Aa Aa Aa

日曜日の早朝、チャーチルダウンズから届けられたケンタッキーダービー中継を見ていたオーストラリアの競馬ファンは、ある一頭の勝利に仰天したに違いない。G2・ツインスパイアーズターフスプリントを制したのは『シンクビッグ』という名のアメリカ馬だったのだ。

これは、例えるなら「セクレタリアト」という名前のオーストラリア馬がジ・エベレストを勝つようなもので、競馬ファンにとっては『冒涜』とすら感じられる出来事だった。

シンクビッグは1974年と1975年にメルボルンカップを連覇した名馬だバート・カミングス調教師の代表的なステイヤーであり、史上わずか5頭しかいない同レースの複数回優勝馬の一頭である。セクレタリアトほどの圧倒的な強さはなかったにせよ、オーストラリア競馬史におけるその功績は特別な意味を持つ。

しかし、そのシンクビッグの2連覇以降、この馬名は世界各地で少なくとも15頭も登録されている。うち2頭はオーストラリア産で、ひとつはデニス・イップ調教師のもと香港でクラス5を2勝した馬、もうひとつは北京で走っているという。他にもアメリカで4頭、インドとアイルランドでそれぞれ3頭、南アフリカで2頭、アルゼンチンで1頭がこの名を冠した。

オーストラリア時間の同じ夜、ニューマーケットで行われたG1・英1000ギニーでは『フライト』という名の馬が2着に入った。フライトはオーストラリア競馬の伝説的牝馬で、2度のコックスプレート制覇を含む1942年から1947年の輝かしい戦績で殿堂入りを果たしている。その名を冠するG1・フライトステークスが現在もランドウィック競馬場で行われている。

こうした事例は、国際競馬界で長年くすぶる『馬名の国際的保護』に関する議論を再燃させている。2年前、Idol Horseのデイヴィッド・モーガン記者が報じたのは、英国で『ビューティージェネレーション』という名の馬がケンプトンの未勝利戦に出走したという出来事だった。

この『ビューティージェネレーション』はその後16戦して2勝を挙げてはいるが、香港で年度代表馬にもなった同名の馬の実績には到底及ばない。

国際競馬統括機関連盟(IFHA)は毎年、保護対象となる馬名のリストを発表している。2024年末時点で、その数は3,263頭に達している。

1995年には約5,000の馬名が登録されたが、当時オーストラリアやニュージーランドはこの制度の締結国ではなく、主に欧米のクラシック勝ち馬や種牡馬として北半球で影響力を持った馬に限定されていた。

この状況が変わったのは1996年以降のこと。それ以降は、以下の11レースの勝ち馬には自動的に馬名保護が与えられている。凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、アイリッシュチャンピオンステークス、ブリーダーズカップクラシック、ブリーダーズカップターフ、カルロスペレグリーニ大賞、ブラジル大賞、ジャパンカップ、香港カップ(2005年以降)、ドバイワールドカップ(同)、そしてメルボルンカップである。

この制度により、セイントリー以降のすべてのメルボルンカップ勝ち馬の名前は保護されているが、1995年までの勝ち馬の名前で世界的に保護されているのはわずか8頭にすぎない。

グレンコー、シートアンカー、カーバイン、ファーラップ、ピーターパン、レインラヴァー、アットタラク、そしてヴィンテージクロップである。ただし、そのうちグレンコー、シートアンカー、ピーターパンの3頭については、メルボルンカップ優勝馬としてではなく、同名の他国の馬によって保護の理由となっている。

アメリカの競馬ファンにとっては驚きかもしれないが、すべてのケンタッキーダービー馬の名前が保護されているわけではない。1995年以前の大多数は利用不可とはいえ、1995年のサンダーガルチ以降、ソヴリンティまでの30頭の勝ち馬のうち、保護されているのはわずか7頭。シルバーチャーム、バーバロ、アニマルキングダム、カリフォルニアクローム、アメリカンファラオ、ジャスティファイ、オーセンティックだけである。

たとえば、1999年のケンタッキーダービーを制したカリズマティックの名は、それ以降、国外で9頭もの馬に使用されている。インドで2頭、南アフリカ、イギリス、フィリピン、アルゼンチン、チェコ、キプロス、オーストラリアでそれぞれ1頭ずつ確認されている。

香港では、アキードモフィード、タイムワープ、グロリアスフォーエバーといった香港カップ優勝馬の名が保護されている一方で、年度代表馬に選ばれたエイブルフレンド、ビューティージェネレーション、ヴィヴァパタカ、フェアリーキングプローンらは保護の対象外だ。

IFHAの加盟団体は、毎年3頭まで追加で馬名保護の申請を行うことができる。この制度に基づき、香港ジョッキークラブは2023年にゴールデンシックスティの名を保護対象として申請し、IFHAの理事会によって承認された。

また、15頭以上のG1勝ち馬を輩出した種牡馬、2頭のG1馬に加えてもう1頭のブラックタイプ勝ち馬を輩出した繁殖牝馬、さらにロンジン・ワールドベストレースホースを受賞した馬も保護対象に自動的に追加される。

先月、Hawk Eye Viewにて算出した『歴代賞金額トップ50』のうち、20頭はいまだ保護されていない。ゴールドシップ、ベラニポティナ、フォーエバーヤング、ネイチャーストリップ、パンサラッサといった名馬たちもその中に含まれる。

今こそ、IFHAが定めた指定11レースの勝ち馬すべてに、馬名保護の適用を拡大すべきではないだろうか。それは、ますますグローバル化が進む競馬界において、制度の整合性と名馬の尊厳を守るための次なる一歩となるに違いない。

Idol Horse reporter Andrew Hawkins

Hawk Eye View、Idol Horseの国際担当記者、アンドリュー・ホーキンスが世界の競馬を紹介する週刊コラム。Hawk Eye Viewは毎週金曜日、香港のザ・スタンダード紙で連載中。

Hawk Eye Viewの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録