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シャティン競馬場の香港国際競走まではまだ3か月あるが、中山競馬場で迎える今週末のG2・オールカマーが、そのカウントダウンの始まりとなる。

なかでも、レガレイラは大きな注目を集める存在だ。昨年のG1・有馬記念を制した4歳牝馬は、年末のグランプリ連覇を狙って国内に留まる可能性もある。しかし、木村哲也調教師は春先にIdol Horseに対して「彼女を世界の競馬ファンに見せたい」と語っており、G1・凱旋門賞遠征を見送った今でも、香港がその舞台になる可能性は残っている。

いずれにせよ、オールカマーは好発進の場だ。近年、この2200m戦は日本勢がG1・香港カップやG1・香港ヴァーズに挑む際の重要なステップになってきた。実際、直近4年の勝ち馬のうち3頭が香港国際競走に姿を見せ、堅実な結果を出している。

2021年にオールカマーを勝ったウインマリリンは、翌年の香港ヴァーズを制覇。2022年の勝ち馬、ジェラルディーナは2年続けて秋初戦にオールカマーを選び、その後は香港のクイーンエリザベス2世カップで6着、香港ヴァーズでは4着に。2023年の勝ち馬、ローシャムパークは香港カップで8着だったが、約1年後のG1・BCターフで2着に入った。

敗れた馬たちも、また参考になる。2023年のオールカマーで3着のゼッフィーロは、その2走後に香港ヴァーズで2着。2019年には、G1・QEIIカップ制覇後に夏休みを挟んでオールカマー9着だったウインブライトが、同年末にもう一度シャティン競馬場で香港カップを制している。

レガレイラが本命視されるが、同じ4歳のコスモキュランダやホーエリートは昨年クラシック戦線で活躍した実力馬。ヨーホーレイクもG1での入着経験がある。好走次第で “シャティン行き” を引き寄せるタイプたちだ。

一方、先週末の欧州では、日本の凱旋門賞遠征馬たちにとって明暗が分かれた。矢作芳人調教師のシンエンペラーはG1・アイリッシュチャンピオンステークスで苦戦し、目標をジャパンカップへ切り替える。それでも、8月中旬のアロヒアリイのドーヴィル競馬場での勝利、ビザンチンドリームのG2・フォワ賞勝利に続き、注目の3歳馬クロワデュノールがG3・プランスドランジュ賞を僅差で制して着実に前進した。

クロワデュノールは日本を代表する最有力候補だ。同馬が制したG1・日本ダービー組の強さは、JRAのもう一つの日曜メイン、G2・神戸新聞杯で改めて示される可能性がある。

このレースは日本の三冠最終戦G1・菊花賞への前哨戦で、ショウヘイ、エリキング、ジョバンニという評価の高い牡馬が顔を揃える。彼らはダービーでクロワデュノールの3着、5着、8着。エリキングは中内田充正調教師の管理で藤田晋氏所有の2歳時無敗の馬で、ダービーでは後方から目を見張る鋭い伸びを見せた。

Eri King wins at Chukyo
ERI KING / Chukyo // 2024 /// Photo by まいる @randam_name

過去の勝ち馬には、三冠馬のコントレイルとディープインパクトが名を連ねる。後者はロンシャンの凱旋門賞に挑んだことでも知られ、他にもオルフェーヴル、ゴールドシップ、レイデオロ、サトノダイヤモンドといった神戸新聞杯の勝ち馬も凱旋門賞に挑戦している。さらに欧州やドバイで好走した馬もいる。

こうした下地がある以上、今週末の主役たちが今後大きな勝ち星や胸躍る海外遠征を手にすることは十分に期待できる。

土曜のコーフィールド競馬場で行われるG1・アンダーウッドステークスは、G1・コーフィールドカップ、G1・メルボルンカップというオーストラリア春競馬の二大レースへ向けた重要なステップレースとなることが多い。

