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土曜夜のリヤド。フォーエバーヤングは、G1・サウジカップを力強く制し、史上初の連覇を達成した。だが、その蹄跡はキングアブドゥルアジーズ競馬場の赤土のダートと白い柵の内側にとどまらない。デルマーや大井、船橋といった舞台を超えて、伝説は語り継がれてゆくはずだ。

日本のダート界を代表し、今や世界でもトップクラスにいるフォーエバーヤングが、拡大するゲームの世界でも“キャラクター”としてその名を残す日が近い。

巨額の投資で知られる馬主、藤田晋氏の関連企業であるCygamesが開発し、世界展開を進める『ウマ娘プリティーダービー』の世界に、フォーエバーヤングがまもなく登場する見通しだ。

「フォーエバーヤングは、近いうちにウマ娘に登場します。詳しいことはまだ言えませんが、フォーエバーヤングがウマ娘に貢献できるのは、私個人としても本当に大きなことです」

オーナーの藤田晋氏は、満員の記者会見で応対した直後、深夜便での帰国に間に合わせるべく慌ただしく移動する合間に、Idol Horseにこう語った。

ウマ娘の熱心なファンの間では、フォーエバーヤングが2月24日の誕生日に合わせてゲームへ実装されるという見方が強い。同日は、ウマ娘のゲームがリリースされた日からちょうど5年にあたる。実現すれば、オグリキャップやアーモンドアイといった名馬たちと並び、作品を代表するウマ娘の一人となるだろう。

昨年11月、フォーエバーヤングがアメリカのG1・ブリーダーズカップクラシックを制した直後、ウマ娘公式SNSは一枚の画像を投稿。そこにあったのは、ウマ娘のシルエットと“2026.02.24”という意味深な数字だけだった。

ナイソスのバファート師も“脱帽”

賞金1000万ドル、勝ち時計の1分51秒03、そして1馬身差という着差。フォーエバーヤングが1800mの大一番で手にした賞金と勝ち時計、そして米国から遠征したナイソスを2着に退けた着差だ。

「彼は生まれた年が悪かっただけだ」とナイソスのボブ・バファート調教師は言う。

「ナイソスはよく走ったが、フォーエバーヤングがいた。負けて悔しいのは当然だが、素晴らしい馬に敗れたのだから仕方ない。フォーエバーヤングは本当に素晴らしい馬です」

Forever Young and Ryusei Sakai winning the 2026 Saudi Cup in Riyadh
FOREVER YOUNG, RYUSEI SAKAI / G1 Saudi Cup // King Abdulaziz Racecourse /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada
Forever Young owner Susumu Fujita, trainer Yoshito Yahagi and jockey Ryusei Sakai after winning the 2026 Saudi Cup
SUSUMU FUJITA (L), YOSHITO YAHAGI, RYUSEI SAKAI / G1 Saudi Cup // King Abdulaziz Racecourse /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

バファート調教師がその場を去ってまもなく、フォーエバーヤングの鞍上・坂井瑠星騎手も競馬場を後にした。黒いスーツ姿で暗い駐車場へ歩きながら、腕をまっすぐ高く伸ばして手を振った。

その所作は、勝利の余韻の中で声援に応える凱旋の主役のようでもあり、数人の女性ファンの歓声と見送りの声が夜に響いた。

坂井は5番ゲートから、最内ラチ沿いで先行馬の直後という位置を選んだ。フォーエバーヤングは砂を被りながらも、道中は大きなロスなく運ぶ。直線入口で、アデル・アルファライディ騎手のバニシングが内ラチから外へ流れたことで前が開き、閉じ込められる不安は消えた。あとはそのまま押し切った。

