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オーストラリア競馬にまた一頭、スーパースター候補が現れた。

そして、また牝馬だったことに驚きはない。先週土曜日、ランドウィック競馬場で行われたドンカスターマイルで、シーザアリバイは驚異的な勝ちっぷりを見せた。

彼女は並外れていた。それがなおさら驚きなのは、約1年前に、わずか1万豪ドル(約110万円)で購入された馬だという点だ。

その馬が今や10戦7勝、獲得賞金は370万豪ドル(約4億700万円)に達し、10月の総賞金1000万豪ドル(約11億円)のゴールデンイーグルでも早くも有力視されている。チャンピオン級にまで上り詰めてもおかしくない馬だ。

今週土曜日には、もう一頭のスーパースター候補である無敗牝馬のオータムグローが、同じランドウィックのG1・クイーンエリザベスステークスで断然人気に推されるだろう。オータムグローは11戦11勝、すでに820万豪ドル(約9億円)の賞金を稼いでいる。

では、オーストラリア競馬で新たな主役が現れるたび、なぜその多くが牝馬なのか。

この20年を振り返れば、その傾向ははっきりしている。この時代を代表する3頭、マカイビーディーヴァ、ブラックキャビア、ウィンクスは、いずれも牝馬だった。近年ではベリーエレガントやヴィアシスティーナも、それぞれに驚異的な実績を築いている。

歴史的に最も参考になるのは、オーストラリアの2歳王者決定戦、ゴールデンスリッパーかもしれない。

第1回の1957年から1999年までの43回で、牝馬の勝利はわずか16回。27勝を挙げた牡馬とセン馬が優勢だった。ところが2000年以降は流れが逆転し、26回のうち牝馬が15勝、牡馬と騸馬は11勝にとどまっている。

しかも忘れてはならないのは、牝馬に与えられる斤量差が、2005年に3キロから2キロへ縮小されたことだ。牡馬と騸馬に1キロ有利な修正が入ってもなお、牝馬は勝ち続けている。

オーストラリア年度代表馬も同じ構図だ。今世紀の受賞馬26頭のうち17頭が牝馬である。

そこには、理由があるはずだ。

一つは、2014年のアナボリックステロイド禁止だ。禁止前は、レースに出ていない期間であればオーストラリア競馬界全体で合法的に使用されており、その恩恵は牝馬よりも牡馬や騸馬、とりわけ騸馬の方に大きかった。

1980年代、90年代、2000年代を振り返れば、大レースには、圧倒的な強さを見せる騸馬が数多くいた。だが、かつてのようなスーパースター級の騸馬は、いまではほとんど見かけない。ステロイドの恩恵を最も受けていたのがセン馬だったからだ。

去勢された馬は、牡馬が本来持っているテストステロンを失う。一方で牝馬には、牝馬特有のホルモン環境がある。そこから化学的な後押しを取り除けば、最も大きく戦力を削がれるのは騸馬だ。

もう一つは、優秀な牡馬が早々に種牡馬入りしてしまうことだ。

さらに、オーストラリアで走る姿が見られる前に、有望な若駒を香港の馬主が買っていってしまう。サイレントウィットネス、セイクリッドキングダム、ゴールデンシックスティ、そして今のカーインライジング。そうした馬がオーストラリア競馬から引き抜かれていくたびに、層は毎年薄くなる。結果として、牝馬と競う相手の層も薄くなる。

そして、誰もあまり語らない要素がもう一つある。それが騎手の鞭だ。

私が騎乗していた頃から、牡馬や騸馬の方が牝馬より鞭への反応が大きいと感じていた。牡馬や騸馬は、鞭の合図を繰り返して前進気勢を促す必要があった。牝馬は概して、そうした後押しをあまり必要としなかった。

オーストラリアでは2009年以降、鞭の規則が繰り返し厳格化されてきた。使用回数は減り、パッド付きの鞭が導入され、残り100メートル以前の使用にも制限がかかった。

そこに5年後のステロイド禁止が重なり、以前は牡馬や騸馬に有利に働いていた要素が二つ消えた一方で、牝馬はほぼ変わらない条件で走っている。

それに対して、あまり変わっていないのが斤量体系だ。ゴールデンスリッパーのようなレースや、ドンカスターマイルのようにその考え方がハンデ設定にも反映されるレースでは、牝馬はいまも牡馬や騸馬より2キロ軽く設定されている。

こうした斤量体系の土台が定められたのは1850年代で、アナボリックステロイドもパッド付きの鞭も、まだ誰も知らない時代だった。

昔から私は「強い牡馬は、強い牝馬に勝つ」と教えられ、それを信じていた。だが、もうそれは正しくないと思う。この時代は、強い牝馬が強い牡馬を上回る。

現役馬の分かりやすい例が、シーザアリバイと、現時点での3歳牡馬の最有力馬であるオータムボーイだ。シーザアリバイはオータムボーイより3キロ軽い斤量で走り、4馬身以上の差をつけて勝った。

今世紀の牝馬優勢を見れば、見直しが必要な時期に来ている。均衡はすでに一方に傾いているのに、ルールの方が追いついていないのだ。

シェーン・ダイ、Idol Horseのコラムニスト。 オーストラリアとニュージーランドで競馬殿堂入りを果たし、1989年のメルボルンカップ(タウリフィック)、1995年のコックスプレート(オクタゴナル)では名勝負を演じた、G1・通算93勝の元レジェンドジョッキー。また、香港競馬では8年間騎乗し、通算で382勝を挙げている。

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