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開幕直前の香港競馬 “25/26シーズン”、4人の記者が選んだ「注目馬」は?

Idol Horseの香港競馬エキスパート4名が、今シーズンの注目株、ブレイク候補、海外遠征候補、そして「一足早い」香港ダービー馬候補を予想。9月から始まる新シーズンの注目情報をお届けする。

開幕直前の香港競馬 “25/26シーズン”、4人の記者が選んだ「注目馬」は?

Idol Horseの香港競馬エキスパート4名が、今シーズンの注目株、ブレイク候補、海外遠征候補、そして「一足早い」香港ダービー馬候補を予想。9月から始まる新シーズンの注目情報をお届けする。

まだG1を勝っていないが、トップレベルでも楽しみな馬は?

ジャック・ダウリング:
マイウィッシュは、過去20年の香港ダービーでもっとも不運な敗者だったと言っていいでしょう。それでも、4月のG1・チャンピオンズマイルでは4着に食い込んで意地を見せました。

今シーズンはトップレベルで巻き返すチャンスがあります。香港クラシックマイルを制した後、ダービーの舞台で叩き出した上がり200mはシャティン2000mでシーズン最速記録でした。しかも、ラスト200mだけでなく、残り400mから200mの区間でもシーズン最速の10.33秒をマーク。参考までに、カーインライジングの同区間最速は10.43秒だとお伝えしておきます。

マイケル・コックス:
キャップフェラの2025年香港ダービー制覇は、典型的な “一発屋” っぽさがありました。大穴での初勝利、内枠、展開に恵まれての僅差勝ち。G1馬候補としては魅力に欠ける印象で、ダービーを最後に勝ち星を挙げられなかった馬も珍しくありません。

とはいえキャップフェラはその後、トップレベルでも通用する力を示しました。もしヴォイッジバブルがマイル路線にとどまるか海外に遠征し、さらにロマンチックウォリアーが脚部手術から復帰できなければ、2000m路線のG1は一気に手薄になるかもしれません。

Cap Ferrat and Craig Williams win the Hong Kong Derby
CRAIG WILLIAMS, CAP FERRAT / BMW Hong Kong Derby // Sha Tin /// 2025 //// Photo by HKJC / Alex Evers

デイヴィッド・モーガン:
実績だけを見れば、3連勝と昨年のダービー3着があるパッキングエンジェルが有力候補でしょう。しかし膝の手術からの回復具合を見極めるまでは、過度な期待は控えるべきです。

そこで注目したいのが同じ馬主のパッキングハーモッドです。クラシックマイルで3着と健闘した後、香港クラシックカップの1800mでは距離が長い印象を与えましたが、1400mのクラス2で連勝し、さらにG3・プレミアカップでも3着と好走しました。夏を越して心身ともに充実した5歳馬となり、ここからさらに成長していくタイプだと見ています。

アンドリュー・ホーキンス:
ギャラクシーパッチは、今からG1タイトルを手にできるのか。まだG1勝てていないのが信じがたいほどですが、依然として謎多き存在であり、ピエール・ン調教師にとっても最適解を見つけるのが難解なパズルのよう存在です。

ン調教師はマイルこそがベストと判断しているようで、G1・スチュワーズカップではヴォイッジバブルの2着に入っています。クイーンズシルバージュビリーカップで1400mに短縮すれば、カーインライジングとの激突が待っているため、1600mに専念し、ヴォイッジバブルが距離を延ばすのを待つのが賢明かもしれません。

今シーズン、レーティングを伸ばしそうな馬は?

デイヴィッド・モーガン:
ジェイミー・リチャーズ厩舎のバルブジェネラルこそ、今季序盤にレーティングを大きく上げる存在になりそうです。

4歳馬のバルブジェネラルは2月にシャティンでデビューし、大外枠から最後方に下げて直線一気で3着に食い込みました。その後は5ヶ月の休養を挟み、7月に1200mのクラス4で初勝利。鋭い末脚で快勝し、レーティングは64まで上がりました。

カラカセール・ブック1出身の同馬は、中断期間の8月も継続的に調教を続けており、さらなる飛躍が見込まれています。

ジャック・ダウリング:
リッキー・イウ厩舎のエタロンオールは13戦して未勝利ではありますが、ひとたび初勝利を挙げれば一気に軌道に乗るタイプに見えます。

昨シーズンは2着5回、3着3回と “あと一歩” に泣くことが多かったものの、その中で着実に力をつけてきました。後方からしっかり脚を伸ばす安定感は見せており、レーティング54からの飛躍も期待できると思います。

