ザック・ロイド騎手は幼少期、シャティン競馬場の近くにあるアパートの周りを走り回って遊んでいた。今やオーストラリアを代表する期待の若手ジョッキーに育った彼は、いつか思い出深い香港競馬で騎乗したいと明かした一方、それと同時に日本競馬にも強い憧れがあるという。
今回、Idol Horseの取材に応じ、アジア進出への意欲を語ってくれた。
ロイドはシドニーの見習い騎手の年間勝利数において、過去40年で最多勝記録を打ち立てた若手の有望株だ。直近2シーズンのシドニー地区リーディングでは、ジェームズ・マクドナルド騎手に次ぐ、2位と3位に入っている。
そのマクドナルドは今や “ワールドベストジョッキー” を受賞し、G1デー開催のたびに香港から騎乗依頼が来る世界的なジョッキーとなっている。
ロイドは日本や香港から定期的に騎乗依頼を受けているわけではないが、父のジェフが現役時代に香港競馬で騎乗していた縁もあって、香港は身近な存在だと話す。
「本当に最高でした。香港は思いっきり楽しめました」とロイドは語る。
「いつか香港に行く機会があれば、真剣に検討したいと思います。いつか香港で騎乗する機会が来ればと思っています」
ロイドが見習い騎手時代の22/23年シーズンに挙げた76勝(メトロ限定)という記録は、1980/81年のウェイン・ハリス騎手以来となる、実に40年以上ぶりの見習い騎手最多勝記録だった。
その翌年も見習い騎手リーディングのタイトルを防衛し、22歳を迎えた現在は減量が外れた一般のジョッキーとして戦っている。
トップジョッキー相手にリーディング上位に入り込んだその活躍は、日本で短期免許を取得する道も切り拓いた。JRAが短期免許の取得要件とする条件の一つに、『シドニーのメトロポリタン競馬リーディングで3位以上に入った実績』が含まれており、ロイドはそれをクリアしている。
オーストラリアのジョッキーとしては近年、ダミアン・レーン騎手、クレイグ・ウィリアムズ騎手、レイチェル・キング騎手などがJRAの短期免許を取得し、日本で成功を収めてきた。
ロイドは「そのこともずっと頭の中にありました」と自身の考えを明かす。
「いつか日本で短期免許を取得したいと考えています。たとえば、今年の年末あたりになるかもしれません。少し気が早いかもしれませんが、近いうちに世界の競馬で勉強してみたいなと思っています」
「日本の競馬は毎週欠かさずチェックしていますし、どんな馬がいるのかも把握しています。日本競馬は世界最高峰なのではないでしょうか。そんな舞台に足を踏み入れないというのは考えられません」

しかし、そんな彼が他のどのレースよりも強く熱望している一戦がある。南アフリカのG1・ダーバンジュライだ。
父のジェフは騎手時代、南アフリカ、香港、モーリシャス、そしてオーストラリアで活躍してきたが、このダーバンジュライを勝つことは一度も叶わなかった。息子のザックが来年こそ騎乗したいと望む理由は、まさにそれだ。
「賞金自体はシドニーの土曜レースと大して変わりませんが、それでもなお、自分が世界で一番勝ちたいレースと言ったらダーバンジュライになると思います」
「父さんが勝てなかったレースを自分が勝って、父さんをコースに招待する。そんな特別なことができたら、きっと騎手人生で一番の瞬間になるはずです」
ロイドはこれまで、オーストラリアでG1を3勝している。その3勝の中には、ビョルン・ベイカー厩舎のステフィマグネティカで制したG1・ストラドブロークハンデキャップも含まれている。