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日曜日に行われたG1・仏1000ギニー(1600m)は、物議を醸す結末となった。先に入線したシーズパーフェクトが直線で進路を大きく外に取り、ザリガナに不利を与えたとして、審議の末に着順が入れ替わった。

チャーリー・フェローズ厩舎のシーズパーフェクトは、英語文法的にはアポストロフィのない馬名が文法にうるさい一部の人の間で話題を呼んでいたが、この日はそのレース内容が別の意味で注目を集めることとなった。

直線では外に大きく逸走し、エイダン・オブライエン厩舎のイグザクトリーを外へ押し出す形となり、さらに1.8倍の1番人気を背負っていたザリガナにも影響を及ぼした。ザリガナに騎乗していたミカエル・バルザローナ騎手は鞭を落とすアクシデントがありながらも、最後はわずかの差まで詰め寄っていた。

裁決委員は、この不利がなければザリガナが勝っていたと判断し、シーズパーフェクトの降着とザリガナの繰り上がりを決定した。この裁定は『ルールに則った正当な判断』とされた。

一方で、バルザローナ騎手がオープンパーム(手鞭)での計12回の使用が、鞭使用ルール違反になる可能性も指摘されている。

シーズパーフェクト陣営、バッシャーワッツレーシング代表のバッシャー・ワッツ氏やオーナーたちが控訴に動く可能性も取り沙汰されているが、鞭の使用は今回の降着審議とは別件として扱われ、裁定には影響を与えなかった。

ZARIGANA / G1 Poule d’Essai des Pouliches // Longchamp /// 2025 //// Video by World Pool & Equidia

今回の裁定は、フェローズ調教師とキーレン・シューマーク騎手にとって受け入れがたいものだったかもしれない。特にシューマーク騎手にとっては、ゴスデン厩舎の専属騎手から外されるという厳しい週の締めくくりとなった。しかし、2018年に改正されたフランスの競馬規則に照らせば、今回の裁定は正当なものだった。

それ以前のフランスでは『カテゴリー2』と呼ばれる基準が採用されていた。このルールでは、進路妨害によって着順にわずかでも影響があったと判断されれば、被害を与えた馬は妨害された馬の下に必ず降着となる。現在では主に北米で使われている方式である。

2018年、フランスはこの制度を改め、『カテゴリー1』すなわち蓋然性に基づき被害馬が先着していたと合理的に認められる場合にのみ着順変更を行う、国際標準の方式へ移行した。日本も同様のルールを採用している。

今回、フランスの裁決委員はこの『カテゴリー1』のルールを正しく適用し、適切な結論に至った。

イギリスのファンを中心に「地元びいき」とする声も上がったが、理解はできるがそれは的外れだった。そしてこの騒動は、フランス側の問題というよりもむしろイギリスの裁決基準に対する疑問を浮き彫りにすることとなった。ちょうど、英国内でWorld Pool発売対象のビッグレースが続く繁忙期を前にしての出来事でもある。

実際、イギリスでは他国に比べて進路妨害に寛容であるという指摘が長年続いてきた。

たとえば2013年のG1・ファルマスステークスでは、イルーシヴケイトがニューマーケット競馬場ジュライコースの直線で、スタンド側のラチ沿いから反対のラチ側まで大きく斜行してゴールイン。それでも『他馬と接触はなかった』として着順は変更されなかった。

だが、実際にはその斜行がスカイランタンの進路を明らかに妨げていたのは疑いようがなく、先着の可能性を奪ったことはほとんど疑いの余地はない。

過去に一度だけ、英国の裁決陣が『正しい裁定』を下したことがある。2015年のG1・セントレジャーでシンプルヴァースが接戦を制したが、荒れたレース内容を理由に着順を取り消されたケースだ。

しかし結局、英競馬統括機構(BHA)の委員会は、上訴でこの裁定を覆し、シンプルヴァースの勝利が復活することとなった。

とはいえ、フランスの裁決陣も過去には奇妙な決定を下してきたことは事実だ。代表的なのがダーレミが降着となったヴェルメイユ賞で、当時は『カテゴリー2』の基準が適用されていたが、現在の『カテゴリー1』ルールであれば降着にはならなかっただろう。

国際競馬においてWorld Poolの全世界発売が広く定着しつつある今、各国の裁決基準も足並みをそろえるべき時期に来ている。香港ジョッキークラブも先週、世界的に見ても緩やかだった鞭使用規則の見直しに着手したが、まさにその問題意識の現れだ。

香港では競馬とサッカーが賭けの対象となっているが、仮にAリーグ(オーストラリアのプロサッカーリーグ)のオフサイドルールが他国と異なっていたとしたら、香港のファンは安心してそれに賭けられるだろうか?決勝点が取り消されたら、怒りの声が上がるのは必至だろう。

場所がシャティンであれ、サンクルー、ロンシャン、リングフィールドのどの競馬場であれ、進路妨害があったなら勝ち馬を降着とするのが当然のルールであるべきだ。今回の件でフランスの裁決陣は、その正しさを証明してみせた。

Idol Horse reporter Andrew Hawkins

Hawk Eye View、Idol Horseの国際担当記者、アンドリュー・ホーキンスが世界の競馬を紹介する週刊コラム。Hawk Eye Viewは毎週金曜日、香港のザ・スタンダード紙で連載中。

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