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日曜日の朝、阪神競馬場では桜が咲き誇っていた。時を同じくして、競馬場からそう遠くない栗東トレーニングセンターでは、クロワデュノールの春の復帰戦に向けた準備が始まっていた。

斉藤崇史調教師は、期待の集まる新シーズンの完璧なスタートを切るため、型破りな“最終調整”を決行した。

斉藤師が決断した最後の一押しとは、昨年の日本ダービー馬を、阪神のG1・大阪杯で今年初戦を迎える数時間前に栗東の坂路コースに送り出し、キャンターを行わせることだった。同馬はリラックスした様子で、73秒のタイムで坂路を駆け上がった。

斉藤師も同馬でのこのような調整は初めてのことだった。調教師と馬主のサンデーレーシングの目標はただ一つ、年度代表馬争いに向けて、この馬が日本最強の座に君臨すること。その願いに向け、新たな試みが功を奏した。

クロワデュノールは関係者とファンの期待に応えて大阪杯を制し、今年のチャンピオン候補としての名声と地位を高めた。

このような期待はプレッシャーをもたらす。北村友一騎手も、「(プレッシャーを)感じていないわけではもちろんない」とレース後に語った。しかし、自信もあった。

北村は「今週火曜日に乗せていただいて馬の雰囲気をつかめたので、ダービーの時のようにしっかりと自信を持ってこの馬の力を発揮できれば結果はついてくると思ってレースに挑みました」と続けた。

斉藤師もまた期待の重みを感じていたが、冬の休養を終え、栗東の厩舎に戻ってきたクロワデュノールの馬体重が通常より重くても、指揮官は動じなかった。そして、馬体重が理想より約10kg重いことを示している中で、4歳馬にレース当日の朝に乗り込むという大胆な決断を下した。

斉藤師はクロワデュノールのコンディションについて問われると、「こんなに『重たいな』と思って使うのは初めてだった」と明かした。

G1・ホープフルステークスを制し、3戦無敗で2歳シーズンを終えて以来、クロワデュノールには常に競馬ファンの期待がつきまとってきた。

1年前の今頃、3歳初戦のG1・皐月賞を控えていた時も、その期待は高まっていた。同レースでは2着に敗れたが、G1・日本ダービーを制したことで、信頼は再び急上昇。G1・凱旋門賞の頂点という、数十年にわたる日本競馬界の悲願を叶える新たな希望となり、フランスへと渡った。

しかし、フランス遠征ではG3・プランスドランジュ賞こそ制したものの、10月の凱旋門賞、そして11月に行われたジャパンカップでは連敗を喫することとなった。

この春、クロワデュノールは栗東に帰厩後、追い切りを重ねることで馬体重を絞ってきたが、レース当日の朝になってもまだピークの状態には達していなかった。

それでもファンの期待は変わらない。北村の手綱に導かれたクロワデュノールは、大阪杯の一番人気馬としてゲートに向かった。向こう正面から中団の3頭分外を通って進出を開始すると、阪神競馬場の観客の歓声は一段と大きくなった。

大阪杯は佳境を迎えると、武豊騎手騎乗のメイショウタバルが逃げ切り態勢に入る。クロワデュノールは、万全の仕上がりではなかったものの力強く走り、追い出しの際にバランスを崩す場面もあったが、そこから粘りを見せて逃げ馬を捉え、4分の3馬身差で勝利を収めた。

しかし、勝利直後のチームから出た言葉は、手放しの喜びではなかった。これはあくまで最初の一歩であり、今シーズンの目標を達成するための勝利に過ぎないからだ。

斉藤師は「『世代の頂点』と言い続けられるために、ここは落とせないなという気持ちもありました。とりあえず勝ててホッとしています」と語った。

北村もまた、完全に祝いのムードに浸ることはなかった。右手前のまま走る癖があるこの馬が、手前を替える際にスムーズさを欠いていたと指摘した。

「直線に向いた時のバランスは、まだ良くなる余地を残しているのかなという感じで、少しフラフラしてしまいました」と北村は話した。

Croix du Nord (right) chases Meisho Tabaru to win 2026 Osaka Hai
CROIX DU NORD (R) / G1 Osaka Hai // Hanshin /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada
Croix du Nord, 2026 Osaka Hai
CROIX DU NORD / G1 Osaka Hai // Hanshin /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

それでも大阪杯での勝利は、これからの1年に向けて良い兆しとなった。サンデーレーシングと斉藤師が今後どの道を選ぼうとも、だ。

斉藤師は、クロワデュノールの次走に6月のG1・宝塚記念を含む複数の選択肢を示唆したが、明言は避け、フランスへの再遠征についても言及しなかった。

「いろんな選択肢があると思うので、馬の状態を確認して、来週中にはオーナーサイドと話して決めたいと思います」

一方で、北村友一騎手はクロワデュノールの目指すべき将来像を口にした。

「底力はナンバーワンだと思っています。 今年、競馬界で主役になるような馬になってほしいなという思いがあります」

成長しつつあるクロワデュノールは、先週末の経験を経てさらに良くなる。斉藤師はそう信じている。

「やっぱり能力はすごく高いですし、今日も装鞍所からパドック、返し馬へ行っても一つも入れ込むことなく大人しくて、本当に優等生だなと思います」と斉藤師は語る。

また、昨秋のフランス遠征後に見られた、左側のハミを強く引っ張る癖も解消されたようで、「すごく良い感じで戻ってきました」と斉藤師は改善を明かした。

父・キタサンブラックと同様に大阪杯を制し、先輩ダービー馬のダノンデサイルや、意外性のある逃げ馬として知られる宝塚記念覇者のメイショウタバルを退けたことで、期待は再び高まっている。斉藤師もその期待に応える準備ができている。

「状態だけ整えて出してあげれば、レースに行ったら結果は出ると思います」

「ファンの皆さんもそうですけど、僕も無敗で行きたいんで、その気持ちは一緒かなと思います」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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上保周平、Idol Horseのジャーナリスト。日本、海外問わず競馬に情熱を注いでいる。これまでにシンガポール、香港、そして日本の競馬場を訪れた経験を持っている。

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