外からはG1・BCダートマイル覇者のナイソスが迫ったが、この馬には距離はわずかに長かったように見える。相手も強すぎた。

「囲まれないポジションをと思ってたんですけど、やっぱりみんな倒しに来たので、ああいうポジションになりました。進路さえ開けば脚はあったので、馬を信じていました」

フォーエバーヤングの坂井瑠星騎手はサウジカップをこのように振り返る。

「一番ライバルと思っていたナイソスも素晴らしい走りをしていましたし、彼がいたことによって素晴らしいレースになったんじゃないかなと思います」

ナイソスのバファート師も勝者を称えるしかなかった。「勝ち馬のジョッキーは自信たっぷりで、あそこから馬群を割ってきた。キングコング(ナイソス)が負ける番だった」

(訳者注:バファート師はレース前にナイソスとフォーエバーヤングの対戦を『キングコング対ゴジラ』と例えていた)

「ナイソスが本当の意味で試されるのは初めてで、その相手がフォーエバーヤングだった。今回が初の海外遠征で、それでもあの走りです。こういうレベルの馬をここへ連れてくるのは本当に難しい。私が連れてきた中でも最高の馬です」

勝利した矢作芳人調教師は、レース前の会見で仕上がり具合を「9割以上」と宣言。照明の下に姿を現したフォーエバーヤングは、たくましく、毛ヅヤも良く、落ち着いて集中していた。勝利後も矢作師はこう言い切った。

「やはり100%じゃないなっていうものを感じていました」

オーナーの藤田晋氏は、次走はG1・ドバイワールドカップが基本線だと明言。昨年3着に敗れた悔しさを晴らすのが目標だ。ただ、その先の予定は未定。さらに、この5歳馬が今年末で種牡馬入りするとは限らないとも明かし、新たな目標として「サウジカップ3勝目」を挙げた。

以前には、フォーエバーヤングが芝を試す可能性や、12月のG1・有馬記念でのラストラン構想も語られていた。だが、現時点では現実味は薄れているように映る。

「来月ドバイのレースまでは決まってるんですけど、その後は未定です。これから考えるんですけど、もう一つの選択肢として、2月のサウジアラビアで引退というのが今日生まれました」

藤田晋氏はそう語り、延長は「2か月分」だとも付け加えた。

また、今年はJRAのレースを勝つことも一つの目標だという。ただ、有馬記念が候補から外れる場合、どのレースを狙うのかは明言されなかった。欧州遠征の可能性も、以前と比べると後退した印象だ。

「芝での走りも見てみたい」矢作師は言う。「ヨーロッパの芝は難しいかもしれませんけど、私はどの馬も馬の可能性を否定したくないので、芝でのフォーエバーヤングの走りというのを見てみたいという気持ちは強いです」

Forever Young's connections after winning a second G1 Saudi Cup in Riyadh
FOREVER YOUNG’S CONNECTIONS / G1 Saudi Cup // King Abdulaziz Racecourse /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

明暗分かれたチームジャパン

この日、リヤドから離れた場所でも、日本競馬界に明るいニュースがあった。

カタールで行われたG2・アミールトロフィーを、池江泰寿厩舎のディープモンスター(父ディープインパクト)がトム・マーカンド騎手の手綱で制したのだ。同レースにおける日本勢の初勝利だった。

「父がディープインパクトを育てて、ディープインパクト産駒で海外の大きなレースを勝つのは家族の夢でした。私の夢でもあって、夢が叶いました」と池江師は語り、現地入りしたドーハで歓喜のコメントを残した。

「トム(マーカンド騎手)は完璧に乗ってくれました。思った通りの乗り方で、彼の手腕を称えたいです」

内ラチ沿いで好位の後ろにつけての勝利は、英国出身のマーカンドにとっても意味があった。冬競馬の期間、3年連続で日本の短期免許を取得。努力を重ね、人脈を築き、勝利と評価を積み上げてきた。その積み重ねが報われた形でもある。

ただし、サウジアラビアでは、他の日本勢には厳しい結果が続いた。日本馬はリヤドの高額賞金カードでなかなか上位争いに加われなかった。それでも最後のレースでフォーエバーヤングが勝ち切り、全体の空気を一変させた。

サトノボヤージュはG3・サウジダービーで戸崎圭太騎手を背に直線入口まで見せ場を作ったが、マイルの距離は長く、地元の新星・アルハラムに屈して3着。G2・リヤドダートスプリントは米国馬のイマジネーション、G2・1351ターフスプリントも米国馬のリーフランナーが勝ち、日本勢は上位に迫れなかった。

