ロマンチックウォリアーは金曜日の夜、メイダンで行われた波乱のG1・ジェベルハッタ(1800m)で華々しい中東デビューを果たし、総賞金2000万米ドルを誇る世界最高賞金レース、サウジカップ(1800m)に駒を進めることが決定的となった。
世界の歴代賞金王、ロマンチックウォリアーはドバイのファッションフライデー開催でも主役を譲らなかった。10度目のG1制覇となったジェベルハッタはまさに凄まじいレースだった。本来であれば何度もリプレイが流されるようなレースだが、前年チャンピオンのメジャードタイムが悲劇的な結末を迎え、その輝きに影が差した形となった。
ジェームズ・マクドナルド騎手の冷静沈着な騎乗ぶりが光り、メジャードタイムに騎乗していたウィリアム・ビュイック騎手が10馬身ほどのリードを奪う大逃げの展開でも、マクドナルドは平然を保ち続けていた。もしスタンドのファンが、コーナーを回った時点で「もう厳しいのでは」と思ったとしても、ニュージーランド出身の名手は落ち着きを失わず、自分の下にいる馬を信頼していた。残り約450メートルの直線があれば、主要なライバルを差し切れると確信していたのだ。
結果的には、メジャードタイムがゴール前で故障発生する前から勝負はほぼ決しており、ロマンチックウォリアーは4馬身半差をつけて圧勝した。そして、コースレコードのおまけ付きでもあった。
「彼の走りが本当に好きなんです」とマクドナルドは話す。
「レース間隔が少し空いたからか、パドックでは元気いっぱいの様子でしたが、スタート地点へ向かう道中は集中していて、何もかもきっちりこなしてくれました。疑念を抱くような場面は一度もありませんでしたね。とても良い手応えで走ってくれたし、最後の直線に入った時点では先頭馬がずいぶん前にいるのが見えましたけど、一完歩ごとに1馬身ずつ詰めていく感覚がありました」
「彼はどんな条件にも対応できるんです。距離がどうであれ、場所がどうであれ、自分の役目を分かっているんですよ。鍋の上で走らせたって、ちゃんと走るんじゃないかと思っちゃうくらいです」
「ただ、サウジカップに限って言えば、ダートでどうなるか、正直言って私にも分かりません。でも一つだけ確かなのは、彼は全力を尽くして素晴らしい走りを見せてくれるだろうということです。勝てるかどうかは何とも言えませんが、乗ってみたいのは彼で間違いありません」

シャム調教師によれば、ロマンチックウォリアーは2月7日にドバイからリヤドへ飛行機で輸送される予定だが、旧正月に関連する輸送の都合でサウジアラビアジョッキークラブ側が日程を調整中の段階だという。
「馬主のピーター(ラウ)さんが、『世界最高賞金のレースに挑戦できる機会なんて、一生に一度あるかないか。だからこそ挑戦しよう』と後押ししてくれた」とシャム調教師は語る。
「人生でやってみなくちゃ分からないと。それで我々は挑戦し続けてきました。その結果、コックスプレートや安田記念、今回のジェベルハッタといった大きなタイトルを手にすることができたわけです。オーナーには彼のチャンピオンをこうして世界で走らせることを許していただき、感謝しています」
「香港ではダートの調教でも良い動きを見せていましたが、調教と実戦は違いますからね。でも、彼は全力を尽くして走る馬ですし、私もサウジカップでは持てる力をすべて注いで、ベストを尽くしたいと思います。何と言っても彼はチャンピオンですから。今日の走りを見てください」
「普通の一流馬なら、あの差を詰めるのは至難の業ですが、私はまったく心配していなかった。ジェームズとロマンチックウォリアーを完全に信頼していましたし、チャンピオンであることを証明してくれました。私はこの馬を心から愛していますし、それを彼も分かってくれていると思います」
ファクトゥールシュヴァル、フランス勢の希望となるか
金曜日の夜にメイダンで行われた2つのG1レースのうち、最初に行われたのはダートのアルマクトゥームチャレンジ(1900m)だ。このレースはタイグ・オシェア騎手のウォークオブスターズが見事な逃げ切りを決め、初のG1制覇を達成。ブパット・シーマー調教師がサウジカップに送り出す面々は、さらに充実することになった。
「オーナーグループはサウジアラビアの方々なので、彼らはぜひ使いたいと思うはずです」とシーマー調教師は語る。
「彼はいつも勝ちきれず日陰に甘んじる立場でしたが、ようやく日の目を見るようになりました。今シーズンの彼の成績を考えれば、この馬がサウジカップに出走する権利は十分あると思いますが、ドバイワールドカップも適性がありそうです。とにかく今は、まったく抜かせない強さを証明してくれています」
元ゴドルフィン所属馬同士のワンツー・フィニッシュとなり、2着にはインペリアルエンペラーが粘った。一方、昨年のドバイターフ勝ち馬であるファクトゥールシュヴァルは、初めてのダート戦でキックバックを浴び続ける苦しい展開になるも、最後は追い込んで3着を確保する大健闘。ジェローム・レイニエ調教師とミカエル・バルザローナ騎手の予想を上回る走りを見せた。
「レース前にミカエルと話をしたとき、今日は勝ち負けは気にしないと伝えていました」とレイニエ調教師は明かす。「ダートで走れるのか、キックバックに耐えられるのか、こういう条件をこなせるのか、それをこのレースで確認することが最大の目的でした。今日はお試しの日だったんです」
