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香港競馬では2025/26シーズン開幕までにトレッドミルでの運動が解禁される見込みとなっており、オーストラリア出身のデヴィッド・ヘイズ調教師を始め、多くのホースマンはこれを『ゲームチェンジャー』になる可能性があると考えている。

「素晴らしい変化です。5年間ずっと待ち侘びていました」とヘイズ調教師。「騎乗者が乗るとオーバーワークになってしまう馬や、脚元に不安がある馬にとってもトレッドミルは有効です。オーストラリアの有名な調教師はみんな使っています」

ヘイズは2005年からオーストラリアでの調教師生活に入ったが、2019年に香港に拠点を移した。その間、オーストラリアではトレッドミルが日々の調教に溶け込むほど普及しており、人手不足に悩まされる厩舎にとっても救世主となっていた。

香港では新たに、シャティン競馬場に8台のトレッドミルが設置される。古い厩舎地区に近い北東側に6台、残りの2台はオリンピックステーブルに設置され、4つの厩舎が利用する。

このトレッドミルはオーストラリアのGGエンジニアリング社が開発したもの。香港ジョッキークラブ(HKJC)の職員3名がオーストラリアを訪れ、現地での稼働状況を視察。シャティンのスタッフに活用方法を伝えるべく、ノウハウを学んだ。

HKJCの職員が見学した先には、キアロン・マー厩舎やクリス・ウォーラー厩舎といった、ニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州の大手厩舎も含まれる。

すべての調教師がトレッドミルを利用できるように整備されたあと、厩舎スタッフたちは引退した元競走馬を使って使用方法のレクチャーを受ける予定だ。

シャティンにはトレッドミル導入を『様子見』するベテラン調教師もいるかもしれないが、先述のヘイズ調教師のほかに、キアロン・マーと共同で厩舎を運営していたデヴィッド・ユースタス調教師、そしてマーク・ニューナム調教師といった新進気鋭の若手たちは、すぐに調教に使い始めることだろう。

「デヴィッド・ユースタスはトレッドミルの活用に慣れていますし、私もそうです。トレッドミルは欠かせない存在になると思いますよ」とヘイズは語る。

トレッドミルの導入が進まなかった理由に挙げられるのは、調教の透明性が損なわれることへの懸念だ。香港競馬では識別可能なゼッケンを着けてコース上で調教を行い、その走破時計が誰でも閲覧できるデータベース上で公開されるという特色がある。トレッドミルを使用した場合、走破時計が記録されなくなる。

データベースへの詳しい記載方法についてはまだ最終決定されていないが、調教の記録としては『トロット』『キャンター』『ギャロップ』と歩法別に記録される可能性はある。

ヘイズは「トレッドミルの使い方は調教師の裁量次第です」と語る。「速い調教に使う人もいるでしょうし、ゆったりと走らせるメニューで使う人もいるでしょう」

もう一人の調教師、ニューナムは高齢馬の調教にトレッドミルの活路を見出している。

「背腰の負担を減らしたい馬にはピッタリですね。フィットネスを維持しつつ、余計な負担を減らすことができます」

香港の夏場は湿度が高く、厳しい蒸し暑さが待ち受けている。リッキー・イウ調教師はそれを避けて運動できることが大きいと話す。

「コーナリングで脚元を痛める馬にとっても効果的でしょう。トレッドミルは直線と斜面で負担をかける仕組みなので、前脚と間接部への負担も減らせるはずです」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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