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カール・バーク厩舎が来週のロイヤルアスコットに送り込む先陣は、2度のG1制覇を誇るフォールンエンジェルとなる。出走予定は牝馬限定マイル戦、G2・デュークオブケンブリッジステークスだ。G1・クイーンアンステークスではなく、同世代の牝馬同士の一戦を選んだ形だ。

昨年は、レオヴァンニがクイーンメアリーステークスを、またシェアホルダーがノーフォークステークスを制し、2歳戦で存在感を示したバーク厩舎。今年も、フォールンエンジェルと同じワスナンレーシングの勝負服を纏った若駒たちが、その系譜を継ぐとみられる。

「今年も多くの登録をしています。全部で15頭か16頭は出走できるのではないかと思っています」とバーク調教師はIdol Horseに語った。

フォールンエンジェルにとって、今回がバークシャーの名門コースへの初挑戦となる。昨年はG1・愛1000ギニーを制したものの、その後の故障により、ロイヤルアスコットでのG1・コロネーションステークスを回避。その後、秋まで休養を余儀なくされ、復帰後はG1戦を2戦して2着と4着という成績だった。

今シーズンの初戦は5月17日のG1・ロッキンジステークス。ニューべリー競馬場で逃げの手に出たが、最終的には6着。勝ったリードアーティストのほか、ロザリオンやノータブルスピーチといったスター牡馬たちに先着を許した。

それでも、バーク調教師はその走りに手応えを感じている。

「フォールンエンジェルは牝馬限定のマイル戦に向かいます。ロッキンジSでの走りには満足しています」と同調教師。「毎年のことですが、彼女は初戦を使って大きく良くなる馬です。レース後の状態も非常に良好で、順調に来ています」

父トゥーダーンホットのこの4歳牝馬は、バーク調教師の娘婿であり、アシスタントでもあるジェームズ・カウリー助手が普段の調教パートナーを務めている。アスコットを8日後に控えた火曜日朝の調教でも、陣営はその動きに好感触を得たという。

「今朝の動きも良かったですよ」とバーク調教師は笑顔で語った。

昨年は、G1・オペラ賞で初めて2000mに挑み、重馬場の中で4着に粘ったフォールンエンジェル。今後の路線に関しても、調教師は再びその距離への挑戦が視野にあると明かす。

「2000mもこなせるチャンスは十分あると思っています。去年のシーズン終盤は重馬場もあって思うようにいかなかったですが、再挑戦の機会をうかがっていますし、アスコットのようなタフなマイル戦も充分に守備範囲です」

スピゴットロッジ調教場に拠点を置くカール・バーク調教師は、2024年に過去最高のシーズンを記録したばかりだが、今季も2歳馬を中心に勢いは衰えていない。80頭を超える2歳馬を擁し、ここまで年間45勝、勝率18%という好成績を残している。

6月に入ってからも10日間で3勝を挙げており、その中には6月4日にノッティンガム競馬場で鮮烈なデビュー勝ちを収めたワスナンレーシング所有の注目牝馬、ゼレイナもその中に含まれる。

Zelaina breaks her maiden at Nottingham under James Doyle
ZELAINA, JAMES DOYLE / Maiden Fillies’ Stakes // Nottingham /// 2025 //// Photo by Alan Crowhurst

メーマス産駒のゼレイナは、春先のゴフス・UKブリーズアップセールで65万ポンド(約1億3,000万円)で落札されたこの素質馬。昨年同じレースを勝ってロイヤルアスコットのG2・クイーンメアリーSを制したレオヴァンニの後を追うことになりそうだ。バーク厩舎は2023年にも、同レースをドラマタイズドで制している。

「ゼレイナはスピードに秀でた牝馬で、すでにクイーンメアリーSに登録を済ませています。初戦の走りにはとても満足していますし、順調に行けばロイヤルアスコットに送り出します。少し気性が荒い面もありますが、初戦ではよく我慢してくれましたし、大きな問題にはならないでしょう」

さらに、もう1頭の有力2歳牝馬として、5月にカーライル競馬場でデビュー勝ちを収めたヴェネチアンサンもアルバニーステークス(1200m)への出走が予定されている。オーナーはプレミアリーグ・ブライトンのオーナーとして知られるトニー・ブルーム氏とイアン・マカリーヴィー氏だ。

「順調ならば、ヴェネチアンサンはアルバニーSに向かいます。非常に素質の高い牝馬で、今朝の調教でも素晴らしい動きを見せてくれました」とバーク調教師は語った。

一方、昨年のクイーンメアリーSを制したレオヴァンニは、今年は3歳限定のG1・コモンウェルスカップ(1200m)に出走予定。バーク厩舎は2016年の同レースを牝馬のクワイエットリフレクションで制しており、2頭目の牝馬制覇に期待がかかる。

「レオヴァンニはヘイドックでの今季初戦もいい内容でした。前走はあまり運に恵まれませんでしたが、次はもっと良くなるでしょう」

また、同じくワスナンレーシング所有の牡馬、ネイヴァルライトも2歳戦線で注目される一頭。デビュー戦となったビヴァリー競馬場の5ハロン戦では2着に好走している。

「ネイヴァルライトはコヴェントリーステークスかノーフォークSのいずれかに出走させるつもりです。どちらに向かうかは、ワスナン側の他の出走馬次第になるでしょう」と調教師は説明した。

バーク調教師は、ロイヤルアスコットでの好結果が、夏以降のさらなる弾みとなることを期待している。

「ここまで非常に良いスタートを切れていますし、それを維持できています。ただ、思ったより走れていない馬も何頭かいますので、それらが立ち直ってくれば今季はさらに素晴らしいものになるでしょう。今のところは非常に満足しています」

「我々はただ、できるだけ多くの勝ち星を積み重ね、できるだけ多くの賞金を稼ぐ。それだけです。特に数字上の目標を掲げているわけではありません」

そう語ったバーク調教師は、こうも付け加えた。

「もっとも、昨シーズンの数字はそこにありますから、できるだけ近づきたいと思っています」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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