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冬季シーズン、ケンプトン競馬場のオールウェザー馬場で行われるメイドンは近年、チャーリー・アップルビー厩舎にとって出世街道の一つとなっていた。ロンドンの西に位置するこの競馬場でセンセーショナルなデビュー戦を飾ったオペラバロも、その例外ではなさそうだ。

戦前、アップルビー調教師はこの馬に対する自信のコメントを寄せており、ニューマーケットの厩舎スタッフからの期待を背負い、デビュー戦へと臨んだ。

父はゴドルフィンが誇る世界的名馬、ガイヤースであり、オペラバロはその初年度産駒に当たる。2023年、アルカナ・オーガストイヤリングセールにて60万ユーロ(約9,500万円)で落札されたが、この落札額は同セールでのガイヤース産駒としては最高額、同産駒全体で見ても2番目に高い落札額だった。

その期待の重さを反映するかのように、オペラバロを本命視する動きは強まり、最終的な単勝オッズは1.44倍を記録。しかし、レースではその期待すら上回る走りを見せ、ビリー・ロックネイン騎手を背に8馬身差の圧勝劇を披露した。

このメイドンの歴代勝ち馬を見ると、過去5年間はアップルビー厩舎のゴドルフィン調教馬による独占が続いてきた。2020年以降、他の調教師や馬主が制した例は存在しなかったが、今年は分割レースとなり、分割2組をアンドリュー・ボールディング厩舎のキーデベチューンが制したことで連覇は止まった。なお、分割2組にはアップルビー厩舎のゴドルフィン所有馬は出走していなかった。

実は、昨年もこのメイドンは分割レースとして開催されていた。分割2組ではノータブルスピーチがデビューし、着差こそ1馬身¼差だったものの、力強い走りで着差以上の強さを感じさせた。しかし、8月が終わるまでに英2000ギニーとサセックスSを制覇する馬になると予想できたのは、よっぽどな評論家のみだっただろう。

(なお、分割1組のメイドンを制したのもゴドルフィンのサイレントエイジだった。この年は4戦2勝の成績を残したものの、シーズン半ばで全休を余儀なくされている)

さらにその前年には、レベルスロマンスの半弟、先日亡くなったメジャードタイムが圧巻のパフォーマンスで初陣を飾っている。レーティングの数字上はノータブルスピーチほど評価は高くなかったが、勝ち時計は1秒以上も早く、重賞レベルの馬になることは火を見るより明らかだった。

実際に、メジャードタイムはジェベルハッタとマンハッタンSという2つのG1レースを勝利。先月、レース中の故障で残念ながら予後不良になるまで、2つの大陸を跨いで世界的な活躍を見せた。

また、このメイドンを制したゴドルフィンの所属馬には、後のG3勝ち馬であるハイランドアヴェニューの名前も含まれる。彼はG3レースこそ勝っているが、モスターダフ、ドバイオナー、アダイヤー、アンマートといったG1馬相手には一歩及ばなかった。

彼が2021年のケンプトンで見せたパフォーマンスを振り返ると、メジャードタイムやノータブルスピーチよりも高いレートを得ていたが、すでに出走経験がある既走馬だったことは注意が必要だ。デビュー戦は1.25倍の支持を得るも2着に敗れ、この時が2戦目だった。

では、オペラバロのレーティングは?数字上では、ハイランドアヴェニューを除く過去の勝ち馬を上回る評価を得ている。タイムフォーム社のレーティングでは勝ち時計の遅さからメジャードタイムより低い評価が付けられているが、ノータブルスピーチは大きく上回っている。

もっとも、レーティングでは測れない側面もある。実際にレースを見比べた印象としては、将来的にもっと大きな舞台で走る馬、もしかしたら頂点を目指せる馬かもしれないという手応えを感じた。

アップルビーは昨年のノータブルスピーチと同様に、英2000ギニーを視野に入れたローテーションを使う意向を示している。前例を参考にすれば、G1挑戦の前にケンプトンのマイル条件戦を2回挟むことになる。

血統構成もノータブルスピーチと似通っており、3歳シーズンはマイル戦が主になる可能性はある。しかし、父のガイヤースは中距離がベストの馬だっただけに、距離を伸ばす選択肢も充分魅力的に映る。

将来の展望: ノータブルスピーチのように英2000ギニー馬になれるかは未知数だが、将来G1戦線で戦える馬に育つ可能性は秘めている

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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