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土曜日、リオデジャネイロでは天が裂けるような雨が降り出す中、南米最大のレースは劇的な結末を迎えた。勝利したジョアン・モレイラ騎手はオバタイェを歩かせながら、心を天に向けていた。

1歳馬の頃、自身が見出したこの馬の首に身をゆだねたブラジルの名手は、やがて空を仰ぎ、妻のタシアナさんの亡き父に敬意を捧げるように腕を高く掲げた。

「一週間のうちに悲しみのどん底から幸福の頂点へと至りました。本当に辛かったですね」と、モレイラはIdol Horseの取材に語る。わずか8日前、義父のジョセフ・アウベスさんが亡くなったばかりだった。

モレイラにとって、南米各国を巡回して開催されるG1・ラテンアメリカ大賞は初めての勝利。象徴的なクリスト・レデントール像(コルコバードの丘のキリスト像)が見下ろす、母国ブラジルのガベア競馬場で凱歌を揚げた。

一夜明けた祝勝会の後、モレイラは電話取材に対してリオから「声が出ないです。映画化できるような出来事でした」と話した。

「これは南米競馬最大の国際レースで、毎年異なる国で開催されています。私たちは勝つに相応しい馬に巡り会うことができました」

「もっと有名なレースに勝ったことはあるかもしれませんが、私にとってこのレースは特別な意味があります。これまで一度も、このレースに騎乗する機会はありませんでした」

「アジアに移る前もブラジルで長く乗っていたわけではありませんが、ここブラジルでリーディングジョッキーだった時期でさえ、このレースには乗れなかったんです」

モレイラと、主戦契約を結ぶリオ・イグアス牧場が所有するオバタイェには強い絆がある。二人のコンビで挙げた過去の勝利、例えば2024年のガベア競馬場でのG1・ブラジル大賞や8月のサンパウロでのG1・マシアスマシリン大賞といった、感動的な勝利だけが理由ではない。

「私にとってこれほど意味深いものになったのは、舞台裏の物語があるからです。レースまでの経緯と、この馬との個人的なつながりです」

「兄にこの馬を見つけた時、まだ1歳馬で、たった12,000米ドルで兄が購入したんです。育成先を見つける必要がありましたが、私の友人で、昔ながらのオーナーであるエルナニ・アセヴェド・シウヴァ氏が育成し、オバタイェとして私のもとに送り出してくれました」

「その後、彼はすべてを閉鎖し、売却してしまいました。これが彼の最後の仕事であり、彼の牧場から送り出された最後の馬だったのです」

Joao Moreira and Obataye
JOAO MOREIRA, OBATAYE / G1 Gran Premio Latinoamericano // Gavea /// 2025 //// Photo by Sylvio Rondinelli

オバタイェがシウヴァ氏のパルメリーニ牧場を離れた後、モレイラの兄のジャイール氏の厩舎で育成を続け、アントニオ・オウドーニ調教師の厩舎に入った。

「兄の厩舎では、私の知り合いが数人がこの馬の調教を引き継いでくれました。すぐにこれは走る馬だと気付きました」

「しかし、私でさえ、これほど走る馬だとは知りませんでした。ずっと過小評価されてきたというわけです。誰もこんな素晴らしい馬だとは思っていませんでした」

オバタイェがブラジル代表の四枠のうちの1頭として、ラテンアメリカ大賞への出走権を確保するためには、前哨戦としてサンパウロのレースで勝つ必要があった。しかし、モレイラの故郷であるクリチバから到着した後、5歳馬のオバタイェはトラブルに見舞われた。

「(サンパウロのレースの)15日前に、蹄のいくつかの問題が出て、実戦も十分な調教も積めませんでした。取り消しになるとすら思っていました。この過程の中で、オバタイェは逆境や困難を乗り越えられる強い馬だと証明してくれました」

「その経緯があったので、今回はより手応えがありました。彼はこのレースに向けて調教に入り、5~6週間はしっかりと乗り込めました。状態は絶好調。ただ、相手は南米各地から集まるため、確信までは持てませんでした。それでも地元での一戦ですから、十分に戦える見通しは立っていました」

「ですが、時には運命的なものというか、なるべくしてそうなったのだと思います」

雨は道悪巧者のオバタイェを後押しし、ブラジル最強牝馬のイーサリアムなど、道悪が得意ではないライバルたちには不利に働いた。リオの街には土砂降りの雨が降り続く中。ラテンアメリカ大賞はスタートされた。

「レース直前に雨が降り始めました」とモレイラ。「それはレースを変え、騎手たちの戦術にも影響を与え、多くがより前の方でレースを進めたがりました。流れが速くなり、それがうちの馬には好都合でした」

「また、オバタイェは体格が立派な馬で、スタートからの出が悪い時がありますが、今回はスタートを決めて、良い位置につけられました。その後、終盤で適切な進路を見つけ、残り300mで外に持ち出しました」

「この1か月に起こった背景が、レースを非常に特別なものにし、感動的な勝利になりました」


オバタイェの次走は未定だが、モレイラはコーティアの後継種牡馬としての素質を確信している。

オバタイェの父・コーティアは、ジュドモントファームの生産馬で現役時代は米G2で入着、G1馬のエモリエントが半兄にいる。4代母はG1を2勝したクードジェニーという、ニアルコスファミリーのトップクラスの血統を持っている。

「オバタイェは素晴らしい種牡馬になるでしょう、良い血統を持っています」とモレイラ。

「(レースの)選択肢はあまり多くありません。アルゼンチンには大きなレースがありますが、2400メートルで、この馬のベスト距離は2000メートルです。また、検疫プロセスが複雑なのがネックです」

モレイラの兄は、オバタイェがペランダ家のリオ・イグアス牧場へ売却された後も、少数の持ち分を保持している。家族ぐるみとの親密な関係が、オバタイェとの出会いに繋がり、そしてラテンアメリカ大賞での勝利の意味合いをさらに深めた。

「オーナーは私たちに、クリチバの厩舎を引き継ぎ、私を主戦として契約すると約束してくれました」とモレイラは説明した。「素晴らしいオーナーです。人柄も良く、私と兄の面倒を見てくれました。まるで彼のパートナーであるかのように感じさせてくれます」

「この勝利の意味は、すべてこの馬とのつながりにあります。10年後、きっとこのレースは、自分の実績の中でもトップクラスの思い出になると思います」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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