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トム・マーカンド騎手とホリー・ドイル騎手の夫妻が日本に到着した。3年連続のJRA短期免許取得となるが、この機会は二人が一緒に過ごす時間にも繋がっている。

今年のイギリス騎手リーディングで3位にランクインしたマーカンドだが、土曜日は東京、日曜日は京都での騎乗が予定されており、G1・エリザベス女王杯ではシンティレーションとコンビを組む。

一方、リーディング7位のドイルは土曜日も日曜日も福島で騎乗する予定となっている。

「日本に戻るのが楽しみです」と、先週デルマーでIdol Horseの取材に応じたドイルは話す。彼女はブリーダーズカップの後はオーストラリアのメルボルンカップに騎乗し、その足で東京に向かう。2人の短期免許は12月22日、有馬記念の週まで有効となっている。

マーカンドもドイルと同様に、日本滞在を心待ちにしているという。

「日本滞在を一年中楽しみにしているんですよ。なので、短期免許の申請が通ったか判明するまでの1週間は毎年緊張します。本当にやりたいことですからね」と、マーカンドはIdol Horseに対して語ってくれた。

過去2回の短期免許では好成績を残しており、訪日を望むのも不思議ではない。2022年は16勝、2023年は20勝という勝ち星を短期間で挙げている。ドイルは2022年は2勝のみに留まる苦戦の年だったが、2023年は12勝を挙げる飛躍を遂げている。

Hollie Doyle wins at Nakayama
HOLLIE DOYLE, WIN RHEIA / Nakayama // 2023 /// Photo by RINOT

今回の来日での目標は、日本競馬界でより評価を高め、人脈をさらに広げることだ。重賞レースでも好成績を残し、日本馬の海外遠征で鞍上に起用されるような存在になることを目指している。

「日本で人脈を築けていると良いのですが、日本での経験が長いわけではないので、詳しいことは分かりません」とマーカンドは話す。

「ライアン(ムーア騎手)やウィル(ビュイック騎手)は何年もの間、日本で多くの時間を過ごして人脈を築いてきました。今の成果は積み上げてきた基盤の上に成り立っています。私たちはまだそういうレベルではありませんが、招待してくれた素晴らしい方々に恵まれています。私は宮田敬介厩舎、ホリーは田中博康厩舎に所属し、とてもお世話になっています」

「今では日本に戻るたびにお馴染みの人々がいますし、美浦トレセンのスタッフたちも私のことを覚えてくれています。朝、美浦に出向くと顔と名前が分かるようになりました。いつか日本で認められる存在になれれば良いのですが、それはまだ時期尚早ですね」

イギリス競馬のシーズンは連日休みなく続くため、マーカンドとドイルの日本滞在はレース以外の時間で一緒に過ごす機会を作れるタイミングでもある。

「日本での生活は今までの暮らしとは違いますね。(妻とは)13、14歳の頃からずっと一緒にいました。それが当たり前の日々ですし、それを楽しんでいますが、今こうして一緒に日本に行けるのは嬉しいです」

「私たちは競馬が最優先です。休日とかは関係ありません。ですが、今は1日か2日くらい休みを取って普通の人のようにランチを食べたり、素晴らしい国の素晴らしい人々と交流を楽しんで、一緒に過ごすことができます。最高のバランスです」

Tom Marquand and Hollie Doyle
TOM MARQUAND, HOLLIE DOYLE / Doncaster // 2022 /// Photo by Mike Egerton

JRAは週末のみ競馬開催が組まれており、そのスケジュールのおかげで2人の時間を確保できるという。

「調教に乗るのは水曜日と木曜日です。美浦まで車で1時間半かかるので、都心に戻るのは午後1時とか2時ですね。しかし、月曜日と火曜日は休みが取れます。残りは仕事なので、木曜日と金曜日は競馬に向けて体重管理に気を付けています。移動時間が多いイギリスのやり方とは違いますね」

「イギリスはシーズン前半こそ忙しいのですが、なぜかスケジュールの都合でレース当日は同じ競馬場で顔を合わせることが多いです。ですが、8月になるとまた忙しくなる。日曜日の夜に落ち着いて話をできたのですが、きちんと会えたのは6週間ぶりでした」

「もちろん、不満というわけではないんですよ。これが仕事なので。好きでやっていることですし、この仕事は長く続けたいです。とはいえ、1ヶ月とか2ヶ月くらい落ち着いて私生活を楽しむのは良いことだと思いますし、日本行きを楽しみにしているのはそれも理由の一つです」

ドイルとマーカンドが日本行きを熱望しているもう一つの理由は、競馬を楽しむファンたちの熱狂だ。

「日本の競馬ファン層は素晴らしいですよね」と、マーカンドは話す。

「それが日本競馬の基礎ですし、私たちが楽しんでいる大きな理由です。競馬と馬に対する情熱は本当に凄い。競馬ファンの一人として楽しんでいます。もちろん、私たちはプロのジョッキーですが、心は競馬ファンのままです。そういう側面を見るのは嬉しいですし、こんなに多くの人が楽しんでくれているなんて、本当に素敵だと思います」

ドイルは今年G1レースを2勝、マーカンドは愛チャンピオンSのエコノミクスやアベイドロンシャン賞のマカロヴァを含め、今年G1を5勝している。これらの国際的な注目度が高いビッグレースで勝つことは、日本との繋がりを築く上でも重要だと彼は考えている。

Economics wins the G1 Irish Champion Stakes
ECONOMICS, TOM MARQUAND / G1 Irish Champion Stakes // Leopardstown /// 2024 //// Photo by Alan Crowhurst

「日本競馬のファン層は強固ですが、大半の人の興味は日本競馬、日本馬に対する関心です」

「シンエンペラーが参戦した愛チャンピオンSや、凱旋門賞同日のG1をマカロヴァで勝つことが出来ました。日本馬が出走する日は日本人も注目してくれていますし、そういう日に勝てるのは世界的な知名度を高める上でも重要だなと感じています」

「日本でも高いレベルでの成功を積み重ねていきたいです」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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