日本ダービー馬のクロワデュノールが今週、栗東トレセンに帰厩。日本馬に立ちはだかるG1・凱旋門賞(2400m)の壁、競馬界で最も有名な “魔のジンクス” を打ち破るべく、パリへの挑戦をスタートさせた。
今年のパリロンシャン競馬場には4頭の日本馬が遠征する予定となっており、6月1日のG1・日本ダービー(2400m)を制したクロワデュノールもその一頭だ。昨年12着のシンエンペラーも再挑戦の意向を示しているほか、G1・天皇賞春で2着のビザンチンドリームも出走を目指している。
また、3歳馬のアロヒアリイは、8月16日にドーヴィル競馬場で行われるG2・ギヨームドルナーノ賞(2000m)に出走予定。ここをステップに、凱旋門賞への転戦を予定している。
「クロワデュノールはダービーの後、ノーザンファームしがらきへと放牧に出ていました」と斉藤崇史調教師はIdol Horseに語る。
「徐々に調教のペースも上げており、凱旋門賞に向けた準備として栗東に戻ってくる予定です。今のコンディションを考えると、凱旋門賞には自信を持って臨めると思います」
「フランスには1着を目指して連れて行くつもりです。ここ最近は馬もどんどん良くなっていますし、凱旋門賞を勝つにはそういう成長が必要だと思います。競走馬としては完成形に近付きつつありますが、まだまだ成長できる余地も残されていると考えています。この馬の素質を考えたら、いずれイクイノックスのような日本の競馬界を代表する一頭に育ってほしいなと個人的には思っています」
「トレセンはまだ暑いので、フランスに向けてじっくりと体調を整えていく予定です」
クロワデュノールは今回、これまでの日本馬とは異なるローテーションで凱旋門賞に臨む。前哨戦に選んだG3・プランスドランジュ賞(2000m)は、1994年以降は3歳限定戦だったが、今年から再び古馬にも門戸が開かれる。また、これまでは凱旋門賞の1週間前に組まれていたが、今回の変更で9月14日へと移動になっている。
もっとも、10月5日の本番までに中3週の間隔を空けることができる点は、あくまで二の次。2000m戦を使って一叩きすることで、“大目標” に向けてクロワデュノールの状態を上げることが狙いだという。
「ロンシャンで一度走らせたいと考えていましたが、2400mの距離を本番前に使うのはどうかなと。6月以来のレースでいきなり2400mを使うのはタフすぎるので、2000mの前哨戦でスタートできるのは理想的でした。今年はたまたま、そのレースが思惑通りの条件だったということです」

42歳の斉藤崇史調教師は、今の日本競馬を代表する若手調教師の一人だ。同世代には安田翔伍師、中内田充正師、杉山晴紀師、田中博康師など、40代でG1トレーナーの仲間入りを果たした若手調教師が名を連ねる。
「クロワデュノールでダービーを勝てたときは嬉しかったですが、まずはホッとした、安心したという気持ちが大きかったです。昨年、同い年の安田翔伍調教師がダノンデサイルでダービーを勝って、先を越されたという思いは少しありました。ダービーを勝って追いつけたので、次は先に凱旋門賞を勝ちたいですね」
「私が中学生時代にダービーを初めて見たとき、勝ち馬はフサイチコンコルドでした。ゼッケンもクロワデュノールのときと同じ13番だったんです。レース前に流れる歴代優勝馬の映像を見た際、そのことをふと思い出しました。将来、クロワデュノールの映像もその中に加わるかと思うと、本当に嬉しくなりますね」
齋藤師にとって、凱旋門賞は2021年のクロノジェネシスに続く2頭目の管理馬となる。雨が降る重馬場となった初挑戦は7着、トルカータータッソに後塵を拝した。クロノジェネシスの主戦を務めた北村友一騎手は、当時は負傷で凱旋門賞に騎乗できなかったが、クロワデュノールでも主戦を務めており、今回が同レース初騎乗となる。
凱旋門賞の栄冠を初めて日本に持ち帰ることができたら、そんな光景を夢見るのは斎藤師も同じだ。
「勝てば日本馬で初の偉業ですし、本当に凄いことだなと思います。これまで何頭もチャレンジしてきましたが、様々な条件に阻まれて手が届いていませんし、なによりヨーロッパの馬は手強いです。あと一歩の惜しいレースは何回かありましたので、今年は運が向いて欲しいなと思っています」
「勝つイメージを持って臨みたいと思います。全力を尽くします」
クロワデュノールは今月下旬、パリに向けて出発する予定となっている。