セラフィックコールとは2戦2勝のダミアン・レーン騎手は、この馬が特別な才能を持っていることを既に知っている。

唯一、出遅れ癖を心配していたが、これは改善の兆しを見せているという。

「この馬の2戦目でコンビを組んで勝ちましたが、トップレベルで走る才能があるということはこの時分かりました」

「ただ、この馬は絶望的に下手でした。最初の頃は、もはやゲートを歩いて出ていたくらいでした。ここ数戦はスタートに成功しており、ポジションを取りに行けています。レベルの高いレースでは、良い位置取りは必須になります。スタートが唯一の難点ですが、それ以外は本当に良い馬です」

このように語るレーンは、水曜日の夜に大井競馬場で行われるJpn1・帝王賞でセラフィックコールとコンビを組む。レーンにとっては、自身の見立てが正しかったと、自分の手で証明するチャンスだ。

セラフィックコールのポテンシャル

2023年2月に阪神で鮮烈なデビューを飾った寺島良厩舎のセラフィックコールは、2戦目と3戦目でレーンが騎乗した。そして、2戦とも勝ち、評判を高める一因となった。

「阪神での新馬戦も良かったですが、京都での2戦目は後方から一気の捲りで交わし切り、ライバルを置き去りにしました」

「本当に優れた馬でなければ、あのようなロングスパートはできません。まだ完成していないにも関わらず、強い競馬をしてくれました。東京で勝ったときも同様でした」

「それ以来彼のことは追い続けていましたが、いつかこのクラスで戦える馬になるだろうなとは思っていました。まだG1では結果を残していないですが、一歩一歩着実に歩んでいます」

Seraphic Call wins Listed Diolite Kinen at Funabashi
SERAPHIC CALL, BAUYRZHAN MURZABAYEV / L Diolite Kinen // Funabashi /// 2024 //// Photo by @at_that_instant

帝王賞では、この馬のポテンシャルだけでは勝てないとレーンは見ている。好スタートと好位置が必須条件と見ており、特にスピードが求められる大井の2000mでは、それが勝利の鍵となるだろう。

「このコースに限りませんが、トップクラスのレースは出遅れて2、 3馬身のハンデを背負うと、勝つには並外れた能力が必要になります。もちろん、キックバックに怯まないことも重要ですが。しかし、セラフィックコールのゲート難は改善を見せているので、今回は更なる良い走りを期待したいと思います」

ダートコースのコツ

現在30歳のレーンは、ベテラン騎手にも負けない国際経験と海外での勝ち鞍を持っており、異なる文化への対応力を示してきた。特に、砂やダートはオーストラリアでは珍しく、対応力は目を見張るものがある。彼の故郷である西オーストラリア州にダートコースがあるが、これまでの経験はキャリア初期にそこで乗った程度のものであった。

「キャリアの初期、200鞍くらいレースに乗っていた頃の話でしょうか。ダートでの騎乗経験は数えるくらいしかありません。確かに質は違いますし、慣れが必要ですね」

2019年の帝王賞をオメガパフュームで制したレーンは、ダートでの競馬について以下のように説明する。

「まず、馬がキックバックに対応できるか見極める必要があります。多くの馬は苦手ですし、キックバックを食らって位置を下げてしまうと、ますます厳しくなります。そうなる馬もいますし、気にしない馬もいます。先行が有利なところとか、芝とは違う要素がいくつかあります」

プレミアシップの夢

レーンは木曜日にはオーストラリアに戻る。シーズンが残り1ヶ月の現在、メルボルン地区のリーディングでは2位のブレイク・シン騎手に14勝差をつけて首位を走っている。

Jockey Damian Lane
DAMIAN LANE / Sandown Lakeside // 2024 /// Photo by Vince Caligiuri

地区リーディングで3位以内に入ることで、レーンは翌年2年間、JRAの短期免許申請条件をクリアできる。実質的に、2026年7月31日まで有効だ。

プレミアシップ(リーディング)で優勝すれば、レーンにとっては一つの夢を実現したことになる。西オーストラリアの同郷、ダミアン・オリヴァーを含む、数々の偉大な騎手の仲間入りを果たす。

レーンは今年日本のクラシックシーズンで来日せず国内に専念していたが、そのことが地元のプレミアシップ優勝のチャンスに繋がったと語る。

「これまで、2位は2回ありました。メルボルンのプレミアシップ優勝という肩書きは、自分の履歴書になんとしても載せたいです」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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