Aa Aa Aa

今年のシャティン競馬場で行われる香港チャンピオンズデーは、4月開催として史上最高の顔ぶれかもしれない。

そう聞いても、いつもの大げさな宣伝文句だと片づけない方がいい。今回は誇張ではなく、そう言えるだけの陣容がそろっている。

無敵のカーインライジング、衰えを知らない王者のロマンチックウォリアー、天皇賞秋を制したマスカレードボール、有馬記念馬のミュージアムマイル、さらに日本のトップマイラーであるジャンタルマンタル、そして国内短距離王のサトノレーヴ。

そうした名前が並ぶだけで、開催全体の格と高揚感は一段と増す。

しかも、それだけではない。カーインライジングが本拠地のシャティン競馬場・1200mで18戦18勝という圧倒的な実績を持つ以上、香港の絶対王者に挑むこと自体を避けたくなる陣営も多いだろう。だが、前走でG1・アルクオーツスプリントを制したネイティブアプローチの関係者は、あえてその大一番に挑もうとしている。

ネイティブアプローチのトレーナー、アフマド・ビン・ハルマシュ調教師は「挑戦であることはもちろんです」とIdol Horseにコメントする。

「ただ、ネイティブアプローチがそうであるように、いい馬なら試してみる価値はあります。この馬のことはよく分かっています。距離を短くしてから2戦し、スーパーサタデーとドバイワールドカップデーで勝ちました。だからこそ今は、この馬がどのレベルにあるのかを見てみたいのです」

5歳馬のネイティブアプローチは、かつてゴドルフィンの所有馬として走り、現在はハムダン・ハルマシュ氏の勝負服で走っている。かつては7ハロンからマイルでまずまずの実力を見せていた。行きたがる面はあったが、上位のハンデ戦やリステッドでは通用していた。ただ、G2やG3では少し足りなかった。

だが、今年2月下旬に変化が起きた。1200mへ距離を縮めると、このスピード勝負が馬に合い、一気に一流スプリンターとして才能開花。単勝オッズ51倍でG3・ナドアルシバターフスプリントを制し、さらに単勝オッズ29倍でアルクオーツスプリントまで勝ち切ってみせた。

初めて香港に遠征するコナー・ビーズリー騎手は「この馬はかなり力のある馬です」と話す。

「ただ、朝は気持ちが入りすぎて、自分で難しくしてしまうところがあるんです。すごく前向きなんです。シーズン序盤に一度追い切りで乗った時、私はボスに『かなりスピードがありそうですね』と伝えました」

「でも、それまでと同じ路線で使っていたので、自分でレースを苦しくしていました。マイルや7ハロンでは前半に行きたがりすぎて、最後の勝負どころまで脚が持たなかったんです」

「だから距離を短縮したのは正解でした。ここ2走は、前で運ぶか先手を取ろうとするような本格派のスプリンターたちが相手でしたが、彼らにはこの馬を引き離すだけの脚がありませんでした」

ビン・ハルマシュ師は、ネイティブアプローチには落ち着くための流れが必要だという点からも、シャティンの競馬は合うかもしれないと見ている。

「香港ではかなり流れると思います」と調教師は話す。「それも遠征を決めた理由の一つです。あちらはペースが速くなりそうですから」

「アルクオーツスプリントでは速い流れにならず、馬にはあまり助けになりませんでした。誰も前へ行かなかったので自分が先頭に立ち、自分でペースを作る形になりました。それでも、横に馬が来るとまたハミを取って伸びてくれた」

「だから香港はとても合う可能性があると考えています。この馬は流れてこそ折り合えるし、切れ味もあります」

CONNOR BEASLEY, NATIVE APPROACH / G1 Al Quoz Sprint // Meydan /// 2026 //// Photo by Dubai Racing Club

もっとも、カーインライジングもまた切れ味があり、速い流れでも楽に運べ、しかも地の利もある。それでもネイティブアプローチ陣営は、この騸馬が夏季休養のためドバイへ戻る前に、世界の頂点とどれほど差があるのかを知りたいと考えている。

