本来、ブカネロフェルテは、今週日曜日にカラ競馬場で行われるG1・フライングファイブステークスに出走するはずがなかった。しかし、運命のいたずらは結果的にレースを盛り上げることになった。キャリア2度目のG1制覇を目指し、「絶好調」の4歳馬が勝負に出る。
エイドリアン・マレー調教師は昨秋、ブカネロフェルテをウートンバセットの後継種牡馬としてタリーホースタッドに送り出した。当初、1万2500ユーロの種付け料で繋養されていたが、繁殖シーズンに入ると交配した繁殖牝馬が一頭も受胎していないことが判明。
急遽、アイルランドのウェストミーズ州にあるマレー厩舎に戻って現役続行となり、短い引退生活に別れを告げた。
そして今回、同厩馬のアリゾナブレイズとともに、20頭立ての電撃5ハロン戦に挑む。4歳秋の充実ぶりを証明すべく、絶好のチャンスが巡ってきた。
Idol Horseの取材に対し、マレー師は「どちらも本当に絶好調です」と述べ、レパーズタウンとカラで開催されるアイリッシュチャンピオンズフェスティバルに向けて「良い態勢で臨めそうです」と明かした。
ブカネロフェルテは、5月にネース競馬場で行われたリステッド・ソールパワースプリントSで復帰戦を飾ると、先月には秋に向けた叩きとなるG3・フェニックススプリントSも快勝。ここまで2連勝中と勢いに乗っている。
カラ競馬場のコースとも相性が良く、これまで6戦4勝と好成績を残している。2歳時にはG1・フェニックスSとG2・レイルウェイSを制している。ただし、昨年はこのレースで惨敗。2024年の秋はいずれも冴えない結果に終わり、2歳時の輝きを失ったと見られ、種牡馬入りした経緯がある。
「ネースで使った後、秋に照準を合わせようと考えました。前走カラで勝った後はここを使おうと決めました」とマレー師。8月下旬、オーストラリアのアスフォーラが制したG1・ナンソープSには、ブカネロフェルテではなくアリゾナブレイズの方が出走していた。
ブカネロフェルテは4歳シーズンを迎えて一段とパワーアップし、円熟期を迎えているというのがマレー師の見立てだ。
「良い方向に進んでいます。ここ2戦は成長したところを見せてくれましたし、以前のような能力の高さを証明してくれました。G1レベルでも戦える能力がある馬なので、できれば良い結果を期待したいですね。レースに向けて満足できる状態に仕上がっています」

エイドリアン・マレー厩舎、そしてキア・ジューラブシアン氏が運営するアモレーシングの所有馬という点でも共通する、アリゾナブレイズもフライングファイブSに出走予定。ブカネロフェルテよりも1歳年下の後輩だが、レースの出走経験数は3走も多い。
2歳時は9戦走り、ロイヤルアスコット開催のG2・ノーフォークSと、G1・フェニックスSで上位入着。さらに、G1・BCジュヴェナイルターフスプリントでも惜しい2着を経験した。
今年はすでに7戦に出走し、3勝をマーク。2走前には今回と同じ、カラの5ハロンで行われたG2・サファイアSを制覇。しかし、前走のナンソープSでは17頭立ての11着と不本意な結果に終わっている。
「アリゾナブレイズは大崩れしない馬なのですが、前走は少し残念な結果でした。本来の走りが戻ってくれば、間違いなく上位争いに食い込める馬だと思っています」
「あの日は仕方なかったのかなとも思います。脚質としては先行馬ですが、ナンソープSではゲートで出遅れてしまった。道中も後手に回った結果、自分自身の競馬ができなかったのでしょう。ヨーク競馬場はおそらく時計が出る馬場でしたから、スタミナが求められるカラとは勝手が違います」
また、愛1000ギニー2着馬のカリフォルニアドリーマーはG1・メイトロンSに出走予定。6月のロイヤルアスコット開催、G3・ジャージーSで大敗するなど、近3走は案外な結果に終わっているが、この一戦で 巻き返しを図りたいところだ。
「愛1000ギニー以降は少し期待通りに走れていませんが、厩舎では好状態を見せています。ここに来て良くなっていると思いますよ」
「アスコットでの走りは2回とも良くなかったので、輸送が苦手なのではないかと見ています。今回は良い走りを期待しています」
かつては畜産農家として働き、ポイントトゥポイント(アマチュア騎手の障害競馬)から調教師キャリアをスタートさせたマレー師は、今となってはアモレーシングに欠かせない重要人物となっている。10年前、ブラジルの騎手からブラッドストックエージェントに転身したロブソン・アギアー氏とタッグを組んでからは、アモレーシングの後押しもあって厩舎は着実に成長を遂げている。
来シーズン、マレー師の厩舎はアギアー氏との共同ライセンスに移行する予定だ。
マレー師は2023年のノーフォークSをヴァリアントフォースで制して重賞初制覇を挙げて以降、G1レースは2勝している。