2025 G1 ジャパンカップ
ジャパンカップは、日本のトップホースの実力を試し、日本競馬の“レベルアップ”を図るために海外からの強豪馬を呼び込むべく、1981年に創設された。初代王者となったのはアメリカ調教の牝馬、メアジードーツだった。
現在は1着賞金だけで5億円(約330万米ドル)に達し、世界有数の2400m戦の一つに数えられる。ジャパンカップの目論見が「成功した」と言うのは控えめな表現だろうが、もしかすると“レベルアップ”しすぎたのかもしれない。
創設から25回のうち14回を海外調教馬が制したのに対し、直近19回はすべて日本調教馬が勝利。この10年ほどは、欧州の真のチャンピオンホースが遠征してくるケースは、ほとんど見られなかった。
競馬場: 東京競馬場
距離: 2400m
総賞金: 10億9000万0000円(726万7000米ドル)
カランダガンが外国馬の連敗を止めるのか?
外国調教馬がジャパンカップを制した最後の例は、2005年まで遡らなければならない。
その年に勝ったのは、イギリスのルカ・クマーニ調教師が管理し、フランキー・デットーリ騎手が騎乗したアルカセットだった。ファルブラヴ、ピルサドスキー、シングスピール、歴代の欧州発のジャパンカップには“ビッグネーム”がずらりと居並ぶが、リストはこの馬で止まっている。
1990年代半ばから2000年代初頭にかけて、ジャパンカップを勝つには「世界最高峰クラス」であることが当たり前の条件だった。当時、敗者として名を連ねた欧州のスターホースには、あのモンジューのような強豪馬まで含まれている。
カランダガンは、そんな往年の欧州スターホースたちを思わせる存在だ。今年のG1・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスと、アスコットのG1・チャンピオンステークスを制した実績は、同世代の中でも頂点に立つ存在であることをはっきりと物語っている。
近年のジャパンカップの外国調教馬の中でも最有力候補と言えるレベルであり、昨年のオーギュストロダンすらも上回る評価を与えられて然るべきだろう。
とはいえ、この舞台で求められるのは「チャンピオンレベル」のパフォーマンスそのものだ。そこに一歩でも届かなければ、ジャパンカップの頂点に立つことはできないだろう。
今年は3頭のダービー馬がチャレンジ
今年のジャパンカップには、3頭の日本ダービー馬が顔を揃える。2023年のタスティエーラ、2024年のダノンデサイル、そして今年のダービーを制したクロワデュノールだ。
直近でダービー馬がジャパンカップを制したのは、ちょうど1年前のドウデュースであり、今世紀に入ってからジャパンカップを制した5頭目のダービー馬でもあった。ただ、当時のドウデュースは5歳馬。3歳でジャパンカップも制したダービー馬となると、2001年のジャングルポケットまで遡る。
それを踏まえると、クロワデュノールの挑戦は厳しい道程だ。加えて、凱旋門賞での厳しい敗戦から立て直さなければならないという課題も抱えている。三冠馬のコントレイルでさえ、3歳時の2020年ジャパンカップではアーモンドアイに敗れており、勝利をつかんだのはその1年後だった。
3歳馬にチャンスはあるのか?
実は、ジャパンカップを制した3歳馬は歴代を通じてもわずか7頭しかいない。そのうち4頭が今世紀に入ってからの勝ち馬で、ジャングルポケット、ローズキングダム、そしてジェンティルドンナとアーモンドアイという2頭の名牝だ。
この中でローズキングダムは、日本ダービーと菊花賞でいずれも2着に入っていたが、その歩みは今年の有力候補であるマスカレードボールと重なる部分がある。マスカレードボールもまた、今年のクラシックで皐月賞3着、ダービー2着と二度の好走を見せてきた。
さらに前走では、2000mのG1・天皇賞秋を制覇。春のクラシックから明確に一段階上のパフォーマンスを披露しており、一流古馬路線でも通用する力を示した。

マスカレードボール、飛躍の秋に?
天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念は、日本競馬の『秋古馬三冠』と呼ばれる定量条件のチャンピオンシップレースだ。この3レースを同一年に制覇したのは、過去にテイエムオペラオーとゼンノロブロイの2頭しかいない。
一方で、同一年の天皇賞秋とジャパンカップの連勝は、過去44年で6回達成されている。そして、そのうち直近3回はいずれもここ5年のうちに記録されたものだ。
2020年のアーモンドアイ、2023年のイクイノックス、2024年のドウデュースと、いずれも歴史的名馬と呼べる面々がこの連勝を達成しており、今や「天皇賞秋→ジャパンカップ」の連勝は、近年の大きなトレンドと言っていい。
マスカレードボールがこの流れに続くことができれば、陣営は12月の有馬記念に駒を進め、『秋古馬三冠』制覇に挑戦させる可能性が高いだろう。
名門厩舎の刺客
シュヴァルグランとドウデュースでジャパンカップを制した友道康夫調教師が送り出す、4歳馬のアドマイヤテラには、川田将雅騎手が騎乗する見込みだ。意外なことに、川田自身は過去12回の挑戦でジャパンカップ未勝利。2007年のデルタブルースでの騎乗以来、まだ一度も勝利を手にしていない。
アドマイヤテラは現時点の予想オッズで6番人気あたりに位置し、通算成績は10戦5勝。これまでのG1挑戦は昨年の菊花賞のみだが、その舞台で3着に好走している。今季は3戦2勝で、G2・目黒記念を制し、前走のG2・京都大賞典でも僅差の4着と崩れていない。
興味深いのは、二桁オッズでジャパンカップを制した最後の馬も、やはり友道厩舎のシュヴァルグランだったことだ。
シュヴァルグランも、ジャパンカップの前哨戦となる京都大賞典で3着に入ってから本番へ向かい、大金星を挙げている。アドマイヤテラも同じルートを辿っており、「友道厩舎の刺客」として静かに波乱の主役に名乗りを上げつつある。