フラヴィアン・プラ騎手は、パドックでも注目を集めていたイマジネーションを勝利へ導き、さらにリーフランナーで勝ったイラッド・オルティスJr.騎手にも小さな助けをしていた。

注意深い人なら、オルティスが着るジョッキーパンツの背面、ウエスト部分に小さく黒字で『F. Prat』と書かれていたのを見つけたかもしれない。引き上げてくる彼の姿に、その文字があった。

「魔法のジョッキーパンツだよ!」とオルティスは笑いながら、Idol Horseに経緯を説明する。

「自分のジョッキーパンツにはスポンサー名が描かれているんだけど、ここでは履けないって連絡が着たんです。ただ、その時点ではもう飛行機の中で」

「フラヴィアン(プラ騎手)とは仲が良くて、彼はいつも大きなバッグにいろいろ持ってる。先週タンパベイダウンズで会った時も大きなバッグだった。だから『普通のジョッキーパンツ持ってる?』って聞いたら『あるよ』って。『これ使うかもしれない』って言ったら、これを貸してくれたんだ」

「それで彼は『勝ったら5%くれ』って言うんだよ!」とオルティスはさらに笑った。

Irad Ortiz after winning the 1351 Turf Sprint in Riyadh
IRAD ORTIZ / G2 1351 Turf Sprint // King Abdulaziz Racecourse /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada
Oisin Murphy and Royal Champion winning the G1 Neom Turf Cup in Riyadh
ROYAL CHAMPION, OISIN MURPHY / G1 Neom Turf Cup // King Abdulaziz Racecourse /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

G2・レッドシーターフハンデキャップも、日本勢にとっては厳しい結果だった。アイルランドのサンズアンドラバーズがディラン・ブラウン・マクモナグル騎手の騎乗で勝利し、欧州勢が上位を独占した。

ベテラン勢が奮闘、8歳馬が相次ぐ勝利

そして2つのG1のうち、先に行われたネオムターフカップでは、矢作厩舎のシンエンペラーは勝利した昨年のような迫力を欠いた。素質馬のアロヒアリイも、ゲート内で落ち着きを欠き、序盤から流れに乗れないまま終わった。

代わって圧巻だったのが英国馬、カール・バーク厩舎のロイヤルチャンピオンだ。オイシン・マーフィー騎手を背に鮮やかに抜け出し、鮮やかな勝利を披露した。カタールのディープモンスターと同じく、8歳馬が充実期の走りを見せた。

「少し繊細なところがある馬なんです」とバーク師はIdol Horseに語った。

「厩舎では少し気が強くなることもあるし、競馬では気持ちが乗り切らないこともある。神経質なタイプではないですが、スタート前に震えているのを見たことがあります。普段は勝ち気な馬ですが、扱いやすいタイプです」

「良くなった要因があるとすれば、こちらの調教環境と、厩舎の女性スタッフが注いでくれる気配りだと思います」

ロイヤルチャンピオンは、豪州移籍がうまくいかず立て直しが必要な状態で、2024年末にバーク師が運営するノースヨークシャーの厩舎へ移ってきた。元々はニューマーケットでロジャー・ヴァリアン厩舎に所属していた馬だった。

バーク厩舎への移籍を後押ししたのは、オーナーの故オバイド殿下で、ミドルハムの高原地帯の外れへ移すのが最適だと考えていた。

「この舞台でやれるのは最高です。賞金も大きいし、中東で競馬を盛り上げようという力の入れ方もすごい」とバーク師は勝利の喜びを語る。「トップを目指すなら、ここで戦わないといけません」

フォーエバーヤングはサウジカップ連覇に加え、BCクラシック制覇など数々の勝利を積み上げ、いまのダート界で頂点に立つ存在となった。昨夏に英語版配信が始まって以降、Cygamesが『ウマ娘』の海外展開を広げようとしている。

ダート王者の世界的な知名度は、藤田晋氏にとってこれ以上ない追い風になっている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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