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そう、リトルパラダイスは強かった。香港ダービー本命であることは間違いない。だがここで過熱しすぎる前に、違う状況でもう一度再現できるかを見たい。

というのも、2026年の香港クラシックマイルはこの馬にとってほぼ理想に近い展開で進んだ一方、香港ダービーではそうならないかもしれないからだ。

誰かが「もっと早く外に出せていたら、どれほど着差が開いていたか」と言っているのを聞いた。私はそうは思わない。あれだけ脚をためる形になったことは、むしろ彼を助けた。外に出したタイミングが、まさに最適だった。

理解してほしいのは、『長く脚を使い続けられる馬』と『瞬間的に脚を使える馬』の違いだ。

日曜のように本当に流れの速いマイル戦では、外を回ってコーナーで長く、持続的に動いていくのは非常に難しい。ずっと脚を使わされることになり、いったん脚を使わされると、それを600〜700mも続けることはできない。馬はそんな走りを続けられない。

リトルパラダイスは、長く脚を使い続ける必要がなかった。最後にようやく進路ができた150〜200mで、一気に加速すればよかっただけだ。だからこそ鋭く見えた。じっと構え、脚をため、前が開いた瞬間に加速できる馬に向く形で、レースが進んでいたからだ。

ゴール前で伸びたのは、中団かそれより後ろで、余計な仕事をせずに壁を作れていた馬たちだ。

リトルパラダイスは内ラチから2頭目で、前に壁を作れた。インフィニットリゾルヴも、ちょうどいい位置で無理なく運べた。ビューティーボルトは、流れの速いレースで逃げ馬の外、プレッシャーを受けながらも、なお踏ん張って伸び続けた。

だからこそ、私は彼を評価する。だが、後方の外から勢いをつけていこうとする馬たちにとってはどうか。流れの速いマイルでそれをやるのは、相当に厳しい仕事になる。

Little Paradise winning the G1 Hong Kong Classic Mile under Vincent Ho
LITTLE PARADISE, VINCENT HO / G1 Hong Kong Classic Mile // Sha Tin /// 2026 //// Photo by HKJC
Jimmy Ting and Little Paradise after winning the G1 Hong Kong Classic Mile
JIMMY TING, LITTLE PARADISE / G1 Hong Kong Classic Mile // Sha Tin /// 2026 //// Photo by HKJC

ここで、全体像に目を向けよう。ダービーの距離が2000mに延びた2000年以降、クラシックマイルの勝ち馬がダービーまで勝ったのは7頭しかいない。

そのうち5頭は直近9年に集中している。そしてその中には、正真正銘のチャンピオンが2頭、もう1頭も非常に優秀な馬がいる。ゴールデンシックスティ(2020年)、ロマンチックウォリアー(2022年)、ヴォイッジバブル(2023年)だ。

もう1頭、ラッパードラゴン(2017年)も、悲劇的な故障でキャリアが断たれる前は、その道を進めそうに見えた。

つまりこういうことだ。香港クラシックマイルと香港ダービーの両方を勝つのは、並みの良馬では成し得ない。『相当に強い馬』でなければならない。

そして香港ダービーで試されるのは、海外の人が考えるような『スタミナ』の話にいつも収まるわけではない。しばしば問われるのは、レース運びのうまさだ。

ペースが落ちた時にリラックスできるか。距離が延びるにつれて、道中で流れが緩む局面が起きがちだが、その時に十分に落ち着いて運べるか。それでいて、勝負どころで再び反応できるか。

リトルパラダイスは、形がはまれば強烈なスプリント力を持つことを示した。だがクラシックマイルは、彼を良く見せるにはほぼ理想に近い流れだった。レースの運びと、直線で最後に進路が開いたことに、少なからず後押しされている。

今は、違う状況でもう一度それを見たい。すべてが理想通りに運ばない時でも勝てるのか。もし700mから外を回され、流れの速いレースで持続的に脚を使わなければならない形になっても、勝てるのか。もしかしたら勝てるかもしれない。彼が単純に、他より強いだけなのかもしれない。だが、それはまだ残る問いだ。