そして今年も、昨年のメルボルンカップの勝ち馬、ナイツチョイスに加え、昨年のアンダーウッドS勝ち馬でコーフィールドカップ2着のバッカルーが出走を予定している。

オーストラリアの芝中距離以上のビッグレースらしく、欧州からの移籍馬であるサーデリウスやミドルアースの姿もあるが、目を引くのは北米のトップ牝馬2頭、歴戦のモイラとアニセットの参戦だ。

Moira claiming the G1 Breeders' Cup Filly & Mare Turf
MOIRA, FLAVIEN PRAT / G1 Breeders’ Cup Filly & Mare Turf // Del Mar /// 2024 //// Photo by Casey Phillips, Eclipse Sportswire/Breeders’ Cup

昨年11月、両馬はG1・BCフィリー&メアターフで対戦。当時はカナダの至宝モイラが勝ち、カリフォルニアでG1を3勝しているアニセットは9着に敗れた。その後、両馬は売却され、モイラは430万米ドル、アニセットは180万米ドルの落札価格で、世界的な巨額投資で知られるユーロンが買収。現在はクリス・ウォーラー厩舎で現役を続けている。

モイラは前走、ムーニーバレー競馬場で僅差の2着と善戦したが、イギリスでキャリアを始めたアニセットは豪州での2戦で目立った成績を残せていない。このレースは、両馬が春の大舞台へ歩を進めるのか、それとも一線を退いてしてユーロンの繁殖牝馬一覧に加わるのかを占う、重要な一戦となりそうだ。

1939年9月1日、ドイツによるポーランド侵攻を受け、英国とフランスがドイツに宣戦布告。その “些細な余波” として、同年の英国シーズン最後のクラシック、セントレジャーは中止となった。

不運なことに、その年は二冠(2000ギニー、ダービー)に加えて夏のエクリプスSも制した三冠候補のブルーピーターが存在したが、惨禍が進む中、9月16日にローズベリー卿のこの牡馬が種牡馬入りすると発表された。

1978年の同じく9月16日は、ベルモントパーク競馬場のマルボロカップで稀有な対決が実現。北米三冠馬2頭が史上初めて同じレースで激突した。4歳の1977年三冠馬シアトルスルーが、1歳若い1978年三冠馬アファームドに3馬身差で勝利した。

1940年9月21日、ブリティッシュコロンビア州ヴィクトリアのウィローズパークでは世界初が記録された。カナダのこの競馬場で、史上初の“3頭同着”の写真判定が生まれたのだ。

カムニャックはG1・オークスでのクラシック制覇以来の実戦復帰で、1馬身半差の快勝だった。同じ週末には、夏の休養明けのクラシックホース2頭も復帰戦を勝利。皐月賞馬のミュージアムマイルがG2・セントライト記念を、日本ダービー馬のクロワデュノールがG3・プランスドランジュ賞を制している。

キアロン・マー調教師は、今週末のG1・アンダーウッドSで、ミドルアース、スモーキンローマンズ、ザルドージを擁して勝利を狙う。今春、アダム・ペンギリー記者がニューサウスウェールズ州のサザンハイランドにある最新鋭トレーニング拠点に潜入した。

アレクシ・バデル騎手の香港での騎手生活はいつも波瀾万丈だった。しかし、この夏は日本での短期免許を経てリフレッシュし、今季は開幕から好スタートを切っている。

上保周平記者が高知競馬の田中守調教師にインタビュー。高知競馬場が誇る “三冠馬” ユメノホノオは今年4月、慣れ親しんだ地元を飛び出し、韓国・ソウルへの海外遠征に挑戦した。その舞台裏に迫る。

香港騎手の顔ぶれは11月に向けて、より華やかになる。ジェームズ・マクドナルド、マキシム・ギュイヨン、ホリー・ドイルの4騎手が短期免許で来港予定。

香港で4度のリーディングジョッキー、ジョアン・モレイラ騎手はキャスパー・ファウンズ厩舎の所属騎手として短期免許の申請を検討。ドイル騎手は英キャタリック競馬場でのレース合間に、なぜ日本ではなく香港を選んだのかを語った。

