田中博康厩舎の3歳馬、アロヒアリイは来月、フランスのドーヴィル競馬場で行われるG2・ギヨームドルナーノ賞(2000m)に参戦する。英2000ギニー馬のルーリングコートを筆頭に、欧州でも世代屈指の3歳馬が集まる一戦だが、陣営としても覚悟と対策は万全だ。
アロヒアリイの陣営が思い描くプランは、8月16日の同レースを勝って、10月に行われるG1・凱旋門賞(2400m)への足掛かりとするローテーション。どちらも長い歴史を誇るレースだが、同一年制覇は2023年のエースインパクトが唯一となっている。
ライバル候補としては、ルーリングコートのほか、仏ダービー2着馬のクオリフィカーや、Future Idolsでも特集したオペラバロの参戦が見込まれている。これらの3頭はいずれもゴドルフィンの所有馬だ。
また、仏ダービー3着の実績があるディテイン、G1・パリ大賞で2着のトリニティカレッジ、G1好走歴ありのラシャバー、無敗でG2を制したダリズも次走として視野に入れており、まさに大混戦が予想されている。
「アロヒアリイの能力は、日本での着順以上に良いものを持っていると思います」と田中博康調教師。北海道で開催されたJRHAセレクトセールの会場にて、Idol Horseの取材に応じてくれた。
「現地の芝への馬場適性も見込んでの遠征なので、向こうでの走りも楽しみにしています。ジョッキーはクリストフ・ルメール騎手が騎乗予定です。凱旋門賞には余程のことがない限り、行く予定となっています」
「凱旋門賞挑戦はオーナーと私の夢でもあったので、セレクトセールでの馬選びから凱旋門賞を視野に入れていました。血統的にも、母父オルフェーヴルという点が魅力的ですし、(凱旋門賞への参戦は)常に頭の中にありました」

アロヒアリイは若くして急逝したドゥラメンテの最終世代として生まれ、2022年のセレクトセール当歳馬セッションにて、オーナーの鈴木剛史氏が6600万円で落札した。
これまでの4戦は、すべて2000mの距離でのレース。11月の府中での2歳新馬戦をデビュー勝ちし、年明けの1勝クラスで2着、3月の中山でのG2・弥生賞ではファウストラーゼンに次ぐ3着と健闘し、4月のG1・皐月賞ではミュージアムマイルの8着に入った。
「美浦トレセンの方に最近入厩しまして、体調の方は問題なく、順調に調整できています。出国は7月28日を予定しておりまして、フランスではシャンティイの小林智厩舎に滞在予定となっています」

田中博康師は2018年の厩舎開業以来、アメリカ、香港、ドバイ、サウジアラビア、そしてオーストラリアと積極的に海外遠征を行ってきた。しかし、ヨーロッパへの遠征は今回のアロヒアリイが初めてとなる。
しかし、フランスは騎手時代に滞在した地でもあり、田中師自身にとっては馴染み深い国だ。長期滞在となった2011年には、現地の小林智調教師が管理するエイプリルラヴソングに騎乗し、フォンテーヌブロー競馬場で勝利を挙げている。また、同年にはモンス競馬場で勝利し、JRA騎手としては史上初のベルギーでの勝利を挙げている。
「私自身、ジョッキー時代からフランスに滞在して勉強していたので、その経験を今回の遠征でも活かせればと考えています。調教師として管理馬を送り込むのは初めてですが、2011年から毎年のようにフランスに通っているので、いよいよ挑戦できる機会が来たかと楽しみにしています」
また、アロヒアリイが出走する週末には、他にも日本馬がドーヴィル競馬場で出走する。G1・ヴィクトリアマイル勝ち馬のアスコリピチェーノ、そしてゴートゥファーストが、1600mのG1・ジャックルマロワ賞に参戦予定。前者は引き続き、クリストフ・ルメール騎手が手綱を取る。