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2025 G1・菊花賞

競馬場: 京都競馬場 

距離: 3000m

総賞金: 4億3400万0000円 (約289万4000米ドル)

菊花賞は日本の牡馬三冠の最終関門であり、世界初のクラシックレースである英国のセントレジャーを模範として創設された、京都競馬場の3000mで行われるレースだ。

1938年に第一回が開催されたこのレースは、それ以来、三冠馬のコントレイル、オルフェーヴル、ディープインパクトを始め、日本競馬を代表する名馬たちが勝利してきた。

しかし、今年は二冠馬はいない。それどころか、皐月賞馬のミュージアムマイルとダービー馬のクロワデュノールがそれぞれ20頭の登録馬から外れており、出馬表にクラシックウィナーは1頭もいない。

このため、菊花賞の主要トライアルであるG2・神戸新聞杯とG2・セントライト記念、そして夏競馬の開催のを経て成長してきた上がり馬たちに注目が集まる。

菊花賞「ハットトリック」なるか

日本でリーディングジョッキー7回、クリストフ・ルメール騎手は、これまで菊花賞で通算4勝を挙げており、過去2年(2023年ドゥレッツァ、2024年アーバンシック)を連勝中だ。そして今年、3連覇の可能性は十分にある。

昨年の菊花賞を制したアーバンシック、そして先週の牝馬三冠最終戦・秋華賞をエンブロイダリーは、いずれもシルクレーシング所有馬と鞍上ルメールという組み合わせだった。今年の菊花賞、ルメールはエネルジコとのコンビで組み、再び水色と赤の勝負服を着用する。

エネルジコは、重賞2戦を含む4戦のキャリアしかないにもかかわらず、レース前の予想オッズでは1番人気を争っている。この馬はデビューから3連勝を飾り、ダービー前哨戦のG2・青葉賞(2400m)で、今回再び対戦する菊花賞出走馬たちを一蹴した実績を持つ。

休み明けの前走は、G3・新潟記念(2000m)で古馬と対戦し、G1・ヴィクトリアマイル3着馬のシランケドに次ぐ2着に入った。

国枝師が最後の牡馬クラシックに挑む

国枝栄調教師はこれまで、牝馬三冠馬のアパパネやアーモンドアイなど、多くのトップホースを管理してきた。しかし、1990年から始まった調教師人生の中で、皐月賞、日本ダービー、菊花賞という牡馬三冠レースを制したことは一度もない。

70歳を迎え、今年末に迫った定年退職を前に、この菊花賞が彼にとってこれらのクラシックレースを制覇する最後の機会となる。彼にとって最後のクラシック出走馬が、アパパネの息子であるブラックタイド産駒のアマキヒであることは、何かの巡り合わせかもしれない。

金子真人ホールディングスの自家生産馬である同馬は、これまでに6戦3勝の成績を収めている。春先の青葉賞でエネルジコの5着となった後、菊花賞へのステップレースとして出走した2勝クラスの阿賀野川特別を、1.5倍の1番人気に応えて1馬身半差で勝利した。

Cristian Demuro wins Newcomer on Amakihi
CRISTIAN DEMURO, AMAKIHI / Newcomer // Tokyo /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

トライアル組?夏の上がり馬?

皐月賞馬もダービー馬も不在の中、日本ダービーでそれぞれ3着と5着に入ったショウヘイとエリキングが、クラシック組の筆頭となる。

この2頭は、主要トライアルの一つである2400mのG2・神戸新聞杯からの有力候補でもあり、同レースではエリキングがショウヘイをクビ差で下している。そこから1馬身3/4差の3着だったのが、ダービー8着馬、皐月賞4着馬のジョバンニだ。

もう一つの主要トライアルは、2200mのG2・セントライト記念である。このレースは皐月賞馬のミュージアムマイルが制し、2着にヤマニンブークリエ、そこからクビ差の3着に菊花賞出走馬のレッドバンデが入った。

ヤマニンブークリエは水色の勝負服で知られる、土井肇氏の『ヤマニン』軍団の一員だ。ヤマニンの冠名を持つ同氏の所有馬は今年の夏好調で、重賞をいくつか勝利している。ヤマニンブークリエ自身も6月下旬に2勝クラスのレースを勝利した。

しかし、夏のシーズンを通じて一皮剥けた馬は他にもいる。特に青葉賞3着のゲルチュタールは、その後6月と8月に2勝を挙げている。レクスノヴァスは夏競馬で4戦3勝の成績を残した。ミラージュナイトは8月に2勝、そしてエキサイトバイオは6月下旬にG3・ラジオNIKKEI賞を制している。

Rex Novus wins at Sapporo
REX NOVUS / Sapporo // 2025 /// Photo by @minamo_thr

佐々木大輔騎手が菊花賞初挑戦

将来有望と目される佐々木大輔騎手にとって、レッドバンデへの騎乗が菊花賞初挑戦となる。

21歳の佐々木は、2023年と2024年の夏競馬(函館・札幌)で大きな注目を集め、デビュー2年目と3年目のシーズンをそれぞれ68勝、77勝という成績で終えた。今シーズンはすでに76勝を挙げており、大レースでの騎乗機会も増えている。

これまでの重賞勝利は7つあるが、すべてG3レースだ。しかし、未勝利戦を勝った後に、エネルジコが制した青葉賞で僅差の4着に入ったレッドバンデに騎乗する今回、穴馬として一発があってもおかしくない。同馬は6月に東京で勝利を挙げた後、セントライト記念で3着に入っており、これらのレースはすべて佐々木が騎乗していた。

G1タイトルを切望する「崖っぷち」種牡馬

いまや国内を代表する大種牡馬となったキタサンブラックは、自身も現役時代の2015年に勝っている菊花賞に、今回は4頭の産駒を出走させる。

また、その父であるブラックタイドも菊花賞に1頭の産駒が出走。前年首位、そして今年のリーディングサイアーもトップを快走するキズナは3頭、ドゥラメンテは2頭の産駒が出走する。

しかしその裏で、起爆剤を切実に必要としている2頭の種牡馬も産駒を送り出す。マイユニバースとエキサイトバイオの父レイデオロ、ゲルチュタールの父ブリックスアンドモルタルである。

両種牡馬とも、苦境にあるキャリアを好転させるためにG1馬の誕生が待たれる。産駒のセリ価格は芳しくなく、今年の社台スタリオンステーションにおける種付け頭数でも下位に甘んじている。

イクイノックスが206頭、キタサンブラックが198頭、キズナが185頭だったのに対し、レイデオロは61頭、ブリックスアンドモルタルはわずか47頭だった。この菊花賞は、両種牡馬にとって正念場となるかもしれない。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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