フォーエバーヤングのオーナー・藤田晋氏に、またしても期待のダート有望株が現れたかもしれない。ウェイニースーが先週末、阪神の新馬戦で鮮烈なデビュー勝ちを収めた。

中内田充正厩舎のウェイニースーは手応え良く進み、川田将雅騎手は直線入り口で手綱を抑えなければならないほど余裕。昨年、キーンランド・セプテンバーセールにて100万米ドルで落札されたイントゥミスチーフ産駒の同馬は、悠々と7馬身差の楽勝でデビュー戦を飾った。


単勝は1.7倍。デビュー戦で圧倒的な走りを見せたウェイニースーへの高い評価は、陣営が今年のキーンランド・セプテンバーセールでその半弟となるガンランナー産駒を95万米ドルで落札した事実にも表れている。

ウェイニースーは、以前、この記事の “世界の注目馬リスト” で取り上げたマグナヴィクトルに続く、中内田厩舎の注目株だ。厩舎の2歳世代は次々と結果を残しており、キーンランドセール出身のマテンロウダビンチも数週間前に楽勝した。

🇯🇵 スプリンターズステークス
9月28日
G1・スプリンターズステークス(IHFA世界ランキング89位タイ)

サトノレーヴはジョアン・モレイラ騎手とともに春秋スプリントG1制覇を狙う。モレイラは2週間の短期免許で来日し、3連休の週末にG3・チャレンジカップを含む6勝でスタートダッシュ。

サトノレーヴは6月のロイヤルアスコット、4月の香港でモレイラとのコンビで2着だったが、年初のG1・高松宮記念を制しており、2018年のファインニードル以来の同年両制覇を目指す。

相手は香港馬のラッキースワイネスに加え、G2・セントウルSの上位3頭カンチェンジュンガ、ママコチャ、トウシンマカオが挙げられる。

🇩🇪 オイロパ賞
9月28日
G1・オイロパ賞(IHFA世界ランキング75位タイ)

このレースの3連覇は1960年代のソ連の名馬アニリン(1965〜1967)まで遡る。ゴドルフィンの強豪で世界を旅するレベルスロマンスがその偉業に並ぼうとするが、直近のG1・バーデン大賞を制したゴリアットが立ちはだかる可能性がある。

🇫🇷 凱旋門賞デー
10月5日
G1・凱旋門賞(IHFA世界ランキング5位タイ)、G1・フォレ賞(IHFA世界ランキング98位タイ)

日本は初制覇を目指す立場だが、クロワデュノール、ビザンチンドリーム、アロヒアリイの前哨戦勝利で勢いを得ている。そして、今年は欧州に抜けた存在がいない “混戦” の年でもある。

牝馬の近年の好成績もあり、昨年2着のアヴァンチュールは前走G1・ヴェルメイユ賞で勝利して好調キープ。なお、この日は凱旋門賞だけでなく、7ハロンのフォレ賞を含む計6鞍のG1が行われる。

🇦🇺 マイトアンドパワーステークス
10月11日
G1・マイトアンドパワーS

コーフィールド競馬場のスプリング・カーニバル初日のG1・マイトアンドパワーSはG1・コックスプレートへの重要なステップレース。

軽度の疝痛でマカイビーディーヴァSを回避したユーロンの4歳牝馬、トレジャーザモーメントが出走する可能性がある。また、3歳のG1・コーフィールドギニー、マイル戦のG1・トゥーラックHも同日に実施される。

🇬🇧 デューハーストステークス
10月11日
G1・デューハーストS

先週末のカラ競馬場では、G1・ヴィンセントオブライエンナショナルSで、無敗の英国馬・ザヴァテリがグスタードを頭差で下して連勝をキープ。2頭の因縁は、7ハロンの英2歳頂上決戦、G1・デューハーストSで第二ラウンドに発展する可能性がある。開催当日はG3が3鞍、1839年創設の名物レース・チェザレウィッチHも組まれている。

Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

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