リバティアイランドの中内田充正調教師は、天皇賞秋での不本意な結果を払拭すべく、三冠牝馬の再起に期待を寄せている。12月8日に行われるG1・香港カップではロマンチックウォリアーとの対戦を控えているが、そこでの復活に向けて意気込みを語ってくれた。
昨年のJRA三冠牝馬であるリバティアイランドは、2023年ラストのG1・ジャパンカップをイクイノックスに次ぐ2着という好成績で締め括ったが、2024年は怪我に悩まされた一年となっている。3月のG1・ドバイシーマクラシックでは鋭い追い込みで3着に入るも、10月の天皇賞秋では13着という『大敗』に終わった。
Idol Horseの取材に応じた中内田調教師は、前走のリバティアイランドは調整不足で万全の状態では臨めなかったと背景を明かす。しかし、香港に向けては以前のような調教を積めていると語った。
「天皇賞秋ではガス欠状態でした。調整過程を振り返ると、どうしても万全の仕上げに持っていくまでの時間が足りなかった。70%くらいの仕上がりだったと思います。帰厩する1ヶ月ほど前、脚元に軽い問題が発生していたんです。ずっと脚元が芳しくなくて」
「大した怪我ではなく軽度の故障だったので、1週間から10日ほど様子を見て調教を再開できると判断しました。ですが、本格的な調教を再開しても、残された時間は文字通り3週間だけ。これまでの過程を振り返ってみると、どうしてもG1レースに備えるには時間が足りませんでした」
「天皇賞秋はスローペースで進みましたが、中盤に展開が緩まず、自分のリズムで走れるチャンスがありませんでした。通常、スパートする前には息を入れて加速に備えるのですが、今回はその余裕がありませんでした」

中内田は、このレースを香港カップに向けての良い足掛かりだと前向きに捉えている。そして、その後のリバティアイランドは順調に調子を取り戻していると語った。
「状態には満足しています。レース後は馬体重もすぐに回復しましたし、動きも前より良くなってきました」と中内田は話す。また、3月から10月までの休養の原因となった右前脚の『軽度』の種子骨靱帯炎も完治し、その心配も必要ないと明かしてくれた。
11月27日の水曜日に関西国際空港から香港に向けて飛び立つ予定となっており、リバティアイランドは月曜日に栗東で国内最終追い切りを終えた。片山裕也調教助手を背にコースで追われ、ラスト1ハロンでは11.2秒を記録。今年のドバイ遠征にも帯同した片山助手は、香港遠征でも調教を担当する予定だ。
「順調そのものでした。落ち着いた走りでしたし、加速もいつも通りでした。動きもスムーズでしたし、力強い走りをしてくれました。まだ手応えには余裕がありました。余裕残しでの調整です」
香港国際競走の1週間半前に現地に到着できるスケジュールは理想的だが、フライトの日時は当初から決まっていたことだと中内田は話す。
「関西馬は関西国際空港から出発するので、それに関しては選択の余地はありません。関東馬は成田空港から別のスケジュールで出発します」
「ですが、これで良かったと思います。彼女は学習能力が高いタイプです。ドバイでは初めての環境に少し戸惑いを見せましたが、数日経てばすぐに慣れました。その時も慣れに時間を要したので、早めに香港に着けるのはプラスです」
また、リバティアイランドと共にもう一度世界の舞台に挑めること、香港カップ3連覇という偉業にチャレンジする地元の王者、ロマンチックウォリアーと対戦できることも心待ちにしているという。
「ロマンチックウォリアーはリスペクトしなければいけない相手です。恐らく、2000mなら世界最強の馬だと思います」
「マイル戦の安田記念に来たときでさえ、誰も敵わなかった存在です。彼は最強の存在だと思いますし、リスペクトしなければいけない馬です。しかし、そのような馬と戦えるのは光栄ですし、うちの牝馬がどれほどの馬なのか試せる良い機会でもあります。良いレースになると思います」
「枠順も大きな要素になってきます。しかし、向こうのレーススタイル(最初のコーナーまでの先行争いが激しく、その後緩くなる)であれば、リバティアイランドが息を整えるチャンスもあるはずです」

リバティアイランドは先週日曜日のジャパンカップ、もしくは12月22日のG1・有馬記念への出走も選択肢として残されていたが、陣営は香港への遠征がベストだと判断した。中内田はその理由を説明する。
「本来の走りをできなかった天皇賞秋のことを考えると、ジャパンカップは間隔が短すぎると思いました。状態に問題ないかを確認し、そこからさらに仕上げるには時間が足りなかったんです。それに、東京の2400mよりは2000mの方が向いています」
「有馬記念に関しては、中山の2500mは非常にトリッキーなコースです。3回もターンする中山に比べて、2000mはターンが2回のよりシンプルなコース設計です」
「リバティアイランドは世界を視野に入れて戦う馬です。高い評価を受けている馬ですし、世界トップクラスのレースを走らせる必要があります。きっと、競馬ファンの皆様も彼女が世界で活躍する姿を望んでくれているはずです。ですから、そういった選択肢を検討しています」