すでに勝ち星を量産しつつある種牡馬・コントレイルだが、その初年度産駒から大物候補が現れた。コントレイル産駒初の特別戦勝ち馬となったバドリナートは、父にさらなる初タイトルをもたらすべく、年末のG1で注目を浴びる存在となりそうだ。
雨が降る中、大観衆が集まったG1・菊花賞デーの京都競馬場で行われた、リステッド・萩ステークス。冬のG1に向けて登竜門となる1800mの2歳戦を制したのは、三冠馬コントレイルの初年度産駒、バドリナートだった。
父のコントレイルにリステッド初勝利をプレゼントしたバドリナートだが、年末の2歳G1・ホープフルステークス、さらには最優秀2歳馬争いに名乗りを上げる力強い走りを披露したのは、それ以上の大きな収穫となった。
萩Sは過去の勝ち馬に、G1馬のサートゥルナーリア、ダノンスコーピオン、そして今年のメルボルンカップに出走するシュヴァリエローズなど、その後の活躍馬がずらりと並ぶ一戦。今年は、9月の新馬戦を快勝したスタディオブマン産駒、キッコベッロが1.9倍のオッズに支持され、バドリナートは4.0倍の三番人気でキャリア3戦目を迎えた。
レースは8頭のゲートが開くと、誰も先手を主張せず、早くも牽制し合う展開に。バドリナートに騎乗する坂井瑠星騎手は、周囲の様子を伺いながらも先頭に立ち、主導権を握ろうとする気配を見せた。
中盤ではカレントゥルーシーが先頭を奪い、バドリナートは三番手に後退するも、直線では爆発的な加速力を発揮。残り200m地点で坂井騎手の合図に応え、一気に後続を突き放すと、大外を通って猛然と追い込んできたキッコベッロの追撃も抑え、1馬身差で2勝目を手にした。
この勝利でJRAシーズン100勝を達成した坂井瑠星だが、実はキャリア600勝目の勝利もバドリナートでの勝利。「この数字は絶対に勝たないといけない勝利数です」と3年連続でクリアした関門についてコメントし、「前回は幼い仕草を見せていたが、今日は言うことがない」と愛馬を褒め称えた。

2020年の三冠馬、コントレイルの初年度産駒として生まれたバドリナートは、ノーザンファームで生まれた初めてのコントレイル産駒だった。その話題性も相まって、生まれた翌月には週刊Gallopの表紙を飾っている。
母のモヒニが日本に輸入される前、アメリカで生まれた半姉のピスタは、2020年にドンカスター競馬場のG2・パークヒルステークスを制し、同年のG1・ロワイヤリュー賞でもワンダフルトゥナイトの2着に入っている。
松永幹夫調教師が管理するバドリナートは8月のデビュー戦こそ、アーモンドアイの次男として注目を集めたプロメサアルムンドにクビ差で敗れたものの、翌月の未勝利戦は4馬身差で圧勝。直線に入った瞬間に外へと膨れる “幼さ” が露呈するも、素質の高さを感じさせる走りで初勝利を挙げていた。
父のコントレイルは7月の産駒初勝利以降、これまで13勝を積み重ね、新種牡馬リーディングでは首位を独走中。2歳リーディングでもモーリスを上回り、エピファネイアに次ぐ2位につけている。
陣営は次の目標を明らかにしていないが、12月に中山競馬場で行われる2000mのG1レース、ホープフルステークスは視野に入るだろう。萩Sの歴代勝ち馬からは、サートゥルナーリアとタイムフライヤーが同レースを勝利し、ヴェルトライゼンデとトップナイフが2着に入っている。
バドリナートはキッコベッロとともに、来年のクラシックレースに向けた争いをリードしていく可能性が高い。そしてゆくゆくは、父のコントレイルにさらなる『初』を送り届けるかもしれない。
将来の展望:最優秀2歳牡馬となる可能性がある逸材