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水曜日に大井競馬場で開催されるJPN1・帝王賞(ダート2000m)に出走する、高知競馬所属のシンメデージー。小さな競馬場を代表して出走する自慢の管理馬に対し、打越勇児調教師は大きな期待を寄せている。

帝王賞は、毎年6月末に東京の大井競馬場で行われる、中央交流Jpn1の一つ。年末の東京大賞典と同じく、地方と中央のダート路線の強豪が対決するグランプリとなっている。

しかし、2013年に船橋所属のフリオーソが勝利してから地方馬の勝利はない。昨年も高知からはヒロイックテイルとトランセンデンスの2頭が参戦したが、これまでも勝利に手が届いた馬はいない。

地方競馬からも最高峰の馬が集まる帝王賞だが、JRAや南関東以外からの参戦馬はシンメデージーのみ。父はG1級勝利数では日本最多のコパノリッキー、母にイズミコマンダーを持つこの4歳馬は、2023年の年末に高知でデビューすると、そのまま6連勝で兵庫の新設重賞、西日本クラシックの初代王者に輝いた。

西日本の3歳馬のトップに立った昨年、勢いもそのままに大井の交流競走、Jpn1・東京ダービーに挑戦。結果はラムジェットの4着であったが、地方馬としては最先着という結果を残した。

同年秋にもJpn1・ジャパンダートクラシックでフォーエバーヤングの5着に入るなど、2024年のダートクラシック戦線で存在感を示している。

その後も交流重賞を3戦し、勝ち星こそ挙げられていないが、2着2回・3着1回という抜群の安定感を見せている。前走のJpn2・名古屋グランプリは終始先行し、4コーナーで伸びる勝ち馬のサンライズジパングを猛追して2馬身差の2着だった。

放牧を挟んでリフレッシュした同馬について、打越は「調子は良いです。相手は相当強いですけど、また見せ場を作れれば」と期待を見せている。

もっとも、打越自身もこの馬がここまで強くなったということには驚きがあるという。

「小さいけどよく頑張ってる馬です。すごいなと思います。最初ここまで走るとは当然思ってなかったですから。今は馬がたくましくなったんですけど、それでもやっぱりそういう交流競走に行くと周りがもっとすごい馬体ですから」

「でも去年の春の時点ではプリフロの方が上だと思ってましたからね」

調教師がそう語るのは、シンメデージーの僚馬、アニマルキングダム産駒のプリフロオールインだ。シンメデージーとは同期の間柄で、2024年に史上5頭目の高知三冠を達成した。

「脚質も違う分、高知の馬場だと直線も短いので前に行くプリフロオールインの方が有利かなと。大井とか直線の長いところになると、後ろから行くシンメデージーだったってことですね」

SHIMME DAISY / Nishinippon Sansai Yushun // 2024 /// Kanazawa //// Photo by Kanazawa Keiba

地元・高知出身の打越は父・初男氏の厩舎で厩務員として勤務した後、2012年に開業。これまでに通算2230勝を挙げ、昨年には5回目のNAR最優秀勝利回数調教師賞と、初となる最優秀勝率調教師賞を受賞している。

「正直最初は調教師になろうとは思っていませんでした。でも馬の扱い、馬を優先することは父から学びましたし、だんだんリーディングを取りたいという思いも出てきました」

所属馬は40頭。10数名のスタッフを擁し厩舎は高知でも最大規模を誇る。中でも所属の宮川実騎手に寄せる信頼は厚い。宮川は2009年に落馬事故で左目を失明する大怪我を負うも、今なお高知のトップジョッキーの一人として活躍している。

打越は「やっぱり尊敬しますね、ずっと一緒にやってきたので」と語る。

「どうしても戦績やリーディングだとかオーナーとの絡みで、彼にもつらい思いをいっぱいさせてきたと思うんですけど、情だけに走るわけにいかないのでね。だから彼に対する思いは強いです。彼がいるから今の自分があるのは間違いないです」

さらに打越は今後の高知競馬と自身の展望について聞かれると、少し考えて『騎手を育てること』だと語った。

「高知競馬自体も良い意味で成長していってほしいんですけど、心配なのはやっぱり今リーディング上位が結構年取っているところですね。いろんなジョッキーが辞めていくので、これからの若手のジョッキーがまた全国区になれるといいなと」

「岡村(卓弥)くんだとか多田羅(誠也)、岡(遼太郎)とかが全国のリーディングになってほしいですね。やっぱりジョッキーがいないことには話にならないので」

「うちにも井上(瑛太)いますからね、期待してますよね」

にこやかに笑みを浮かべる打越だが、直近の目標に懸ける想いは強い。少しでも良い結果、貪欲に上を求める姿勢。それはどんな舞台でも変わらない。

「でもまずは水曜日、ちょっとでも良い結果を出したいと思います」

上保周平、Idol Horseのジャーナリスト。日本、海外問わず競馬に情熱を注いでいる。これまでにシンガポール、香港、そして日本の競馬場を訪れた経験を持っている。

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