そして後ろの馬たちを忘れてはいけない。インヴィンシブルアイビスは、明らかに『度外視できる』一頭だ。最後方に置かれ、長く脚を使わされる形になった以上、あの流れのマイルでは非常に苦しい。

しかも内からパッチオブコスモに煩わされ、直線手前では接触を受けてバランスを崩した。競り合えるだけの形にならず、限りなく不可能に近い条件だった。

確かに、現時点ではリトルパラダイスが最有力だ。だがダービーは1月下旬に勝つものではない。3月22日だ。だがそれまでに、私がリトルパラダイスに抱く疑問、そして主要なライバルたちに関する疑問の多くは、1800mの香港クラシックカップで答えが出るだろう。

パートンは落胆、それでもサゲイシャスライフは頑張った

ザック・パートン騎手はサゲイシャスライフの走りに明らかに落胆していた。

その気持ちは分かる。勝ち馬のリトルパラダイスを含め、香港クラシックマイルには少なくとも6頭のお手馬がいたが、その中でザックが選んだのがサゲイシャスライフだったからだ。

だが私は、ブラジルからの移籍馬、サゲイシャスライフが4着に来た内容は悪くなかったと思う。

枠順の影響で、道中は終始3頭分外を回る形になり、ザックにできることは多くなかった。そもそもこの馬は、リトルパラダイスのように前が開いた瞬間にスッと脚を使うタイプではない。

この馬は瞬発力勝負の馬ではない。ジリジリと脚を使い続けるタイプだ。本当に流れの速いマイルでは、他が楽な形からスプリントしてくる分だけ地味に映ることがある。だが一方で、シリーズ後半に2000m、そしてより本格的な持久力勝負を求められる舞台に向くタイプでもある。

悪い内容ではない。この馬はこの馬の競馬をしただけだ。200mで3馬身突き放す馬ではなく、ダービー向きの、最後まで脚を使い続ける馬として。

Zac Purton winning aboard Sagacious Life at Sha Tin
ZAC PURTON, SAGACIOUS LIFE / Sha Tin // 2025 /// Photo by HKJC

2026年の4歳クラシックシリーズはまだまだ見どころ十分

勝ち馬以外に目を向けても、香港ダービーの望みが残る馬はまだ多い。

ビューティーボルトは、厳しい競馬でも踏ん張り続けている。流れの速いレースで先頭の外を回り、プレッシャーを受け、それでも周りが止まった時にさらにひと伸びした。香港で一度も大崩れしておらず、常に誠実な走りをしてくれる。

パッチオブコスモも良かったし、私はこの一戦で評価を落とさない。前走は休み明け初戦で、腱の不安により300日以上の長期休養明けだったにもかかわらず、重い斤量でマイルを好走した。

そこから2週間で同じことを求めるのは、プラス材料ではない。むしろ落とし穴になりがちだ。あの運びを考えれば、よく走ったと思うし、今後も大いに注目している。

インヴィンシブルアイビスも、1戦で見限るつもりはない。道中で窮屈になる場面があり、直線手前では接触を受けてバランスを崩した。

最後方から早めに動かされ、外を回してコーナーでも脚を使い続ける形になった以上、この一戦だけで厳しく裁くことはできない。

そして当日の別レース勝ち馬のうち、まだ香港ダービーに出られる馬たちにも目を配りたい。ラッキーサムゴルが1600m戦を勝ち、何ひとつ問題はなかった。スーパーエクスプレスは1400m戦を勝った。まだ学びの途中だが、違うと証明されるまでは、候補から外せない。

重要なのはここだ。香港クラシックマイルはシリーズを『終わらせた』のではない。むしろ、さらに面白くしただけだ。

シェーン・ダイ、Idol Horseのコラムニスト。 オーストラリアとニュージーランドで競馬殿堂入りを果たし、1989年のメルボルンカップ(タウリフィック)、1995年のコックスプレート(オクタゴナル)では名勝負を演じた、G1・通算93勝の元レジェンドジョッキー。また、香港競馬では8年間騎乗し、通算で382勝を挙げている。

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