香港ジョッキークラブ(HKJC)が進める、カーインライジングを中国本土の従化競馬場で走らせる計画が、実現へ向けて動きが加速している。HKJCのウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲスCEOは日程を明かし、この構想を世界に向けたメッセージと位置づけた。
1200mで行われるG2・ジョッキークラブスプリントは、12月のG1・香港スプリントへ向かう主要な前哨戦に位置付けられている。このレースは現在、11月21日のシーズン2回目となる従化開催での実施が目標となっている。
「前向きに捉えていますし、実現を楽観しています。馬主は非常に乗り気です。スポンサーとはまだ協議が必要ですが、私の理解では国際パターン委員会も支持してくれるはずです」
エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏はIdol Horseの取材に対し、現在の見通しをこのように示した。
「あくまで競馬場の変更に過ぎず、これまでも何度も認められてきたことですから、かなり楽観しています。実現すれば素晴らしいことです」
カーインライジングは5月1日、香港競馬での無敗シーズンを終え、休養としてHKJCの従化トレセンに到着した。4月26日のG1・チェアマンズスプリントプライズではコースレコードを更新し、20連勝を達成してシーズンを締めくくった。2026年のロンジンワールドベストレースホースランキングでは、現時点で世界トップに立っている。
5歳騸馬の同馬にとって、従化競馬場(従化トレセン)は馴染みのある場所だ。デヴィッド・ヘイズ調教師はカーインライジングのキャリアを通じて、レースの中間調整として同施設を利用してきた。心身のコンディションを保つ助けになっていると評価しており、ヘイズ師と代表馬主の梁錫光氏はいずれも今回の計画を支持している。
11月21日の一戦は、カーインライジングのローテーションに合わせて選ばれた。同馬は10月、シドニーのロイヤルランドウィック競馬場で行われる世界最高賞金の芝レース、ジ・エベレストで連覇を目指し、その後、香港へ戻って検疫を終え、従化での一戦へ向かう想定となっている。
「日程は21日です。ジ・エベレストから戻り、検疫を終えられる必要がありますし、そのうえで香港スプリントにつながる日程でなければなりません」とエンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は説明する。
「我々は28日にしたいと考えていましたが、現在は21日の方向で進められています。この件については、調教師、馬主との間で話し合っています」
最終判断は、7月16日の香港競馬シーズン終了までに下される見通しだ。


カーインライジングの圧倒的な強さは、香港競馬の馬券面でも異例の構図も生んでいる。
地元での直近9戦はいずれも、HKJCの最低単勝配当である1.05香港ドルが設定され、直近の出走では単勝プールに賭けられた9700万香港ドルのうち、実に9400万香港ドルがカーインライジングに投じられた。つまり、最低配当を維持するため、HKJC側が実質的に不足分を補填する構図になっている。
ただし、従化案を動かしているのは、そうした馬券面の事情ではないと、エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は明言する。実際、中国本土では競馬への賭けが認められておらず、従化開催では馬券発売が行われない。
「馬券の状況は影響していません。莫大な馬券売上がかかるレースではないことは助けになりますが、私にとって、このレースは象徴です。中国本土でもワールドクラスの競馬を開催できる段階に来たことを示すものです」
「これは意志と存在感を示す声明であり、従化の施設をトレーニングセンターとしてだけでなく、競馬場として世界に示すためのものです」
従化競馬場は2018年8月、香港から北へ約150kmの広州市従化区に開場した。2010年の広州アジア大会での馬術競技会場跡地に37億香港ドルを投じて建設され、シャティンとの二拠点体制のもと、香港調教馬にとって調教・休養目的のサテライト施設として運用されている。
ただし、同施設はもともと競馬開催を前提に設計されていた。芝コースは1周2000mで、シャティン競馬場のコース設計よりも100m長い。
4コーナーの半径もシャティンより大きく、直線に入る前に馬がバランスを取りやすい。カーインライジングのように、直線まで待って加速するのではなく、コーナーを極めて効率よく走り抜ける馬にとって、大きく緩やかなコーナーはさらなる利点となり得る。
また、直線コースには緩やかな上りもあり、瞬発力勝負だけでなく、持続的なスピードを支えるスタミナも問われる。
従化で競走形式の開催が行われたのは一度だけで、2019年3月の5レース編成によるエキシビション開催だった。この日行われた1200m戦は3レースのみで、その最速時計はノルディックウォリアーが記録した1分09秒28。カーインライジングが持つシャティンのトラックレコードは1分07秒10である。
エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏はカーインライジングの従化での走りについて、冗談交じりに「間違いなくトラックレコードになりますね」と述べた上で、「あのコースを気に入るでしょう」と話した。
なお、従化開催は5~6レース編成となる見込みだ。10月31日の初回開催は、政府関係者を招いての正式オープニングとなる。一方、11月の開催はワールドクラスの競馬を示すための番組として組まれている。
「初回開催も興味深いものになりますが、次の開催こそ、ワールドクラスの競馬、スポーツ、エンターテインメントが本当にどういうものかを示せる場になります」
ヘイズ師は、カーインライジングが昨季と同じ8戦のローテーションを歩む見通しを示している。9月、2026/27年シーズン開幕日の香港特区行政長官盃で始動し、10月17日にシドニーで2度目のジ・エベレスト制覇を狙う形だ。
欧州遠征やライバルスプリンターとのマッチレースなど、新たな挑戦を求める声については、エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏の考えは変わらなかった。
「マッチレースを望むなら、チャレンジャーがこちらへ来ればいいのです。ここが一番来やすい場所です。検疫を終えたらすぐに出てきて、コースで調教し、世界最高の馬と戦うことができます」
同氏はそう述べ、さらに続けた。
「人々に聞けば、誰もが名前を知っている馬は一頭です。王者に挑むのであれば、王者に来てもらうのではなく、自分が挑みに来るものです」