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ステレンボッシュは、今シーズンを立て直し、そしておそらくは香港行きの座をつかむためのミッションに挑むことになる。日曜日の京都競馬場で行われる、秋の牝馬にとっての大一番、G1・エリザベス女王杯で、同世代の強豪レガレイラと激突する。

この4歳牝馬は、ここまでは今季、思うような結果を残せていない。今季3走の着順は13着、8着、15着と、見る影もない数字が並ぶ。

2024年4月、ジョアン・モレイラ騎手とのコンビでG1・桜花賞を制し、同年のG1・オークス2着、G1・秋華賞3着とクラシック戦線で安定して上位争いを演じ、海外遠征先でもG1・香港ヴァーズでジアヴェロットの3着と健闘した牝馬としては、あまりに物足りない成績だ。

そんなステレンボッシュは、今年12月のG1・香港ヴァーズとG1・香港カップへの登録を済ませている。国枝栄調教師と大馬主の吉田勝己氏は、その前哨戦となる今週末の2200m戦に向けて、今もっとも勢いに乗るクリストフ・ルメール騎手を確保した。

ルメールは11月に入ってからの勝率が51パーセントという驚異的な数字をマークしており、菊花賞、秋華賞、天皇賞秋と、JRAのG1レースを3連勝中だ。

そんなルメールだが、ステレンボッシュに騎乗するのは今回が2度目となる。前回は2023年12月に行われたG1・阪神ジュベナイルフィリーズで、アスコリピチェーノの2着と健闘した一戦だった。

「最近は、彼女がベストの状態にないようです。私はここ2年近く彼女に乗っていないので、なぜそうなっているのか分かりません」とルメール騎手はIdol Horseに語った。

「これから彼女の過去のレースを改めて見直して、何がうまくいっていなかったのかを探したいと思います。体調、フィジカルのコンディションの問題なのか、それとも距離やコース形態の問題なのか、そのあたりを確認しなければなりません」

それでも、日本で7度のリーディングジョッキーに輝いてきた名手からは、前向きな報告が届いている。

「先週、追い切りで乗りましたが、とても良い動きをしていました。走りは活力に満ちていますし、良いパフォーマンスができない理由は何も見当たりません」

「ポテンシャルがあることは分かっていますから、フィジカルが万全で、私が適切なポジション取りをさせることができれば、きっと結果を残してくれるはずです。かなり自信を持っています」

勝利への最大の障壁となりそうなのは、昨年のG1・有馬記念を制したレガレイラだ。レガレイラは9月に中山競馬場で行われたG2・オールカマーを勝ってこの一戦に臨むが、一方で成績にムラのあるタイプとしても知られており、昨年のエリザベス女王杯では5着に敗れている。

エリザベス女王杯は、伝統的に世代間の力比べが繰り広げられる舞台だ。しかし、英国の名牝スノーフェアリーが2010年にこのレースを初制覇して以降、3歳馬で勝利を収めたのはわずか3頭しかいない。

今年の出走馬のなかで、クラシック世代からの有力候補となるのは、G1・秋華賞で2着だったエリカエクスプレスと、3着馬のパラディレーヌだろう。

スノーフェアリーは2010年にエリザベス女王杯を勝ったあと、その年のシャティンのG1・香港カップも制した。2019年のエリザベス女王杯を制したリスグラシューも、その後のG1・香港ヴァーズでエグザルタントとの名勝負を演じ、クビ差の2着に惜敗している。

一方で、ルメールの近走の好調ぶりは、日本の競馬ファンの想像力を大いにかき立てている。しかし本人は、ステレンボッシュ自身が立ち直らなければ、状況は変えられないことをよく理解している。

「私には多くの期待が寄せられていますが、馬の状態が良くなければ、私が何をしても意味がありません」と、ルメール騎手は語る。

「すべては馬次第です。彼女がコースをどうこなすか、どれだけ気分良くレースに臨めるかにかかっていますが、ステレンボッシュには間違いなく、もう一度G1を勝つだけのポテンシャルがあります」

ジミーズスターは、カーインライジングのG1・ジ・エベレスト制覇という偉業に、さらなる輝きを加える存在となるかもしれない。今週土曜日、コーフィールド競馬場で行われるG1・CFオーアステークスでは、同馬が人気の中心になる公算が大きい。

このレースは2025年に2度目の施行を迎えるという、異例の“年二回開催”となる。

本来、CFオーアステークスは、ロンジンワールドベストジョッキーのポイントシステムの対象となる『世界のトップ100・G1レース』の一つだ。しかし、その施行時期が2月から11月へと移されたことで、今回に限ってはポイントの対象外となる。

