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日曜の開催で、香港競馬の今シーズンは折り返しを迎えた。そしてブレット・クロフォード調教師は、すでに調教師として香港で通用することを十分に示している。

ここまで14勝というのは立派な数字そのもの、このペースを維持できればデビューシーズンとして平均以上の勝ち星で終えるだろう。いま問うべきは「今年勝てるか」ではない。来季も勝ち続けるための土台を作れるか、だ。

歴史が示すとおり、多くの好スタートがつまずくのは、まさにそこなのである。

クロフォード師の勝利はすべて移籍馬によるものだ。厩舎が替わった途端に、まるで目を覚ましたように走り出すタイプである。馬は人間に似ている。新しい仕事、新しい環境、新しい関係。気分が上がり、やる気が出る。馬だって同じだろう。

ただし、クロフォード師の成功を、環境の変化による一時的な上振れとして片づけるのは早計だ。彼が多くの点で正しいことをやっているのは明らかである。

私が気に入っているのは、彼がレシピ本に忠実に調教していない点だ。ジョン・サイズ調教師が香港で大成功を収めたことで、他の調教師たちはその調教方法、特にバリアトライアルの多用などを真似しなければと考えがちになる。クロフォード師はその罠にハマっていない。

馬の状態が整っていると判断すれば、30日、40日、ときには60日もバリアトライアルを挟まずに実戦へ出す。香港競馬では珍しい判断だが、つまり彼は自分の馬を理解し、見えているものを信じる覚悟がある、ということだ。

そして香港競馬の仕組みは、そのやり方に向いている。クロフォード師は香港移籍前、南アフリカの厩舎で約180頭を抱える大所帯を率いていたが、こちらへ来るにあたって「25頭ほどから始められるのは、1頭1頭に細部まで目を配れるという意味で贅沢だ」と語っていた。

コース内に住めば毎日馬を見られ、小さな変化にも気づける。

だから私は素直に感心している。馬をさらに良くできるし、競馬界に良いエネルギーももたらした。

Horse trainer Brett Crawford at Sha Tin
BRETT CRAWFORD (R), ROY CHEUNG / Bai-sun ceremony // Olympic Stables, Sha Tin /// 2025 //// Photo by Idol Horse

さて、勝ち星が積み上がっているときほど、誰も口にしたがらない話がある。馬房管理だ。

新人調教師によくある罠がある。20頭そこそこでスタートし、いきなり結果を出す。すると馬が次々に回ってくる。馬主は勢いのある厩舎へ移りたがる。調教師は断りづらい。受け入れてしまう。

問題はこうだ。クラス5(低条件戦)レベルの馬を引き受けすぎると、全頭に適切な出走機会を用意できなくなる。

番組に下級条件のレースが十分にあるわけではない。厩舎が下位クラスに偏るほど回転が止まり、クラス5の馬で枠が埋まると、先々の選択肢を自分で狭めることになる。

あとから厩舎にとって本当に欲しい、より良い移籍馬が来ても、厩舎が満杯で受けられない。馬房が使いどころの難しい馬で埋まっているからだ。

クロフォード調教師の管理馬はすでに、上限70頭に対して67頭まで到達している。そのうち16頭が未出走というのは良い兆候だ。

だが、バランスが気になる。レーティング40以下の馬が11頭で、クラス5のレースを探さねばならない馬が相当数いる。さらにレーティング41〜45あたりが12頭いて、ちょっとしたきっかけで下へ落ち、圧力が一段増す可能性がある。45未満が23頭というのは、適切なバランスとは言い難い。

最近の傾向も見ておきたい。香港でデビューした直近11人の調教師のうち、8人は初年度の勝ち星を2年目に上回れなかった。1年目の成功は、2年目の成長を保証しない。

この点をうまくやった例が、マーク・ニューナム調教師だ。彼も移籍馬で早い段階から結果を出したが、好スタートの勢いで厩舎を一気に満杯にはしなかった。

厩舎の預かれる枠を残し、バランスを守った。初年度31勝、2年目は44勝へ伸ばし、失速せずに積み上げていく土台を作った。いま彼は3年目でリーディング争いの先頭に立っている。

