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クリス・ウォーラーは、レースに比類ない頭数を送り込む巨大厩舎の舵を取り、勝ち星を量産し続ける調教師だ。

「システムトレーナー」と評されることが多いが、その評価は、馬の扱いの巧みさ、革新性、勝負勘、細部への徹底、さらに競馬への愛情の上に成り立っている。

ウォーラーといえば、まず挙がるのはウィンクスだ。ウィンクスの名声はもはや競馬の枠を超えており、この先ウォーラーが何を成し遂げようとも、「ウィンクスの調教師」という肩書きで呼ばれ続けるだろう。

スタイル面では一貫して「待つ」姿勢を貫き、2歳戦のタイトルを犠牲にしてでも、長期の準備過程を通じて、長く走れる強い馬を作る方針だ。キャリア初期には、転厩してきた古馬の立て直しに秀で、一見すると平凡そうなヨーロッパからの移籍馬を覚醒させる調教師の先駆けとなった。

殿堂入り級の経歴に欠点を見つけるのは難しいが、つい最近まで批評家は、2歳馬での実績不足、海外G1未勝利、メルボルンカップ未勝利を指摘していた。だが、ウォーラーは18か月の間に、それらをすべて達成して見せた。

2021年、ベリーエレガントがメルボルンカップを制して突破口を開き、2022年にはネイチャーストリップがロイヤルアスコットのキングズスタンドSで圧勝。2023年にはシンゾーが2歳戦最高峰G1のゴールデンスリッパーを制し、最後の関門もクリアした。

Chris Waller horse trainer

ウォーラーはしばしば、T・J・スミス調教師と比較される。豪州の貧しい地方で育ったスミスは非情さと成功への執念を身につけ、シドニーの調教師タイトルを33年連続で勝ち取った。

2024年時点で、ウォーラーは13年連続でその座にある。ニュージーランド、ヒマタンギ近郊の小さな酪農場で育った彼の生い立ちはスミスほど神話化されていないが、家柄の後ろ盾や資金なしに階段を駆け上がった軌跡は、やはり目覚ましい。

ウォーラーの競馬界での出発点はニュージーランドのフォックストン、パディ・バスティン厩舎での仕事だった。当時はアシスタントトレーナーと遠征主任を兼任していた。

2000年、ローズヒルで管理頭数わずか4頭で厩舎を開業した。2010/11年シーズンにはシドニーのリーディングを初獲得。翌年、T・J・スミス師が37年間保持していたシーズン最多勝記録(156勝)を破り、167.5勝(同着は0.5勝換算)を挙げた。

Chris Waller horse trainer

ウィンクス、この馬の多くの人が名は耳にしたことがあるかもしれない。

ウィンクスがどれほど強かったのかを言葉で精一杯説明しようとするより、記録を並べた方がよっぽど早い。ウィンクスは33連勝、G1を25勝し、賞金は2,600万豪ドル超(約26億円)を獲得、オーストラリア競馬の歴代賞金王に上り詰めた。

ウォーラーのスタイルを象徴し、そしておそらく他の誰にとっても打ち破るのが最も難しいであろう「個人」の記録は、2017/18年のメトロ開催での189勝だ。その勝利数は、次点のジェームズ・カミングス調教師に95勝という大差を付けての首位だった。

そして、ウィンクスをほぼ4年間に及ぶ33連勝へと導いた、ウォーラーのケアと細部への注意は驚くべき調教成果だ。

競馬では多くのことが上手くいかなくなり得る。ウォーラーはスーパースターをお膳立てしてきたが、彼の代名詞であるケア、忍耐、細部への徹底は、ウィンクスを毎回「勝つ準備ができた」状態で送り出し、そして連勝継続のまま引退を実現させた。

ジェームズ・マクドナルド騎手
「クリスは優れた競馬的思考と卓越した先見性を持っています。馬の使い分けが極めて巧みで、独特の勘所があるんです」

「私は何度かそれに疑問を抱き、痛い目に遭ってきました。彼が馬の狙いをあるレースに定めるのを見て『本当にそれでいいのか?』と思うことがあるんです。ところが結果は彼の読みどおりで、その馬はほとんど毎回のように勝ってしまうんです」

Chris Waller horse trainer

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