香港の名手カリス・ティータン騎手が、今夏のワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に参戦することが決定した。コロナ禍を境に遠ざかっていたJRAでの短期免許取得も扉が開きつつある。
モーリシャス出身のティータン騎手は、今回が3度目のWASJ出場。2019年に総合3位、2024年に5位と、過去2回も上位争いに加わるなど、存在感を示してきた。しかし、JRAの短期騎乗免許を取得しての来日は、かなり前まで遡る。2016年の夏に3週間来日して2勝、翌2017年にも3週間で5勝を挙げたが、それを最後に遠ざかっていた。
ティータンはIdol Horseの取材に対し、「JRAの短期免許については、妻のザビエールとも話し合ってきました」と明かす。
「娘も今は3歳になって、遠征にも連れて行きやすくなりました。だから、近い将来、日本でのオフシーズン騎乗が、現実的な選択となりました」
新型コロナ禍の厳格な入出境制限により、香港のオフシーズンに日本へ渡ることは困難を極めた。また家族が増えたことで、夏の間はモーリシャスの実家や、妻の家族がいるフランスを訪ねることが優先されてきたという。
「来年あたりには、JRAの短期免許申請も視野に入ってくると思っています」
まずは、今夏のWASJで結果を残すことが目の前の目標だ。札幌競馬場で土日あわせて4戦が行われるこの一戦で、ティータンは過去2回とも初日に勝利を挙げ、好スタートを切っている。
昨年も、初戦で香港時代の盟友ジョアン・モレイラ騎手を “鼻差” で抑えて勝利を収めたが、2日目にモレイラが逆転。最終戦で優勝をさらわれ、タイトルには一歩届かなかった。
「2回参戦してどちらも勝ち星をあげられましたし、去年は初日が好調でした」とティータンは振り返る。「ただ、2日目の騎乗馬たちは力を出し切れませんでした。今年また日本に行って香港代表として戦えるのは光栄なことですし、そのチャンスを両手でつかみにいきます」
札幌で開催されるWASJへの出場は、ティータンにとって格別な意味合いを持つ。日本のファンに囲まれる独特の雰囲気と、馬や騎手への熱い声援は、彼にとって特別なものだ。
「日本に行くのは毎回楽しみなんです。素晴らしい雰囲気ですし、ファンが本当に競馬を愛してくれています。馬主、騎手、馬、みんなに対して深い敬意を払ってくれます。レースの2~3時間前から来場して、自分の応援する勝負服を掲げている姿を見ると、本当に感動します」

そんな日本での最初の勝利は、2016年7月の札幌。堀宣行厩舎のホーリーフルーツで挙げた一戦だった。
「あの初勝利は一生忘れられない思い出です。でも、去年のWASJでの勝利もとても嬉しかった。最後にジョアン(モレイラ騎手)を抑えての勝利で、格別なレースでした。日本での勝ち星はどれも価値あるものです。あの舞台で勝つのは本当に難しいんですよ」
WASJでの好成績がJRAの短期免許取得につながる制度にも、ティータンは前向きな評価を示す。
「海外騎手にとって、日本で騎乗するチャンスが広がる素晴らしい制度だと思います。誰でも簡単に申請して行けるわけではないので、WASJで好結果を出せばライセンスにつながるというのは大きなモチベーションになります」
香港では今季44勝でリーディングは6位に留まっており、昨年の86勝・2位からはやや後退している。それでも、再び日本に招かれたこと自体が、大きな刺激となっている。
「私は物事をできる限り前向きに捉えていますし、日本に行くときも同じ気持ちです。戻れるのが楽しみで仕方ないですね。こういう機会が、将来的にまた違う扉を開くかもしれない。たとえば日本の馬が香港に遠征する際に声がかかるかもしれない。何が起きるか分からないのが、この世界の面白さです」