香港ジョッキークラブ(HKJC)のCEO、ウィンフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は、最近の通商政策の変化が馬主に及ぼす影響について懸念を示し、長期的な信頼感への「大きな問題」となる可能性があると警告した。
HKJCの所有者抽選が「順調な滑り出し」とともに締め切られた数日後、同氏はIdol Horseの取材に対し、米国による関税措置の影響など、地政学的要因が香港のみならず世界全体の競走馬オーナーの未来に重大な影響を及ぼす可能性があると語った。
「世界は変わりました。過去90年から100年にわたって存在していた自由貿易の原則が失われてしまったのです」とブレスゲス氏は語る。
「この先どう展開していくのかを見極める必要がありますが、当面の間は不確実な状況が続くでしょうし、それが簡単に解決するとは思っていません。だからこそ、私たちは慎重に構え、様々な課題に備える必要があります」
月曜日に締め切られた今回の抽選では、6月に460件の所有許可証の交付が予定されている。その内訳は、海外で出走歴のある馬向けのプライベート・パーチェス(PP)許可証が120件、未出走馬向けのプライベート・パーチェス・グリフィン(PPG)許可証が340件となる。
香港では、競走馬の購入にはまず所有許可証の取得が必要とされている。
申請数は782件と前年比11%超の増加となり、ブレスゲス氏は「順調な数字」と評したが、その一方で、経済の不透明感が強まる中では、初期段階の活発な動きが必ずしも投資に結びつくとは限らないと慎重な姿勢も崩していない。
「基本的な支持はしっかりとしています。しかし率直に申し上げて、この状況が競走馬所有への信頼に大きな影響を与えるのではないかと非常に懸念しています」と同氏は語った。
「抽選の結果がどうなるかは見守る必要がありますし、これまでのところ良い傾向ではありますが、とはいえまだ申請書を提出したというだけの話です」
同氏の慎重な見方は、最近の1歳馬セール、特にイングリス・イースターセールなどで、香港の購買勢が見せた力強い動きの直後に出されたものでもある。
とりわけ、エージェントのサム・ライト氏とダグラス・ホワイト調教師が、ズースターの産駒を170万豪ドルで落札した取引は、その存在感を強く印象づけるものとなった。

一方、地元香港の関係者は最近、有望なオーストラリア産の競走馬、シャンワーを手に入れた。同馬はオーストラリアンダービーで3着に入り、来年の香港ダービー出走を視野に入れて香港でのキャリアを開始する予定だ。
このように、香港拠点のオーナーたちが近年のセールで財力を示しているものの、ブレスゲス氏は慎重な姿勢を崩しておらず、世界的な貿易の混乱や消費者信頼感の低下が、今後大きな影響を及ぼす可能性があると警戒している。
「これは非常に大きな懸念材料です。今後1ヶ月の動向を非常に慎重に見極めなければなりません。というのも、それらが可処分所得や消費者信頼感に直接的な影響を与える可能性があるからです」
状況は今後数ヶ月でより明らかになるだろう。特に注目されるのは、6月に交付される480件の所有許可証のうち、実際にどれだけが取得されるのか、そして例年有望なPP(出走歴のある移籍馬)の確保が進むこの時期に、オーナーたちの購買意欲がどれほど活発に動くかという点である。