クロフォード師にとって次の課題はそこだ。調教ができることは、もう分かった。あとは同じ基準で厩舎の編成を管理し、この好スタートを2年目の失速につなげないことだ。

イーサン・ブラウン騎手が香港移籍、シーズン終盤に大型補強

イーサン・ブラウン騎手がシーズン後半に香港へ来るのは、本当に喜ばしい。彼はまだ26歳だがすでに通算600勝を超え、G1も10勝している。しかも2023年、フレミントンでの大きな落馬事故から復帰してそれだ。

正直に言うと、私は豪州の平日開催をすべて追っているわけではない。見るのは大きいところで、グループ競走や重要な土曜開催が中心だ。だがこの12~18か月、その重要なレースで際立っていた騎手が3人いる。

ジェームズ・マクドナルド騎手、マーク・ザーラ騎手、そしてイーサン・ブラウンだ。

順番はお好みで構わないが、ただ私はこう言いたい。滅多に言わないが、この1年の大舞台で、ジェームズやザーラがブラウンより良かったとは到底思えない。いまの彼はそれくらい良い。

彼に会ったことも、話したこともない。これは遠くから見ている私の印象にすぎない。だがプレッシャーがかかる局面での戦術眼が、ほとんど完璧に見える。判断が速く、決断も迷いがない。そして負けることを怖がらない騎手の乗り方をする。

だから香港に合うはずだ。香港競馬はタイトで戦術的。タイミング、進路、リズム。勇敢でありながら、無謀ではないことが求められる。

ブラウンが良いチャンスを得られれば、ただの数合わせでは終わらない。シーズン終盤に新顔として参戦し、結果を出すのは簡単ではない。だが、チャンスさえあれば、勝ち星を積み上げるだろう。

ETHAN BROWN / Photo by HKJC

香港ダービー戦線活況あり、フローウォーターフローも候補に浮上

香港ダービー戦線は週ごとに面白くなっている。それこそが醍醐味だ。4週間前は、少し手薄な世代に見えた。だが、今は頭数が揃い始めている。

先週私は、香港クラシックマイルを鮮やかに勝ったリトルパラダイスについて疑問を投げかけた。具体的には、展開が完璧にハマらない形でも対応できるのかという点だ。

その答えは1800mの香港クラシックカップで見えてくるはずだ。

一方、ナンバーズは、G3・センテナリーヴァーズで期待通りの内容を見せた。香港クラシックカップと同じコース・距離で力強く勝利。十分に射程圏で、走るたびにダービー候補としての存在感を強めている。

ただし、私がHKJCに望むのはここからだ。時が来たら「いま最も勢いのある14頭」を選び、レーティングだけを根拠に決めないでほしい。

香港クラシックマイルと香港クラシックカップがレーティングで組まれるのは理解できる。だが香港ダービーは「誰が勝てるか」であるべきで、「移籍前に海外で高い評価を得て入ってきた順」ではない。

高いレーティングでも、調子を落としていて勝負にならないように見える馬がいる。なら、なぜその馬を守る必要があるのだろうか?

だから私は、引き続きフローウォーターフローを推したい。

私はこの馬が大好きだ。リラックスして走り、直線でしぶとく伸びる。鋭いマイラーのような一気に切れる脚を使うタイプではなく、じわじわと脚を使い続けて押し切る。この馬は香港ダービーの2000mにも十分対応できると思う。

日曜の勝利も強かった。初めての1800mでクラス3を勝ち切った。短期間で大きく前進している。11月下旬に1200mでデビューして、もう1800mで勝っている。香港ダービーを見据える時期、この伸びしろは評価できる。

ジョン・サイズ師は、レーティング的に出走枠に届かない可能性があると話している。その通りかもしれないが、香港ダービーのメンバーが確定するまでにこの馬が成長し、勝ち続けるのなら、HKJCは何としても出走枠に入れる道を探すべきだ。

香港ダービーの14頭は「最も勝つ可能性が高い14頭」であるべきで、そして現時点でフローウォーターフローは、間違いなく2026年香港ダービーの「上位14頭」に入るに値する一頭である。

シェーン・ダイ、Idol Horseのコラムニスト。 オーストラリアとニュージーランドで競馬殿堂入りを果たし、1989年のメルボルンカップ(タウリフィック)、1995年のコックスプレート(オクタゴナル)では名勝負を演じた、G1・通算93勝の元レジェンドジョッキー。また、香港競馬では8年間騎乗し、通算で382勝を挙げている。

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