ビーズリーは「相手は実質的に世界最強スプリンターです」と語った。「それでも、あえて挑みに行く以上、ボスは何らかの勝算を感じているのでしょう。でなければ遠征などしないはずです」

「こちらも勝負に出るしかありません。だから自信を持って行きますし、そうでなければいけません。みんな楽しみにしていますし、自分たちの力をきちんと示せればと思っています」

ビン・ハルマシュ師とビーズリーは、G1・ドバイターフでオンブズマンの3着に入った7歳馬のアンドレアスヴェサリウスとともに、G1・クイーンエリザベス2世カップにも挑む。こちらも後方一気型で、やはり速い流れを求めるタイプだ。

ビン・ハルマシュ師はアンドレアスヴェサリウスの成長ぶりについて、「レーティング82だった馬がG1で戦えるところまで成長してくれたのですから、素晴らしいことです」と手応えを見せる。

「しかも今回が2000メートルへの初めての距離延長だということを忘れてはいけません。ジョッキーは、もっと距離があってもいいと言っています。馬群の間を進んでいける馬ですし、切れ味もあります」

水曜の夜、西村淳也騎手には栗東へ戻る最終電車の時間が迫っていた。そのせいと言うべきか、地方競馬の今年最初の大一番、Jpn1・川崎記念でもゲートを出ると急いで先頭を奪った。

結果、その判断は功を奏した。松永幹夫厩舎のカゼノランナーで主導権を握った西村は、絶妙なペース配分を見せた。4角でドゥラエレーデにプレッシャーを受けるまではほぼ楽な形で運び、直線でも馬と騎手はしっかり呼吸を合わせたまま、最後は2馬身差の快勝を収めた。

これでカゼノランナーは13戦7勝。しかも今回がこのクラス初挑戦だったにもかかわらず、Jpn3・佐賀記念に続く3連勝となった。

西村は「カゼノランナーの能力を信じていましたし、振り切れると思っていました。まだまだ強くなってくれると思いますし、強くなってほしいですね」と語った。

騎手時代に中山記念を2勝した松永幹夫調教師は、ラッキーライラックを管理したことでよく知られる。その調教師が今、カゼノランナーとともに日本の主要なダート戦線、さらにはその先まで視野に入れ始めている。

「強かったなと思いました」と松永幹夫調教師は振り返る。「今までとは走ってきた相手が違ったので、どこまでやれるかなと(レース前は)思っていました」

「まだレース終わったばかりで何とも言えませんけど、今年は充実した強いところにどんどんチャレンジしていきたいなと思います」

「正直なところ、調教のVTRを見ても決して強いな、走るなという感じには見えないんですけど、実戦に行ってすごく力を発揮してくれる馬だなと思いますね」

「トントン拍子にG1馬になったのですが、本当に今後が楽しみな馬なので引き続き応援よろしくお願い致します」

ドゥラエレーデは終始2番手を進み、そのまま2着。前走G1・東京大賞典でも3着だったアウトレンジも同じく3着を確保し、5番手追走のディクテオンもそのまま5着で終えた。

昨年の東京大賞典とコリアカップを制したディクテオンは、本来予定していたドバイワールドカップ遠征を断念してここへ回ってきたが、終始リズムが悪く、大きく敗れた。

ドゥラエレーデは2歳時にG1・ホープフルステークスを制したが、その後は勝利がない。ただ前走後に地方競馬へ移籍、藤田輝信厩舎への転厩後の初戦でもあった。

1979年4月7日、北米のチャンピオンジョッキーだったスティーブ・コーゼン騎手は、ソールズベリー競馬場でマーキーユニバーサルに騎乗し、イギリス初勝利を挙げた。

その前年、コーゼンはアファームドでアメリカ三冠を制し、史上最年少の三冠ジョッキーとなっていた。その後、大西洋を渡って本格的に英国へ拠点を移し、1980年代に英リーディングを3度獲得。エプソムダービーも2勝することになる。

