2025 NHKマイルカップ: G1プレビュー
競馬場: 東京競馬場
距離: 1600m
総賞金: 2億8310万0000円 (197万3159米ドル)
NHKマイルカップ(G1・1600m)は、日本の3歳マイル王決定戦であり、皐月賞(2000m)では距離が長いスピードタイプの馬たちにとっては最適な舞台だ。中には、その後の東京優駿(2400m)に挑戦する馬もいるが、基本的にはマイラー向きの一戦として位置づけられている。
2025年で30回目を迎える本レースの過去優勝馬には、のちの日本ダービー馬キングカメハメハ、ディープスカイ、さらには海外G1制覇を果たしたエルコンドルパサーやアドマイヤマーズといった名馬が名を連ねる。昨年はジャンタルマンタルがアスコリピチェーノを下して優勝した。
注目馬1: アドマイヤズーム
「世代最速マイラー」の証明へ
2歳時に朝日杯を圧勝し、皐月賞馬ミュージアムマイルに2馬身半差をつけたアドマイヤズーム。前哨戦のG2・ニュージーランドトロフィーでは外を回されてイミグラントソングに敗れたが、それでも今回の主役であることに疑いはない。
友道康夫調教師は、過去にクラリティスカイ(2015年)、アドマイヤマーズ(2019年)でこのレースを制しており、今年も勝てば香港マイル出走が見えてくることだろう。鞍上は川田将雅騎手。ジャンタルマンタル(2024年)、ダノンスコーピオン(2022年)で近3年中2勝を挙げており、NHKマイルとの相性も抜群だ。
注目馬2: イミグラントソング
「主役」への階段を駆け上がる一頭
辻哲英調教師にとって、平地G1初出走となるイミグラントソングは、今後のキャリアを左右する大一番。先月のニュージーランドTではアドマイヤズームを下し、重賞初勝利を挙げた。管理馬のファンダムは東京優駿の有力候補であり、この春、辻厩舎には注目が集まっている。
鞍上にはNHKマイルCを2度制しているクリストフ・ルメール騎手が初めて騎乗。勢いそのままに、初のG1タイトル獲得なるか。
注目馬3: ランスオブカオス
史上最年少G1勝利に挑む「19歳の新星」
吉村誠之介騎手が目指すのは、武豊騎手の持つJRA史上最年少G1勝利記録(19歳236日・1998年 菊花賞 スーパークリーク)の更新だ。自身2度目のG1騎乗となる今回は、昨年の朝日杯フューチュリティステークスでアドマイヤズームの3着に入ったランスオブカオスとのコンビで挑む。日曜日のレース当日時点で、吉村騎手は19歳127日。

奥村豊調教師が管理する同馬は、前走G3・チャーチルダウンズカップでアルテヴェローチェを下し、重賞初制覇。一躍、有力候補に浮上している。
注目馬4: マジックサンズ
クラシックからの逆襲 距離短縮で真価発揮なるか
過去には皐月賞からの距離短縮で好走する馬も多く、マジックサンズもその一頭となるかもしれない。今年の皐月賞ではミュージアムマイルの6着に敗れたが、中2週のローテーションで巻き返しを狙う。
これまで1800m以下の経験はないが、半姉コナコーストは2年前の桜花賞でリバティアイランドの3/4馬身差の2着。血統的にもマイル適性が期待される。
鞍上はレジェンド・武豊騎手。調教師は須貝尚介氏。両者合わせて国内外で143勝のG1勝利を誇るが、意外にもこのコンビでのG1勝ちはまだない。
注目馬5: チェルビアット
ビッグチャンスを手にする『もう一人のオーストラリア人』
2019年にノームコアがヴィクトリアマイル(G1・1600m)を制していなければ、オーストラリアのダミアン・レーン騎手が現在のように日本で広く支持される存在になることはなかったかもしれない。
今回はそのレーン騎手が堀宣行厩舎のサトノカルナバルに騎乗する一方で、メルボルンのライバルであるマイケル・ディー騎手が、日本のG1に初騎乗するチャンスを得た。
ディー騎手が手綱を取るのはチェルビアット。G1・桜花賞(1600m)ではエンブロイダリーの6着に敗れ、ここでも人気薄は確実だ。これまで6戦1勝、その勝利は小倉の未勝利戦に過ぎないが、父は名スプリンターのロードカナロアだ。
ディー騎手がこの牝馬を人気以上に走らせることができれば、今後数週間、数ヶ月、さらには数年にわたって、日本でのキャリアを切り開く大きな第一歩となるかもしれない。