ジョアン・モレイラ騎手の香港復帰は、香港の開催日に熱気を取り戻すのか。香港のキャスパー・ファウンズ調教師は、ファンが“あの興奮”を思い出すまでにそう時間はかからないだろうと見ている。
「やっとですよ。ようやく戻ってきました。楽しくなりますね」
香港ジョッキークラブ(HKJC)が、モレイラが4月7日から2025/26シーズン終了となる7月中旬まで、ファウンズ厩舎の所属騎手を務めると正式に発表。リリースの直後、ファウンズ師はそう語った。
モレイラは12月、インターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップで香港に戻って騎乗し、パドックを取り囲んだファンから熱狂的な歓迎を受けた。しかもこの夜、モレイラは最初の2勝をいずれもファウンズ厩舎の馬で挙げ、観衆は大歓声に包まれた。
ファウンズ師は「競馬ファンは彼が大好きだし、きっと盛り上がりますよ。初日の夜から勢いがつくように、こちらも何頭か用意しておきます」とモレイラの復帰に自信を見せる。
今回のシーズン終盤での短期参戦が決まったことで、数か月前から続いていた働きかけにひと区切りがついた。ファウンズ師は12月の香港国際競走を前にモレイラを呼び戻そうとしたが、当局から「所属騎手の枠はすでに埋まっている」と伝えられ、実現しなかった経緯がある。
ファウンズ師はシーズン折り返しを過ぎた時点で36勝を挙げ、現在は調教師リーディングの首位をキープ。2位のマーク・ニューナム調教師とはわずか1勝の差で競り合っている。
4度の香港リーディングに輝いたモレイラがシーズン終盤に合流するのだから、タイトル争いを見据えた一手だと見られても不思議はない。それでもファウンズ師は、そうした見方を否定する。ただし、時期がうまく噛み合ったことは認めた。
「それが理由で呼んだわけではありません。でもタイミングは最高ですし、プラスになるのは間違いありません」
「以前からジョアン(モレイラ騎手)を呼びたいと思っていましたが、そのときはタイミングが合いませんでした。今回はチャンスができたのでそれがうれしい。私だけじゃなく、みんながそうですよ」
ファウンズ師は、この契約は香港競馬全体にとっても朗報だと話す。リーディングを独走するザック・パートン騎手とのライバル関係は、これから夏場にかけての開催を、より面白いものにしていくだろうという見立てだ。
「いちばん大事なのはファンが楽しめることです。ここ最近の競馬は、ほんの少しだけ活気が足りなかった気がします。ジョアンは期待に応えてくれます。乗れるし、仕事をきっちりやり切ります。それに性格も本当にいい。周りにいるだけで場が明るくなります」

香港競馬の『所属騎手制度』は、契約した厩舎からの騎乗依頼を優先する仕組みだが、ファウンズ師は、厩舎として必要な騎乗が確保できることを前提に、自厩舎以外からの魅力的な騎乗依頼を締め出すつもりはないと明言した。
「基本的には、厩舎の馬に85%乗ってもらいます。でも、こちらが見習いジョッキーのエリス・ウォン騎手を同じレースで乗せるなら、ジョアンが無理に乗る必要はありません」
「私としては、とにかくうちの馬に乗ってほしいし、私のために乗ってほしい。でも、いい外の騎乗依頼があるなら、それはそれで乗ってもらうつもりです」
「他の調教師からも『ぜひ起用したい』という話がもう出ていますし、電話は鳴りっぱなしになるでしょうね」
興味深い点として、今のモレイラは以前のように、軽い斤量でも幅広くカバーできる騎手とは見られているわけではない。軽いハンデを活かせるレースでは、同じ所属騎手でもウォンにチャンスが回ってくるはずだ。
見習い騎手のウォンはこれまで18勝を挙げ、騎手リーディングで10位に付けている。軽い斤量で乗れることを武器に、さらに勝ち星を積み上げていく足がかりとなるかもしれない。
一方でファウンズ師には、モレイラの香港での住居の手配など実務面での準備も必要になるが、調教師はIdol Horseに「すべて整っています」と話した。
モレイラは2013年に香港で強い印象を残し、その後4度のリーディングを獲得。多くの騎乗記録を更新しながら、2018年に香港を離れた。ただし、それは完全な決別ではなかった。
同年、モレイラは日本への転身を模索したが、JRAの通年免許を得られず、その構想は実現しなかった。その後、2018/19シーズンはジョン・サイズ厩舎の所属騎手として香港に戻り、2022年まで騎乗を続けた。
しかしその頃には、心身の両面で同じ結論に行き着いていた。過酷な日々を続けるのは、もはや現実的ではない。モレイラは深刻な左股関節痛や長期に及ぶリハビリ、そしてブラジルにいる家族と離れて過ごすことによる精神的ストレスを挙げ、最終的に香港の騎手免許を返上する決断を下した。
香港を離れてから数か月のうちに、「引退」という言葉はより曖昧で流動的なものへと変わっていった。
故郷クリチバを拠点に治療を受けて身体を立て直し、彼はいま、実質的に世界の大レースを渡り歩く“ビッグレースのスペシャリスト”として動いている。チャンスがあれば各地へ飛び、短期免許で騎乗するスタイルだ。
ファウンズ調教師が所属騎手を迎えるのは、2003/04シーズン終盤以来、初めてのことになる。当時、香港では駆け出しだったファウンズ師のもとで、オーストラリアのパトリック・ペイン騎手が厩舎所属ジョッキーとして騎乗していた。
