「他の馬とは何かが違う」そう感じさせる馬がいる。
単なる視線で捉えられる特徴ではなく、それ以上の何かだ。日曜日の京都競馬場、パドックを周回するレガレイラは、まさに他馬と異なるオーラを放っていた。その姿は威厳に満ちており、これから何か特別なことをやってのけようという、グランプリホースの雰囲気を漂わせていた。
10レースまでにすでに4勝を挙げていた、クリスチャン・デムーロ騎手。ファンの間には、G1・エリザベス女王杯で2番人気のリンクスティップに騎乗する彼が、この日のメインも勝ってしまうのではないかという期待が充満していた。
しかし、パドックでレガレイラを無視することは不可能だった。2歳時にG1・ホープフルステークスで牡馬を一蹴し、とてつもない期待を集めた牝馬だ。その後、3歳クラシック戦線では牡馬相手に苦汁をなめたが、昨年12月のG1・有馬記念で見事な復活勝利を遂げた。
怪我からの復帰戦となったG2・オールカマーを制し、レガレイラはこれまで以上に素晴らしい状態でここに戻ってきた。
木村哲也調教師はレース後、「装鞍所で自信を持って歩いてたし、いい意味でオーラが出てた。パドックもオールカマーの時よりはかなり集中して歩けていました」と様子を明かす。
だが、レガレイラの戦績と騎手・調教師の双方から出た「ホッとした」という言葉が示す通り、彼女は稀代の才能の持ち主であると同時に、明らかに一筋縄ではいかない牝馬でもあった。
日曜日のメインレース、スタート地点の狭いゲート内で彼女はそわそわとしていた。つま先立ちで跳ねるような仕草を見せ、鞍上の戸崎圭太騎手をヒヤリとさせる場面もあった。
「(ゲートの)中では落ち着きがなかったので、祈るような気持ちでした」と、レース後に戸崎は振り返った。
レガレイラをゲート内でリラックスさせるために、陣営は多大な努力と工夫を重ねてきた。指揮官とチームは、他馬がゲート入りする前に、一度レガレイラを別のゲートに入れてから出すという異例の措置さえ講じた。この直前の“練習”が、人馬にとって功を奏したようだ。
戸崎はレース前の準備を巡り、次のように振り返る。
「雰囲気も良くて落ち着いてましたし、一番重要な返し馬のキャンターもいい形で出てこれたので、その後も落ち着いていて雰囲気がすごく良かったです」
「前走ゲートでうるさかったので、先生と話をして、スタート前に1回練習しようということで練習したんですけど、やっぱり練習の時からなかなか落ち着かなくてどうかなと」
だが、跳ねたり落ち着きがない様子を見せながらも、本番はうまくいった。レガレイラは素早くゲートを出ると、レースはスムーズに流れた。
武豊騎手はエリカエクスプレスを先頭に立たせたが、大きくリードを広げることはなかった。レガレイラは中団馬群の外側を冷静に追走する。第3コーナーから第4コーナーの中間あたりで、リンクスティップが仕掛けると、進出するその姿に観客から歓声が沸き起こった。
最終コーナーに差し掛かると、レガレイラはカナテープとココナッツブラウンの間を割り、外から進出を開始する。残り200mで、レガレイラは先頭に立っていたパラディレーヌを捉え、突き放すと余裕を持って1着でゴール板を駆け抜けた。

入線後、戸崎はパラディレーヌの岩田望来騎手と固い握手を交わした。
JRAの重賞レースでは、恒例の勝利騎手インタビューが行われるが、その最後、戸崎は「ベリベリホース!」と叫んだ。これは、4月のG1・ドバイシーマクラシックでダノンデサイルが勝利した際、“グッド”という単語を飛ばしてしまった言い間違いが、日本の競馬サークル内でミーム化してしまったものだ。
今回、自らネタにして場内を沸かせ、観客も大歓声で応えた。彼は今日のヒーローであり、レガレイラは愛すべきヒロインだ。戸崎はそれをよく理解している。
「今日は人気に応えられてよかった」と戸崎は話す。「レガレイラは本当に強いと信じて乗せていただきましたし、素晴らしい走りで勝ってくれたので、応援ありがとうございました」
「また今後もいい走りを見せてくれると思いますので、どうぞよろしくお願いします」
関係者は次走について「相談してから」という定型句を口にしたが、レガレイラが有馬記念のタイトル防衛に向かうという見方が大勢を占めている。
もし彼女が日本の年末の大一番、グランプリレースを2年連続で制することができれば、そのオーラはさらに計り知れないものとなるだろう。