それでも、ランキングで首位に立つジェームズ・マクドナルド騎手のリード差を考えれば、その事実もほとんど意味をなさない。

2025年の『トップ100・G1レース』のうち、ワールドベストジョッキーのポイント対象としてまだ残っているのは、G1・マイルチャンピオンシップとG1・ジャパンカップだけだ。ランキング計測は11月30日をもって、正式に締め切られる。

ワールドベストジョッキーは、国際競馬統括機関連盟(IFHA)が制定する年間表彰で、『トップ100レース』の成績によってポイントが加算される仕組みだ。対象レースで1着なら12ポイント、2着で6ポイント、3着で4ポイントが与えられる。

マクドナルドは2024年のタイトル保持者で、今年も連覇は確実な情勢だ。現在、合計184ポイントを獲得しており、2位のミカエル・バルザローナの120ポイントを大きく引き離している。

JAMES McDONALD / G1 QEII Cup // Sha Tin /// 2023 //// Photo by Alex Evers/HKJC

このランキングの“構造上の欠陥”は、これまでのタイトルホルダーが、いずれもヨーロッパ拠点のライアン・ムーア騎手とランフランコ・デットーリ騎手、そしてオーストラリア拠点のヒュー・ボウマン騎手とマクドナルドに限られていることからも明らかだ。

今年の対象レースは、オーストラリアで30レース、ヨーロッパで39レース、日本で13レース、アメリカで11レースが行われる。どの地域の騎手が有利かは、数字が物語っている。

ファンそれぞれが思う“世界最高の騎手”は異なるだろうし、その評価は本来、主観に左右されるものだ。

それでも“世界一のタイトル”は、スポーツとしての競馬をどうマーケティングするかという試みの一環でもある。世界の競馬をプロモーションし、物語をグローバルに束ねようとするその意図自体は評価されてよいものであり、多少の欠点は大目に見ることもできるだろう。

日米欧の大舞台で数々の名馬に騎乗し、サンデーサイレンスやアラジの手綱も取ったパット・ヴァレンズエラ騎手は、その華やかな勝利の裏で数多くのトラブルも経験してきた騎手として知られる。

そんな彼がキャリア初勝利を挙げたのは、1978年11月10日、ニューメキシコ州のサンランドパーク競馬場で、パーカーペティートに騎乗した一戦だった。

それから6年後の1984年11月10日、ハリウッドパーク競馬場で記念すべき第1回目のブリーダーズカップ開催が行われた。激しい競り合いとなったG1・BCクラシックでは、パット・デイ騎手騎乗のワイルドアゲインが、接戦のゴール前を制して歴史的一戦の勝者となった。

さらに時代をさかのぼると、1904年11月12日、ニュージーランドのリッカートン競馬場では、4歳馬のマシンガンが159ポンド(約72キロ)という斤量を背負って勝利している。これは、「平地競走で勝ち馬が背負った斤量」としては、史上最高とされている数字だ。

Sunday Silence wins Kentucky Derby
SUNDAY SILENCE, PATRICK VALENZUELA / G1 Kentucky Derby // Churchill Downs /// 1989 //// Photo by Focus On Sport

今週、Idol Horseはクリストフ・ルメール騎手への取材が実現。

JRAの騎手リーディングのトップに立つ好調ぶりの一方で、自らビジネスを立ち上げ、競馬の魅力を発信しようとするルメール騎手の試みを取材した。

アンドリュー・ホーキンス記者のコラムでは、「より道徳的に敏感で、より視覚的に刺激を受け、そして“本物らしさ”に敏感な世代」であるZ世代が、競馬の未来に希望をもたらす理由を探求。

一風変わった入り口から競馬に出会った、20代の若者たちとは。

ジェームズ・マクドナルド騎手が先週、来月の香港国際競走に合わせて短期免許で香港に戻ってきた。

シドニーのチャンピオンジョッキーが、昨年12月の香港でデヴィッド・モーガン記者の取材に語った言葉とは。

現在、クリストフ・ルメール騎手はまさに脚光の中心にいる。そのルメールが鞍上を務め、この1週間で注目馬リスト入りさせたい存在となったのがウィクトルウェルスだ。

3歳馬の同馬は先週末、東京競馬場芝2000mで行われたイクイノックスメモリアル(3勝クラス)で、2馬身差を付けて快勝した。ルメールにとっても、思い入れのあるレースだった。

ルメールは、世界チャンピオンとして君臨したイクイノックスの全10戦すべてで手綱を取り、G1・ドバイシーマクラシック、G1・ジャパンカップ、G1・有馬記念、G1・宝塚記念、そしてG1・天皇賞・秋を2度制するなど、計8勝を挙げた。