伝説的な名馬であるサイテーションは、1945年4月11日にカルメットファームで誕生した。だが、そのちょうど3年と1日後、思わぬ敗戦を喫する。1948年4月12日、サイテーションは7連勝でチェサピークトライアルに臨んだが、サギーに敗れた。

しかしその後は、その年のアメリカ三冠を含む16連勝を達成した。

先週末のロイヤルランドウィック競馬場で行われたドンカスターマイル。アダム・ペンギリー記者は現地取材を行い、勝ち馬となったシーザアリバイのシンデレラストーリーを深掘りした。

馬主である牧畜業者のフレッド・ノフケ氏は、人口349人の小さな町、クイーンズランド州のグーヴィゲン近郊から来た人物だ。

週刊連載コラム『Idol Thoughts』で、シェーン・ダイ氏は「この時代、強い牝馬は強い牡馬を上回る」という鋭い持論を展開している。なぜ近年のオーストラリア競馬では、スーパースターが牝馬に偏るのか。その理由を掘り下げ、いまこそ見直しが必要だと訴えている。

ジョアン・モレイラ騎手は7月中旬までの短期騎乗のため香港に戻ってきた。そこで今回は、2013年にあった一つの分岐点を振り返りたい。

デイヴィッド・モーガン記者が記したように、あの時、その選択次第では、ブラジルの名手のキャリアは香港競馬とはまったく違う方向へ進んでいたかもしれない。

今週はG1・桜花賞。日本のクラシック初戦であり、有力馬のスターアニスには松山弘平騎手が騎乗する。昨年末の記事では、マイケル・コックス記者と上保周平記者が、松山の騎乗哲学と、確かに一歩づつ進んでいる“控えめな”成功談をお届けした。

ジョアン・モレイラ騎手が水曜夜のハッピーバレーでこの日2勝目を挙げると、ファンから祝福を受けた。

3か月の短期免許で香港に戻って最初の開催で、最終的には4勝をマーク。その勝ち星はいずれもキャスパー・ファウンズ厩舎の管理馬によるもので、同厩舎はモレイラを主戦に据え、自身のリーディングトレーナー争いを加速させようとしている。

モレイラは2013年の香港移籍後、2022年後半に退くまでに4度のリーディングジョッキーを獲得した。去る際には、股関節の変性による痛みにも悩まされていた。

その後は治療を受けながら、香港の大レースに合わせて何度か短期的に戻ってきたが、香港を拠点に腰を据えて滞在するのは、あの離脱以来これが初めてとなる。

今週の『世界の注目馬リスト』で目を引いたのは、先週土曜のアケダクト競馬場で走ったオールウェイズアランナーだ。

9ハロンのG3・ガゼルステークスに臨んだこの日まで、キャリアは2月上旬のタンパベイで挙げた未勝利戦1勝のみ。それでもチャド・ブラウン厩舎の3歳牝馬は、すでに重賞・リステッドでの実績を持つ経験豊富な相手たちに混じって走った。

オールウェイズアランナーは内ラチ沿いで2列目、8頭立てのダート戦で5番手を追走。逃げるパシュミナからは4馬身近く離れていた。だが4角で進路が開くと、ディラン・デイヴィス騎手が進出を促し、馬はスムーズに加速。先頭馬の外へ持ち出され、勝負どころで先頭に迫った。

もっとも、ガンランナー産駒のこの牝馬は、経験の浅さも見せた。デイヴィスがパシュミナをかわしにかかると、馬はまだレースを理解し切れていないような走りを見せたのだ。相手は前走サンランドオークスで、G1・デビュタントステークス勝ち馬のボトルオブルージュを相手に3着に入っていた牝馬でもある。

オールウェイズアランナーは耳を立て、ややバランスを崩しながらも、直線で体勢が整うと差を詰め始めた。しかし、パシュミナがもうひと踏ん張りを見せた時点では、いったん敗れたようにも映った。

