Aa Aa Aa

ヒュー・ボウマン騎手と言えば『ウィンクスの騎手』が代名詞かもしれないが、それだけでは語れない存在だ。

その真似できない騎乗技術、プロフェッショナル精神、そして多才さは、日本や香港での結果にも表れている。ボウマン自身が歴代最高レベルの騎手にも関わらず、今はウィンクスとのコンビで有名になっている。それは、ウィンクスが並外れた馬であることの証拠でもあるだろう。

ボウマンの冷静な態度、昔ながらの礼節、田舎風の親しみやすさは、「紳士」そのものだ。まるで、別の時代から来たかのような雰囲気を持っている。その騎乗技術もまた、クラシカルな特徴を持っている。

現代の騎手の多くは「つま先だけを鐙に乗せる」という騎乗スタイルで乗っているが、ボウマンは足で完全に鐙を踏むスタイルの乗り方を採用している。オーストラリアのトップ騎手の中で、これを採用している騎手は数が限られる。

もちろん、このスタイルはボウマンが最後というわけではない。ボウマンが採用するこのスタイルは、姿勢が安定し、手綱を短く持ちながらも力強く追える利点を持っている。そして、頭の位置がブレず、前を見続けられる点も重要だ。これは10代の頃に牛を追ったり、馬術をする際に学んだ経験で、周囲の状況把握に役立つ。

彼は右利きだが、シドニーで見習い騎手として指導を受けている際に、左手で鞭を使うことを学んだ。シャティンやハッピーバレーのような右回りの小回りコースへの対応力は、この時に培われた。

そして、彼の乱れたペースの中でも冷静さを保ち、周りに流されない天性の冷静さを持っている。大混乱に巻き込まれず、落ち着いた騎乗ができるのも彼のトレードマークだ。

Jockey Hugh Bowman

オーストラリアのニューサウスウェールズ州、ダニドゥー(Dunedoo)という田舎の小さな街で彼は生まれた。農家であるジム・ボウマンとマンディ・ボウマン夫妻の息子として生まれ、家族経営の牧場であるメロセリーなどで育った。

2019年のインタビューで、父のジムは息子について「ヒューに教えられる最も大事なスキルは馬に乗る技術だった」と語り、ヒュー自身もこう語っている。

「父から影響を受けました。父は馬術に熱心で、乗馬の才能がありました」

ボウマンの洞察力と勝負勘は、農場で牛追いをしているうちに磨かれたという。

「牛を集める作業は子供の頃からやっていました。この作業は牛がどこに行くか、何をするかを予測しながら動く必要があります。それを通じて、洞察力が養われていきました。騎手の仕事でも役に立っています」

ボウマンの父、祖父、大叔父は皆アマチュア騎手として活動していた。彼自身も騎手になる前、ポニーに乗って乗馬をしたり、ホースショーの馬術競技に出場したり、ポロクロスを嗜んだり、馬に親しむ幼少期を送ってきた。

そして、見習い騎手としてプロデビューする前からアマチュア騎手として活動しており、ピクニックレース(アマチュア騎手限定戦)で騎乗していた。

見習い騎手時代は、まずビリー・アスプロス騎手の妻として知られるレアン・アスプロス調教師の厩舎に所属していた。デビューシーズンでは、ニューサウスウェールズ州中央地区の見習い騎手チャンピオンを獲得している。

1999年、シドニーのロン・クイントン厩舎に拠点を移した。師匠のクイントン調教師自身もダニドゥーで育った同郷の人物で、騎手時代はシドニーで5度のリーディングに輝いた経験を持つ。そして、何人もの名騎手を育てたテオ・グリーン氏の弟子でもあった。

1999/2000シーズン、ボウマンはシドニーの見習い騎手チャンピオンを獲得した。 

Jockey Hugh Bowman

これに関してはウィンクスだと断言できる。ウィンクスの37勝のうち32勝はこのコンビで挙げており、敗れたのはたったの1回だ。33連勝のうち、29勝はボウマンが手綱を取っている。

この質問に関してはウィンクスが圧倒的すぎるため、『ウィンクス以外』の条件を足した方が良いかもしれない。この場合、ワーザーとのコンビが有名だ。香港ダービーの他、香港のG1を3勝している。また、2018年のG1・宝塚記念では惜しい2着に入っている。

ボウマンは来日経験が豊富というわけではないが、2017年にはG1・ジャパンカップをシュヴァルグランで制している。

Jockey Hugh Bowman and Winx

彼のライバルと言えばナッシュ・ローウィラー騎手だが、直接対決は現在保留中だ。現在のボウマンは香港を拠点としており、ローウィラーはシドニーに戻っている。しかし、全盛期の対決は見応えがあった。

ボウマンもローウィラーも騎手の身長・体重としては『ヘビー級』であり、二人の対決もさながらヘビー級の殴り合いだった。2007/08から2012/13の5シーズン、シドニーのリーディングは彼らが独占していた。

ローウィラーは2009/10、2010/11、2012/13の3回。ボウマンは2008/09、2011/12の2回、それぞれリーディング騎手を獲得した。判定は3-2でローウィラーの勝利だったと言えるだろう。

ボウマンはその後、2014/15と2016/17の2シーズンでリーディング騎手に輝き、シドニーのリーディングは計4回獲得している。

Nash Rawiller and Hugh Bowman

2017年、ボウマンは世界のトップレース100のうち、10勝を挙げる驚異的な活躍を見せた。この年、ワールドベストジョッキーを受賞している。

そしてこの年には、シドニーのリーディング騎手に輝いている。シーズン終了3ヶ月前の段階でブレントン・アヴドゥラ騎手に15勝差をつけられていたが、見事逆転して4度目のタイトルを受賞した。

それまでは2008/09シーズン、2011/12シーズン、2014/15シーズンでリーディングを獲得していた。

Jockey Hugh Bowman

世界のスタージョッキーたち

すべて表示

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録