「ミカエルは戻ってくると、『キックバックは強烈だったけど、馬は気にせず最後まで伸びてくれた。とても根性がある』と言っていました。彼は本当に素晴らしい馬で、チャンピオンだと思っています。ダートにも適応できるか確かめたかったのですが、今日のレースを見る限りでは、まだ芝ほど良くはないかもしれないが、経験を積めばダートでも同じくらい力を発揮できるようになるかもしれない、という手応えを得られました」
4月には再び芝レースに戻り、ドバイターフ連覇を視野に入れているが、その前に来月のサウジカップに挑戦する可能性があるという。
「まずはレース後の状態を確認しますが、もし問題なく元気で、我々も納得できるようなら挑戦してみたいですね」
「サウジアラビアに行くとすれば、今回とは展開が全く違うでしょう。ワンターンで行われる上に、アメリカや日本の馬たちもいてハイペースになるでしょうし、ここで対戦した馬たちも加わる。息を入れる暇のない、厳しい流れになると思います」
「ですが、彼にはスタミナがあるし、ダートにも対応できる。サウジカップに向けて、プラス要素がどんどん増えているのは確かで、まさにそこが今日確かめたかった部分なんです」
「失うものは無し」ローレルリバー、まさかの敗北も計画に狂いはなし
サウジカップでウォークオブスターズと先手を争う可能性が高い馬は、おそらく同厩のローレルリバーだ。2024年の世界最高レーティングタイの強豪であり、昨年のドバイワールドカップ勝ち馬でもあるローレルリバーは、G3・ファイアブレイクステークス(1600m)で休み明け初戦に臨んだ。前半は持続不可能なペースを刻んで逃げたが、最後は伏兵のキングゴールドにゴール寸前で差し切られるという結果に終わった。
しかし、シーマー調教師はこの敗北に動じることなく、次走をサウジカップとする意向を明かした。ただし、リヤドのコースはメイダンのダートほど彼向きではないかもしれないと考えているようだ。
「アメリカで休み明けを迎えた時も負けましたし、昨年ここでの休み明けは負けています。それでもレースを使うごとに良くなっていくタイプなんです」とシーマーは説明する。
「いきなり無理はさせたくなかったので、ここから大きく上積みが見込めるでしょう。今回は少し休み明けで元気が良すぎたし、かなり速いペースで飛ばしていました。さらに勝ち馬より2キロ重い斤量を背負っていて、ゴール直前でわずかに交わされただけなので、実質的には失うものは何もなかったと言えます」
「これはあくまで叩きです。本番は次の2レース。現段階ではサウジカップを使う予定ですが、あのコースはもう少し速い馬場であってほしいですね。ちょっと脚抜きが重い馬場なので、スピードタイプのダート馬には向かないこともあります。それはアメリカから来る馬たちにとっても同様でしょう。それからドバイワールドカップ連覇も待っていますし、それが彼にとって最大の目標です」
一方、サウジの高額賞金を追いかけないことが確定したのはキングゴールドだ。助手を務めるマリーン・アンリ(ニコラ・コーラリー調教師の妻)は、この芦毛馬が4月の大一番までドバイに留まる予定であると明かした。
「昨年サウジの芝で走ったのですが、結果は芳しくなかったんです。ずっと前からダートでもう一度走らせたいと思っていて、ニコラを説得しようとしていたんですけど、男の人ったらなかなか曲げませんからね。でもようやく言うことを聞いてくれた途端、これですよ!」
「リヤドでもう一度使うリスクは高いので、こちらに残ってゴドルフィンマイルを目標にする可能性が高いですね。スーパーサタデーにも出走できるかもしれません。最後の直線では長いこと2着だと思って泣いていたんですが、勝ったと実況が言ったときは、想像できないくらい泣きました。普段はお酒はあまり飲まないんですけど、今日はもう豪華な晩酌が待っています」
さらなる有力馬たち
メイダンを皮切りに、2月22日の本番サウジカップに向けて出走馬を決定づける重要な前哨戦が幕を開けた。
土曜日のリヤドで行われる前哨戦は、サウジカップと同じコース・距離で施行されるG3・二聖モスクの守護者カップ。ここでは、アメリカから遠征してきたラトルンロールやイージェイウォンザカップが、カーメルロードやディファンデッド、バドル、そして前年勝ち馬のパワーインナンバーズといった地元の有力馬たちと激突する。
一方、アメリカ合衆国でも多くの有力候補がガルフストリームパーク競馬場のG1・ペガサスワールドカップ(9ハロン)に集結した。そのメンバーには、ケンタッキーダービー馬のミスティックダン、昨年のサウジカップで上位入着したサウジクラウン、さらにG1馬のロックト、ホワイトアバリオ、ストロングホールドなどが名を連ねている。

もし、ミスティックダンがリヤドへの切符を手にすれば、ブリーダーズカップクラシック覇者のシエラレオーネや、日本のスターであるフォーエバーヤングとの再戦となる可能性が高い。壮絶な写真判定となったケンタッキーダービーの再現だ。
その他の動向としては、アルゼンチンの最強古馬と名高いエルコディゴも出走に向けて調整中だ。現在、サウジアラビアの馬主グループがこの馬を買収し、中東で走らせるべく交渉を進めているという。この4歳馬はダートと芝、1600mから2400mにわたってG1を5勝している。