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スーパースタージョッキー、ダミアン・レーンにできないことは一体存在するのか?

土曜日、コーフィールド競馬場のG1・メムジーステークス(1400m)をトレジャーザモーメントに騎乗して制したダミアン・レーン騎手。キャリア通算43度目のG1勝利を飾った翌日、わずか16時間後にはシドニーマラソンに参加するために北上し、自己ベストとなる2時間42分49秒で完走、32,988人中の197位に入った。

「忙しい週末でしたが、間違いなく忘れられない体験になりました。天気も素晴らしかったですし、コースは景色が美しく、アップダウンは少しありましたが、とても楽しめました」と、レーンはIdol Horseに語る。

今年、シドニーマラソンは初めて『ワールドマラソンメジャーズ』に認定され、東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークと並んで世界最高峰のマラソン大会の仲間入りを果たした。

全長42kmのコースはシドニー・ハーバーブリッジを渡り、今年レーンがアエリアナでG1・オーストラリアンダービー、トレジャーザモーメントでG1・オーストラリアンオークスを制したランドウィック競馬場の近くを通り、シドニーのビジネス街へと戻っていく。

シドニー・オペラハウスのちょうど影の下にあるゴールを駆け抜けたとき、レーンは自己ベストを8分近く更新していた。優勝したハイレマリアム・キロス(2時間06分06秒)、シファン・ハッサン(2時間18分22秒)、そしてマラソン界のレジェンド、エリウド・キプチョゲ(2時間08分31秒)の記録には及ばないものの、世界屈指のマラソンランナーたちと並び、見事な走りを披露した。

「3年ほど前から趣味として走り始めました。もともとフィットネスの一環として走っていましたが、少し練習量を増やすことで日々の騎乗の単調さから抜け出すことができました」

「レース前日にジョッキーとして減量するのはマラソンに対して理想的な準備ではありませんが、これ以上速く走れるかは分かりません。多少は速くなるかもしれませんが、大きな違いはないと思います」とレーンは笑った。

マラソンと競馬の騎乗、一見するとかけ離れた世界に見えるが、実際にやってみると大きな違いは無いとレーンは明かす。

「実際のところ大差はありませんし、騎乗自体が体力を使うので、フィットネスを維持してくれます」

「マラソンやロードランニングに必要なのは、舗装路での衝撃に脚を慣らすことが中心です。有酸素運動という点では、騎乗もかなり負荷が高い部類に入ります。レースはわずか数分にすぎませんが、その間の心拍数の上がり方や、競走馬をコントロールする身体的負担を考えれば、実際にどれほど過酷かは過小評価されていると思います」

一方で、世界レベルのマラソンで好タイムを記録することと、世界最大級の大レースを勝ち取ること、この二つの難易度は異なると説明する。

「簡単なことではないですが、マラソンを走る場合はすべて自分でコントロールできます。やろうと思えば今日からでも練習を始められるんです」

「例えばG1・日本ダービーのような大レースに勝つ方がずっと難しいです。騎乗機会を得るまでに全身全霊をかけて努力する必要がありますし、その上で全てが完璧にかみ合わなければ勝てないからです」

Damian Lane runs in the Sydney Marathon
DAMIAN LANE / Sydney Marathon // 2025 /// Photo supplied

マット・ローリー厩舎の牝馬、トレジャーザモーメントは先週土曜日のG1・メムジーSを快勝し、今シーズンの幕開け早々にスターへと躍り出た。

同馬はG1・VRCオークス(2500m)、G1・ヴァイナリースタッドステークス(2000m)、G1・ATCオーストラリアンオークス(2400m)に続いてのG1・4勝目となり、昨季から継続中の連勝記録もこれで9連勝まで伸びた。

トレジャーザモーメントについて、レーンは「これまで乗ってきた馬の中でも最も反応のいい一頭です」と自身の手応えを語る。

「わずかに合図を送るだけで即座に応えてくれます。1完歩や2完歩を待つ必要はないんです。そんな特性を持つ馬は多くありません。この秋の大レースではさらに活躍してくれると思います」

トレジャーザモーメントが今季どの大舞台を狙うのかは、オーナーのユーロンの判断に委ねられている。最終的な目標は、10月18日のG1・コーフィールドカップ(2400m)、10月25日のG1・コックスプレート(2040m)、あるいは11月1日の賞金1,000万豪ドルを誇るゴールデンイーグル(1500m)になる見込みだ。

「コックスプレートをおすすめしたいですね。彼女は2つのオークスを能力の高さで勝ち切りましたが、その距離では少し持ち味が活かされていなかったように感じました。彼女が持つ電光石火の末脚は2000m前後でこそ生きると思います」

レーンは2019年、日本の名牝リスグラシューでG1・コックスプレートを制しており、トレジャーザモーメントにも同じような資質を感じている。

「それぞれ違う競走馬ですので、比較するのは難しいですね」とレーン。「どちらも長い距離を速いペースで走り切る力があり、素晴らしい気性の持ち主です。非常に負けん気が強く、勝利への意欲にあふれている馬たちですね」

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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