ウィクトルウェルスもシルクレーシングの勝負服をまとっている。イクイノックスの伝説的な実績に肩を並べることは難しいかもしれないが、成長の遅いタイプだったこの3歳馬は、今回の勝利で4連勝とし、来年の重賞戦線でも十分に活躍できる器であることを示した。

ルメールはIdol Horseの取材でこの馬について問われると、「ウィクトルウェルスは間違いなく、もっと上のレベルに行けます」とコメント。

「スタートした瞬間から、今日は勝てると思いました。レース自体が特別強いメンバーだったかどうかは分かりませんが、彼は素晴らしい勝ち方をしましたし、いつもより反応もずっと速かったです。4連勝というのは簡単なことではありません。彼は間違いなく重賞クラスの馬です」

Victor Verus wins at Tokyo
VICTOR VERUS, CHRISTOPHE LEMAIRE / Tokyo Racecourse // 2025 /// / Tokyo // Photo by @s1nihs

🇯🇵 エリザベス女王杯
京都競馬場、11月16日

3歳以上の牝馬に出走が限定された日本唯一のG1競走、エリザベス女王杯(2200m)がメインレース。この日、京都で新たな女王が誕生する。

1996年に古馬牝馬にも門戸が開かれて以降、このレースは世代と世代がぶつかり合う舞台となってきた。昨年このレースで不本意な5着に終わったものの、12月のG1・有馬記念を制したレガレイラは、名誉挽回を目指して再び京都に戻ってくる。

中山競馬場のG2・オールカマーでの力強い勝利をステップに、1年前の敗戦と、6月のG1・宝塚記念での精彩を欠いた内容を払拭し、関西圏での初勝利を狙う。

🇯🇵 マイルチャンピオンシップ
京都競馬場、11月23日

今年のG1・マイルチャンピオンシップには、ハリー・ユースタス調教師が送り出すドックランズが外国馬として参戦する。

マーク・ザーラ騎手は、ドックランズとのコンビでロイヤルアスコットのG1・クイーンアンステークスを制し、大舞台で鮮烈なインパクトを残した。このオーストラリアのジョッキーは、そのドックランズとともに京都でも国際舞台での成功を狙うことになる。

ドックランズは6月のアスコットでロザリオンとの接戦をわずかに制して以来、勝ち星から遠ざかっているが、前走の英G1・クイーンエリザベス2世Sで見せた4着の善戦を弾みに日本へと向かう。

迎え撃つ日本勢の中心は、6月のG1・安田記念を制したジャンタルマンタルだ。先月のG2・富士ステークスでは2着に敗れているが、その内容を上回る走りで、国内マイル路線の頂点に相応しい姿を改めて示したいところだ。

🇭🇰 バンクオブチャイナ(香港)レースデー
シャティン競馬場、11月23日

この日のシャティン競馬場では3つのG2競走が行われ、12月14日の香港国際競走に向けて、香港のスーパースターたちが本格的に始動する。G2・ジョッキークラブスプリントは、今年も世界最高レーティングのスプリンターであるカーインライジングを中心に展開しそうだ。

一方でG2・ジョッキークラブカップでは、香港を代表する二頭の看板馬が激突。ダニー・シャム調教師が管理する世界的スター、ロマンチックウォリアーは、5月の手術以来となる復帰戦で、昨シーズンの香港三冠馬のヴォイッジバブルと2000m戦で顔を合わせることになる。

G2・ジョッキークラブマイルでは、G2・シャティントロフィーを制して勢いに乗るマイウィッシュが、出世街道をさらに駆け上がれるかが注目される。

VOYAGE BUBBLE, JAMES McDONALD / G1 Champions & Chater Cup // Sha Tin /// 2025 //// Photo by HKJC

🇯🇵 ジャパンカップ
東京競馬場、11月30日

今年のG1・ジャパンカップ(2400m)は、ロスアンゼルス、ゴリアット、クィーンズタウンが出走を取りやめたことで、海外からの参戦は1頭のみとなった。しかし、そのただ1頭の外国馬は、今年のヨーロッパ中距離路線のスター、カランダガンだ。

フランスのフランシス=アンリ・グラファール調教師は今シーズン、目覚ましい活躍を見せているトレーナーのひとりであり、その集大成として、この4歳セン馬カランダガンでさらに上の成績を残そうとしている。

カランダガンは今季すでにG1を3勝しており、前走のアスコット競馬場でのG1・チャンピオンSでは、自己ベストとも言えるパフォーマンスでハイレベルなメンバーをねじ伏せた。その勢いのまま、日本の頂上決戦に乗り込んでくる。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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