アンドリュー・ホーキンス:
シルヴァリーブリーズは昨シーズンの一時期にはダービー候補と見なされていましたが、結局ダービー出走権を得ることはできませんでした。

シーズン後半は不運続きで、2月には落馬、5月には血液検査の異常により回避、6月には大外枠からの競馬で苦戦と、立て直しに苦労しました。それでも休養を経ての成長があれば、今季は1600mから2000mの距離でクラス3、さらにはクラス2でも存在感を示すことを期待しています。

マイケル・コックス:
マーク・ニューナム厩舎のインヴィンシブルアイビスがどこまで飛躍できるかは未知数ですが、複数回勝利を挙げる素質を秘めており、シーズン開幕日の勝利候補として注目したいと思います。

ダートでのトライアルでは良い走りを見せたので、芝で頭打ちになった場合でも、オールウェザーへと切り替える選択肢があると調教師は示唆しています。

今季の「早すぎる」香港ダービー予想は?

マイケル・コックス:
ベテラン馬主のトン・ムン・ファイ氏は、香港ダービー前哨戦、現在の香港クラシックカップを2度勝っていますが、本番では勝利を逃しています。2009年にはユニークジュエリーがコレクションの4着、2016年にはサンジュエリーがワーザーの7着でした。

果たして、スカイジュエリーがその壁を破るのでしょうか。ここまで5戦3勝と順調に勝ち星を重ねており、スムーズな走法は香港独特の、緩急の激しい2ターンで行われる2000m戦にも対応できるはずです。

デイヴィッド・モーガン:
夏が始まって間もない頃、バリードイルから購入されたG1・愛ダービー2着馬のシリアスコンテンダー。購入したのはダニー・シャム調教師と、ダービー馬のマッシヴソヴリンを所有する馬主のチャン・カムフン氏でした。

その愛ダービーからわずか5週間後には、ウートンバセット産駒の同馬はすでに香港入りしていました。クールモアから香港に渡ったダービー候補はこれまで苦戦が目立ちましたが、シリアスコンテンダーはまだ6戦のキャリアながら、使うごとに進化を見せており、ここ数年香港に輸入されたPP馬(外国での出走歴がある輸入馬)の中でも屈指の欧州3歳実績を持ちます。

その名の通り “有力候補(シリアスコンテンダー)“ になり得る存在です。

SERIOUS CONTENDER (L), MERCHANT / King George V Stakes // Ascot /// 2025 /// Photo by Ascot

アンドリュー・ホーキンス:
3歳シーズンの終盤戦、シャンワーは大きな飛躍を遂げました。コーフィールド競馬場でG2・オータムクラシックを、ムーニーバレー競馬場ではG2・アリスタークラークSを制し、さらにG1・オーストラリアンダービーでは3着に入っています。

タフで真面目なタイプで、自在にレースへ取りつき加速できる点は大きな強みです。こうした資質は4歳クラシックシリーズにおいて重要で、特に香港ダービーに適した存在だと見ています。

ジャック・ダウリング:
有力馬主のマーク・チャン氏は、香港の大舞台ではまだ成功を収めていませんが、元ラルフ・ベケット厩舎のセラフガブリエルが今季その流れを変えるかもしれません。

サクソンウォリアー産駒の同馬は、英国で5戦してレーティングは101に到達しました。最も印象的だったのは、ロイヤルアスコットの良馬場2000m戦(香港ダービーと同距離)でのものです。さらに2走前には、ジョン & セイディ・ゴスデン厩舎の有望株・フィフスコラムの2着に入っています。

香港移籍後はデヴィッド・ユースタス厩舎に所属し、高いレーティングから始まる見込みですが、海外での実績と血統背景(2000mのG3勝ち馬の半弟)は十分に魅力的で、クラシックシリーズ最終戦でも存在感を示せそうです。

海外遠征してほしい馬と、そのレースは?

