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2025年 スプリンターズステークス:G1プレビュー

競馬場:中山競馬場

距離: 1200m 

賞金総額: ¥369,900,000 (US$2,498,421)

スプリンターズステークスは、JRAスプリント路線のG1レース2戦のうち、秋に行われる一戦である。海外からの参戦も多く、2005年から2010年にかけては、オーストラリアと香港の馬が勝利しており、サイレントウィットネス、テイクオーバーターゲット、ウルトラファンタジーがその栄冠を手にした。しかし、それ以降は日本勢が連勝を続けている。

サトノレーヴ、ロードカナロアの偉業に挑む

3月のG1・高松宮記念を制したジョアン・モレイラ騎手騎乗のサトノレーヴが、史上6頭目となる同年でのJRAスプリントG1春秋制覇に挑む。これまでにこの快挙を達成したのは、フラワーパーク、トロットスター、ローレルゲレイロ、ロードカナロア、ファインニードルの5頭のみだ。

昨年の同レースでは単勝3.0倍の1番人気に推されながら7着に敗れたが、そこから大きく飛躍した。高松宮記念前後には、世界最高峰のスプリンター、香港のカーインライジングと接戦を演じ、ロイヤルアスコット開催のG1・クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスでも、世界屈指の強豪ラザットに次ぐ2着と健闘した。

これらの実績から、サトノレーヴは過去20年間でロードカナロアに最も近い存在といえる。ここでの勝利は、彼自身を歴史に名を刻む日本スプリント界の頂点へと押し上げるだろう。

SATONO REVE / G1 Takamatsunomiya Kinen // Chukyo /// 2025 //// Video by Hong Kong Jockey Club

ジョアン・モレイラの挑戦は続く

モレイラ騎手は、キャスパー・ファウンズ調教師が香港ジョッキークラブに申請した厩舎所属騎手としての短期契約が却下され、今季香港での継続参戦は叶わなかった。しかし、12月の香港国際競走での騎乗はまだ可能性があり、その前にオーストラリア遠征も控えている。11月1日にはランドウィック競馬場で行われるラッセルボールディングステークスで、キャロットクラブ所有馬シュトラウスに騎乗予定だ。

まずはJRAでの2週間の短期免許期間を、このスプリンターズステークスでのG1制覇で締めくくりたいところだ。今年モレイラ騎手は、母国ブラジルでG1を3勝、日本では高松宮記念、桜花賞、皐月賞を勝利している。

来年度のJRA短期免許取得要件となる年間G1・2勝はすでに満たしており、その点では心配ない。しかし、このレースに勝てば、短期免許の開始時期を、より遅いタイミングに設定できる可能性がある。モレイラ騎手にとっても重要な一戦だ。

Joao Moreira celebrating his Oka Sho win
JOAO MOREIRA / G1 Oka Sho // Hanshin /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada,

カーインライジング関連馬の激突

カーインライジングがジ・エベレストへ向かう中、4月のG1・チェアマンズスプリントプライズで彼の後塵を拝した有力馬たちがここに集結する。2着のサトノレーヴ、5着のルガル、6着のラッキースワイネス、さらに香港スプリントではルガルを上回りながらサトノレーヴには遅れを取った9着のトウシンマカオも出走予定だ。

この結果次第では、シドニーに向かうカーインライジングの評価はさらに高まるだろう。また、ラッキースワイネスが勝利、もしくは好走すれば、香港スプリント界全体のレベルを世界に示す格好の材料となる。

ラッキースワイネスは、カーインライジングが台頭する前に香港チャンピオンスプリンターの座にいた実力馬。現在はマンフレッド・マン厩舎に所属し、デレク・リョン騎手が手綱を取る。15年前、ウルトラファンタジーが成し遂げた香港勢によるスプリンターズステークス制覇の再現を目指す。

KA YING RISING (blue, red and yellow), LUCKY SWEYNESSE (yellow and blue) / HKSAR Chief Executive’s Cup // Sha Tin /// 2025 //// Photo by NZTM

秋に強いルメール騎手

JRAで7度のリーディングジョッキーに輝いたクリストフ・ルメール騎手だが、今年は春のG1・ヴィクトリアマイルでアスコリピチェーノに騎乗して勝利したのみで、秋シーズンを迎えている。

しかし、過去10年で6度、秋に春を上回るG1勝利を挙げてきた秋男でもある。2020年にはヴィクトリアマイル制覇後にスプリンターズステークスを制し、その年は自己最多となるG1・8勝を記録。そのうち5勝が秋競馬でのものだった。

今年は6歳牝馬ナムラクレアとコンビを組む。ナムラクレアはこのレースで過去2年連続好走を含むG1で6度馬券圏内に入っている。ルメール騎手にとっては秋のG1戦線の初陣であり、ナムラクレアにとっては集大成の一戦となる可能性もある。

NAMURA CLAIR / G3 Keeneland Cup // Sapporo /// 2023 //// Photo by @gomashiophoto (X)

中山1200mは牝馬の庭

ナムラクレアを含む6頭の牝馬が参戦予定で、中山1200mは牝馬が好成績を残してきた舞台だ。ナムラクレアは長谷川浩大厩舎所属で、過去3年のスプリンターズステークスで3着、3着、5着と惜しいレースが続いている。

近年では2023年にソダシの妹ママコチャが優勝。過去5年で2回、10年で3回、14年で4回と、牝馬が勝利を収めている。

今回はナムラクレア以外に、4歳牝馬のカピリナ、ジューンブレア、ピューロマジックが参戦。カピリナはG3・函館スプリントステークスを勝利し、そのレースでジューンブレアは2着。さらにジューンブレアは前走G3・CBC賞でも2着と安定感を示している。一方、ピューロマジックは前走G3・アイビスサマーダッシュを制し、勢いに乗っている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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