“ミック”ことマイケル・ディー騎手にとって、馬は人生に欠かせない存在だった。そんな彼が、競馬が深く根付いている国、日本のJRAでの初めての騎乗機会を得ることになった。
ミック・ディーは4月21日から6月24日までの約2ヶ月間、日本で騎乗を予定している。ニュージーランド出身のこのジョッキーは、この新たなキャリアの一歩に大きな期待を寄せている。
「とても楽しみにしています。全く新しい経験になるでしょう」とディーはIdol Horseの取材に対して打ち明ける。「日本のことはまだあまり詳しくないので、ものすごく学ぶことが多いはずです。でも、それが楽しみなんです。日本の関係者はとても親切で、今回の騎乗に向けて多くのサポートをしてくれました。だから私は日本に行って、しっかり騎乗することに集中するだけです」
今回の日本遠征は、ディーにとって母国のニュージーランドとオーストラリア以外での自身2度目の長期滞在となる。2023年半ばには2ヶ月間の香港滞在で4勝を挙げたほか、シンガポールやマカオでの騎乗経験もある。
「日本は香港とはまったく違うと聞いています」とディー。「海外での騎乗は視野を広げてくれますし、いろいろなことを学ぶ機会になります。自分に与えられたチャンスをしっかり生かしたいです」
「日本や香港のレースを見ていると、オーストラリア、特にメルボルンのレースとはまったく違うことがわかります。こちらでは比較的落ち着いたペースで進んで、最後にスプリント勝負になることが多いですが、日本や香港では最初からペースが速く、ハイプレッシャーの中で馬がそのスピードを維持できる力が求められます」

ニュージーランド北島の東海岸、ホークスベイで生まれ育ったミック・ディーは、リチャード・ディー元調教師を父に持つ。幼少期から馬に親しみ、地元で見習い騎手としてキャリアをスタートさせたが、その後オーストラリアへと渡り、有力調教師であるミック・プライス調教師の元で研鑽を積みながら見習い期間を終えた。
「物心つく前からずっと馬と一緒でした。ニュージーランドでは本当に小さい頃からポニーに乗っていて、そこから乗馬ショーや障害飛越競技に進みました。そして、学校に通っているうちに『まだ体重が軽いうちに騎手を目指してみよう』と思うようになったんです」
「父は、今は違いますが当時は調教師でした。しかし私が競馬の世界で経験したことは限られたものでした。でも、私はもともと体重が軽く、馬との相性も良かったので、騎手になるのはごく自然な選択でした」
現在52kgまでの軽量騎乗が可能なディーは、そのアドバンテージを武器にオーストラリアの競馬界で活躍の場を広げてきた。同国の競馬はハンデ戦が主流で、競走馬はレーティングに応じて負担重量が変わるため、軽い斤量をこなせるジョッキーは貴重な存在となる。

ディーのG1勝利数は15を数え、2022年のコーフィールドカップ(ダーストン)、同年のヴィクトリアダービー(マンゾイス)、そして今年のニュージーランドダービー(ウィリードゥイット)などが含まれる。また、オーストラリアンギニーとブルーダイヤモンドステークスではそれぞれ2勝ずつを挙げている。
「軽量騎乗ができるのは大きな強みで、多くのチャンスをもらえています」とディー。「その強みを活かして結果を残してきたことで、自分の成長につながったと思います」
「特定のスタイルにこだわらないのが自分の強みだと思っています。先行でも後方待機でも勝てるし、レースの流れに応じて運を味方につける騎乗もできます。基本的にはどんな状況にも適応して、最善の方法で勝つことを目指しています。直線での追い比べには自信がありますが、どちらかといえば万能型の騎手だと思っています」
ディーはすでに将来を見据えており、来年は3ヶ月間の日本遠征を計画中だ。昨シーズンのメルボルン地区の騎手リーディングでの活躍により、2026年にはさらに長期間の滞在が可能になる見込みだ。
「正直なところ、何が待っているのかはまだわかりません。でも、とにかく全力を尽くして、良い結果につなげたいですね」と意気込む。
「日本での騎乗を楽しみつつ、すべてのチャンスを最大限に活かすつもりです」