それでも残り1ハロンで手前を替えると、一気に加速して、苦しくなった先頭馬を差し切った。しかもゴール前では再び手前を替えていた。全体に幼さが残り、まだ競馬を覚え切っていない印象がある。昨年のキーンランド・セプテンバーセールにて105万ドルで落札されたこの勝ち馬には、まだ上積みがありそうだ。

クイーンエリザベスステークスデー
ランドウィック(オーストラリア)、4月11日

オータムグローはオーストラリア競馬の新たなスター牝馬だ。

前走G1・ジョージライダーステークスを楽な手応えで快勝したオータムグローは、2000mのG1・クイーンエリザベスステークスで12連勝を狙う。迎え撃つのはわずか7頭で、同厩舎のアエリアナ、リンダーマン、ウートンヴェルニも名を連ねる。

英国からの遠征馬ドバイオナーは2023年の勝ち馬で、昨年は2着。同馬は僚馬キャビアハイツとともに参戦予定で、さらにライトインファントリーマンとサーデリウスも顔をそろえる。

この日はほかにG1・シドニーカップ、G1・オーストラリアンオークス、そしてプライドオブジェニとトレジャーザモーメントが出走予定のG1・クイーンオブザターフステークスも行われる。なお、前回の『世界の注目馬リスト』に掲載されたサトノグローも、G2・パーシーサイクスステークスに出走予定だ。

オールエイジドステークスデー
ランドウィック(オーストラリア)、4月18日

ユーロン所有の2024年オールエイジドステークス勝ち馬、マジックタイムは、シドニーのオータムカーニバル開催が続く中、今年の1400メートルG1で現役最後のレースを迎える可能性がある。

相手には昨年覇者のジミーズスター、2023年覇者のギガキックが想定されており、両馬とも前週のG1・TJスミスステークスでは勝ち馬のジョリースターの後塵を拝した。また、G1・ブラックキャビアライトニングを制したテンティリスも登録がある。

香港チャンピオンズデー
シャティン(香港)、4月25日

今年の香港チャンピオンズデーは、香港のトップホースたちに強力な海外勢が挑む形となり、過去最高レベルの開催になる可能性がある。

カーインライジングはG1・チェアマンズスプリントプライズで20連勝を狙う。G1・チャンピオンズマイルには前年王者のヴォイッジバブルに加え、日本のトップマイラーであるジャンタルマンタルも参戦見込みだ。

とりわけG1・クイーンエリザベス2世カップは層が厚く、地元王者のロマンチックウォリアーが同レース4勝目を狙う一方、昨年のG1・ジャパンカップ2着馬で天皇賞秋の勝ち馬でもあるマスカレードボールらが立ちはだかる。

サウスオーストラリアンダービーデー
モーフェットヴィル(オーストラリア)、5月2日

サウスオーストラリアンダービーは1860年までさかのぼる長い歴史を持つ2500メートル戦だ。

もっとも、オーストラリアのG1の中では比較的地味な部類ではある。それでも南オーストラリア州の競馬界にとっては大きな一日だ。

近年の勝ち馬では、2020年ダービー馬のロシアンキャメロットが翌シーズンにG1・アンダーウッドステークスを制した。2009年勝ち馬のレベルレイダーは、それ以前にG1・ヴィクトリアダービーを勝っており、その後G1・スプリングステークスも制している。

英2000ギニーデー
ニューマーケット(イギリス)、5月2日

英2000ギニーはイギリスのクラシック初戦で、ニューマーケットの直線コース、ローリーマイルで行われる。

歴代勝ち馬には競馬史に残る名馬が並び、とりわけブリガディアジェラードとフランケルはその筆頭だ。今

年は前売り1番人気のボウエコーが、昨年のG2・ロイヤルロッジステークス勝ち馬として出走する可能性がある。これに加え、ジャドモントのパブリッシュ、そしてG1・デューハーストステークスの2着馬であるグスタードも有力候補に挙がっている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

デイヴィッド・モーガンの記事をすべて見る
Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

ワールド・レーシング・ウィークリーの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録