アンドリュー・ホーキンス:
ヴォイッジバブルは2024年、G1・ドバイターフとG1・安田記念で2度海外遠征に失敗しました。共通していたのは、いずれも左回りだったという点です。右回りしか経験がなく、敗戦も当然と言えました。

その一方で、香港トリプルクラウンに挑戦して距離を延ばした際には圧倒的な強さを見せました。だからこそ、香港と同じ右回りで行われるシドニー遠征が理想でしょう。2000mのG1・ランヴェットステークス、そしてG1・クイーンエリザベスステークスに挑戦する姿を見たいと思います。

VOYAGE BUBBLE / G1 Champions & Chater Cup // Sha Tin /// 2025 //// Photo by HKJC / Alex Evers

デイヴィッド・モーガン:
カーインライジングが世界最高賞金のスプリント戦・ジ・エベレストに挑むのは既定路線ですが、来年の夏にはぜひサイレントウィットネスやロードカナロアのように自らの限界を広げてほしいと思います。

アスコットの直線コースで、(おそらくは)凡庸な欧州スプリンターたちと戦うよりも、東京へ遠征し、マイルに挑戦してG1・安田記念制覇という偉業を目指す姿が見たいです。サイレントウィットネスには届かず、ロードカナロアは成し遂げた偉業。カーインライジングがジ・エベレスト制覇に加えて安田記念も勝てば、その伝説はさらに際立つものとなるでしょう。

ジャック・ダウリング:
究極の夢は、カーインライジングがアスコットの直線を駆け抜け、G1・クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスを制する姿でしょう。

ただ、ギャラクシーパッチにもぜひ海外挑戦の機会を与えてほしいと思います。昨年10月のシャティントロフィーではヴォイッジバブルを下しましたが、その後は勝ち切れない競馬が続きました。それでもマイル戦で鋭い末脚を繰り出す持ち味は健在で、チャンピオンズマイルの5着時には新たに着用した馬具がもう一段の伸びを引き出していました。

昨年も候補に挙がっていた6月の安田記念は、2026年にこそ狙うべき一戦かもしれません。

マイケル・コックス:
今年の初め、ジョン・サイズ調教師はドバイのG1・アルクオーツスプリントを前に「海外で勝ちたい。挑戦を続けるだけだ」と語っていました。しかし、残念なことにハウディープイズユアラヴは故障に見舞われ、悲願は果たせませんでした。

これでサイズ師の海外挑戦は通算14度目、アルクオーツスプリント挑戦も4度目のことでした。そんな中、同じ厩舎のヘリオスエクスプレスこそ、サイズ調教師がメイダンに戻り、悲願のG1勝利をつかむのにふさわしい存在でしょう。

今シーズン、ぜひ見たい「見出し」は?

デイヴィッド・モーガン:
“ロマンチックウォリアー、サウジカップで雪辱の激闘”

ロマンチックウォリアーは今年2月、世界最高賞金レースで日本のダート界のスター、フォーエバーヤングに屈しました。その後、ドバイターフでも僅差の2着に敗れ、今夏は右前脚球節の手術で休養に充てています。

そこから復帰し、再びサウジカップで激闘を演じて雪辱を果たす——そんな見出しを見てみたいと思います。

アンドリュー・ホーキンス:
“新制度創設、ゴールデンイーグル勝ち馬にクラシックマイル優先出走権”

4歳(北半球3歳)馬限定の1500m戦・ゴールデンイーグルと、その3ヶ月後に行われる同世代限定の1600m戦・香港クラシックマイルには自然なつながりがあります。

香港ジョッキークラブとしては、海外馬を招待するよりも現地馬主にゴールデンイーグル勝ち馬を購買させたい思惑があるのかもしれません。それでも、あくまでその勝ち馬に限り、1頭だけ国際招待枠を設けるという仕組みは、長期的には強力な施策となり得るでしょう。

マイケル・コックス:
“3歳馬の1400m戦、香港チャンピオンズデーに新設”

3つのG1を同日に集めた2025年の香港チャンピオンズデーは、これまでで最高の見どころある開催でした。その日をさらに盛り上げるために、北半球と南半球の3歳馬を集め、香港の若駒たちと対戦させる1400m戦を加えてみてはどうでしょうか。

ジャック・ダウリング:
“マニュライフ・ミリオンチャレンジ廃止、ハッピーバレースピードシリーズへ”

香港競馬にはシーズン中盤の名物チャレンジがありますが、よりシンプルで分かりやすい形に置き換えるべきかもしれません。特定の距離に焦点を当てたスピードシリーズとして再構築すれば、ファンにも浸透しやすいでしょう。

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