メルボルンカップを12回制覇した伝説の名伯楽、バート・カミングス調教師の孫がオーストラリアを去り、香港へと旅立つ。ジェームズ・カミングス調教師が、香港競馬の調教師として新たなキャリアを始めることが分かった。
ゴドルフィン・オーストラリアの専属調教師として名を馳せたカミングスだが、7月31日付けで専属契約は終了。その発表からわずか1ヶ月後、彼の新たな挑戦として、26/27シーズンから香港ジョッキークラブ(HKJC)の調教師ロースターに加わることが明かされた。
名門カミングス一家の調教師を香港に招致できたことは、HKJCとしても大きな成果と言える。しかも、モハメド殿下が率いる世界的なゴドルフィンから独立した直後の獲得、となれば尚更だ。
カミングスは当初、オーストラリアで調教師として独立するプランを思い描いていた。トムキトゥンやテンプテッドのようなゴドルフィンの一流馬を引き続き管理することを希望していたが、香港からの高額オファーが受け、その将来は変わることとなった。
カミングスは現在37歳。香港競馬への引き抜きは以前から取り沙汰されており、ゴドルフィンとの契約終了を機にそれが実現した形となった。若い家族とともに海外に移住するには、絶好のタイミングでもあった。
オーストラリア国内では、すでにG1レースを52勝しているカミングス。このまま順調に行けば、祖父のバート、ゲイ・ウォーターハウス、クリス・ウォーラー、ジョン・ホークスといった歴代の名伯楽の中に、ジェームズ・カミングスの名前も加わるであろうと目されていた存在だった。
また、ゴドルフィンの専属調教師退任を表明後、ロイヤルランドウィック競馬場に隣接するレイラニロッジ調教場の利用許可を申請。祖父のバートが約50年に渡って拠点としてきた厩舎を引き継ぐ意思を見せた一方、次のキャリアにはあらゆる選択肢が残されているとも語っていた。
オーストラリアン・ターフクラブ(ATC)はレイラニロッジの空き馬房を巡り、巨大厩舎を率いるキアロン・マー調教師、ウォーターハウス & エイドリアン・ボット厩舎への割当も含めて検討を続けてきたが、カミングスは香港移籍によって正式に撤退する運びとなった。
ヴィクトリア・レーシングクラブ(VRC)はカミングスの独立後を見据え、フレミントン競馬場にあるゴドルフィン所有のカーバインロッジ厩舎を引き続き利用する許可を出していたが、これも白紙に。空き馬房の行方は未定となった。
カミングスは、香港のトップジョッキーであるヒュー・ボウマン騎手との縁が深く、これまで2人のコンビではG1を7勝している。香港移籍後、このコンビが復活する可能性も充分あり得そうだ。
ジェームズがシドニーを去ることになったため、オーストラリアで調教師としての仕事を続けるカミングス家の人物は弟のエドワードのみとなる。兄弟は親子4代でのG1トレーナーとして知られている。
ジェームズとエドワードの父、アンソニー・カミングス氏も調教師だったが、厩舎の財務問題を理由にレーシングNSWから調教師ライセンスの剥奪処分を科された。そのため、同氏が利用していたレイラニロッジは退去となり、ATCによる入札手続きが始まった。
カミングス家は香港との繋がりも深い。1997年、シャティン競馬場で行われた香港ボウルを制したカタランオープニングはバートの管理馬だった。