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2024 エリザベス女王杯: G1レビュー

競馬場: 京都競馬場
距離: 2200m
総賞金: 2億8180万0000円 (184万5993ドル)

日本には『狙い目』と呼べるG1レースは数少ないが、エリザベス女王杯、特に2024年のレースはその表現が相応しいレースだった。スタニングローズはそのチャンスを活かし、完勝と言える勝利を挙げた。

エリザベス女王杯は3歳牝馬と古馬牝馬が京都の2200m外回りに集結するレースだが、今年はスターズオンアースやリバティアイランドを筆頭に、チェルヴィニア、ステレンボッシュ、ブレイディヴェーグ、ボンドガール、アスコリピチェーノ、ライトバック、マスクトディーヴァといった有力馬が回避、または別路線を歩んでいた。

そのため、17頭の出走馬でG1馬はたったの2頭。2022年の秋華賞でナミュールやスターズオンアースを倒した高野友和厩舎のスタニングローズ、昨年のホープフルステークスでシンエンペラーを打ち負かした木村哲也厩舎のレガレイラのみだった。

スタニングローズはその秋華賞以来、6レース走って全て着外に終わっていたが、5歳を迎えて初めて臨んだ京都で復活を遂げた。

レース展開

ゲートを出て最初のコーナーに向かう際、早くもハイペースを予期させるような先行争いが繰り広げられた。コンクシェルの岩田望来騎手が先頭に立って飛ばし、ハーパーの武豊騎手もそれに続く。残り2000mから1800mの1ハロンは10.6秒という速いペースを記録し、スタミナ勝負になる気配が見え始めていた。

巧みなペースメイク技術を持つ岩田は引き続き馬群を引っ張るも、ペースを落として追走する。1800mから600mの区間は1ハロン平均12.3秒の時計で逃げ、G3勝ち馬のコンクシェルにとっては絶好の展開のようにも見えた。

しかし、残り600m地点でコンクシェルは手応えが悪くなり、外から勢いづいたスタニングローズとクリスチャン・デムーロ騎手が先頭に躍り出る。デムーロは4番手の好位置をキープして流れに乗っていた。直線に入ると後続を尻目にグングン加速し、悠々と先頭を駆け抜ける。

最終的には昨年のオークス4着馬のラヴェルに2馬身差をつける快勝、3着には上がり馬のホールネスが入るという結果に終わった。

STUNNING ROSE / G1 Queen Elizabeth II Cup // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

敗れた人気馬

レガレイラのクリストフ・ルメール騎手にとっては本当に悔やまれる結果となった。

7番枠からスタートしたレガレイラは蹴り出しがあまり良くなく、中団での追走に。人気薄での激走を見せた川田将雅騎手のラヴェルを外側に見る形での競馬となっていた。

道中、何度かポジションを下げる場面はあったものの、最終コーナーを回る時点では先頭を射程圏に捕らえていた。しかし、ラヴェルの川田が外を回って楽に加速できたのに対し、ルメールは失速するハーパーと4番人気のシンティレーションの間という狭い進路を抜けることに。

そのタイミングで、別の逃げ馬であるコンクシェルを交わすべく、武豊のハーパーとマーカンドのシンティレーションは進路を外に向ける。間に挟まれたレガレイラはいわゆるサンドイッチ状態となってしまい、勝負所で勢いを失う羽目になった。

結果的に、ルメールがハーパーの外側を抜けてきた場合、2番人気で3着に入ったホールネスの横にある4頭分のスペースを自由に使えたはずだ。苦しい展開にも関わらず5着に追い上げたレガレイラの走りは賞賛に値するだろう。

一方、ラヴェルはその勢いがフィニッシュラインまで衰えることなく、スタニングローズから2馬身差の2着に入った。

データ

坂井瑠星騎手にとっては『3着』尽しの一年になっているが、これは本人にとってはありがたくない傾向ではないのかもしれない。

2024年、世界レベルで7度のG1レース3着を手にしている。桜花賞(ライトバック)、ケンタッキーダービー(フォーエバーヤング)、オークス(ライトバック)、日本ダービー(シンエンペラー)、愛チャンピオンS(シンエンペラー)、BCクラシック(フォーエバーヤング)、そして今回のエリザベス女王杯(ホールネス)だ。

また、Jpn1の東京ダービーでもアンモシエラで3着に入っている。

スタニングローズやラヴェルの元主戦騎手でもある坂井だが、この先はジャパンカップでのシンエンペラーや、チャンピオンズカップでのレモンポップといった有力馬への騎乗を控えている。3着続きの悪い流れを断ち切ることにも、期待が集まっている。

騎手コメント

クリスチャン・デムーロ騎手(スタニングローズ・1着): 「今年、日本にはG1を勝つべく来たので、それができてとても嬉しいです。2着が多かったり、手を骨折したりと今年は色々ありましたが、勝てて良かったです」

「プランを立てていたわけではなく、ゲートを出てからの競馬でした。逃げ馬を見る位置でスムーズに走れましたし、最後は素晴らしい末脚を疲労してくれました」

Cristian Demuro
CRISTIAN DEMURO / G1 Queen Elizabeth II Cup // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

クリストフ・ルメール騎手(レガレイラ・5着): 「良いポジションを取れませんでした。クリスチャンの後ろにいたら、もっと良い競馬ができていたかもしれない。直線ではぶつかってしまい、スムーズな競馬ができなかった。不運でした。G1レベルの馬だけど、良い騎乗ができませんでした。申し訳ない」

今後は?

スタニングローズは年内で引退する可能性が高いが、繁殖入りする前にもう一回レースを使う可能性が高い。

登録があるG1・香港カップやG1・香港ヴァーズ、もしくは暮れの大一番であるG1・有馬記念が選択肢となってくるだろう。

2024 エリザベス女王杯: レースリプレイ

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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