカー、グリンゴッツ、バードマンらが登録している。

また、実力牝馬のアエリアナ、トレジャーザモーメントも登録がある。

南アフリカダービー
ターフフォンテン(南アフリカ)、4月4日

南アフリカダービーは南アフリカ三冠の最終戦にあたる。最初の2戦は、G2・ハウテンギニーをスプリットジエイツが制し、続くG1・サウスアフリカンクラシックは、そのハウテンギニーで2着だったグランドエンパイアが勝っている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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