2月23日、この日は『獲得賞金1000万ドルクラブ』の仲間入りを果たした馬が2頭も現れた。サウジカップを勝ったフォーエバーヤングと、その15時間後に地球の裏側で香港のG1を制したヴォイッジバブルだ。
獲得した賞金総額が1000万ドルを超えた馬はフォーエバーヤングが歴代で49頭目。僅かな時間の差で、ヴォイッジバブルが記念すべき50頭目となった。では、記念すべき1頭目は誰なのかというと、2000年のテイエムオペラオー。それからほぼ四半世紀、25年後に50頭目が現れた。
もっとも、競馬が世界規模のスポーツであることを踏まえると、『総賞金』のランキングには疑問や注意点がいくつも存在する。通貨や時期によって、算出方法が大きく異なるからだ。
では、このリストの基準は何なのか?
2000年以降、競馬の国際統括機関である国際競馬統括機関連盟(IFHA)は、国際格付け番組企画諮問委員会(IRPAC)と協力し、米ドルに対する各通貨の年間為替レート一覧を毎年発表している。通常、新年を迎えた時点での為替レートが年間の基準として採用されている。
高額賞金レースの多くは米ドル、あるいは米ドルに対して相場が固定されている通貨圏(サウジアラビア・リヤルや UAE ディルハム、香港ドルなど)で行われることが、米ドルに対して激しく変動する通貨圏で走った馬も多い。代表例が英国ポンド、ユーロ、日本円、オーストラリアドルだ。
そこで、馬がその年に稼いだ賞金を、その年の為替レートで米ドル換算して積算することで、いわば「実額」ベースでの獲得賞金額を算出した。インフレ率は加味せず、あくまで当時の米ドルベースでいくらの賞金を受け取ったのか、という指標である。
以下は 2025 年4月16日時点における、「実額」での獲得賞金額トップ 20 だ。
20. リスグラシュー
賞金総額 (USD) | $15,136,719 |
国 | 日本 |
調教師 | 矢作芳人 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2019) |
現役期間 | 2016-2019 |
出走国 | オーストラリア、香港、日本 |
リスグラシューは3歳時からG1戦線で活躍し、4歳で初めてG1を制したが、このリスト入りを決定づけたのは5歳シーズン後半での大活躍だった。
6月の宝塚記念と12月の有馬記念という日本の2大グランプリレースをいずれも圧勝で勝利。その合間に、オーストラリアの馬齢別重量戦の最高峰であるコックスプレートを日本馬として初制覇。今でもこのレースを制した唯一の日本馬である。

19. パンサラッサ
賞金総額 (USD) | $15,149,401 |
国 | 日本 |
調教師 | 矢作芳人 |
主な勝ち鞍 | G1 サウジカップ(リヤド・2023) |
現役期間 | 2019-2023 |
出走国 | 香港、日本、サウジアラビア、UAE |
パンサラッサは徹底した逃げスタイルで海外でも人気を博した。芝とダートの両方でG1を勝った数少ない馬の一頭であり、2022年ドバイターフをロードノースと同着、2023年サウジカップを逃げ切りで制した。
ただし、彼のベストレースのいくつかは敗戦の中にあり、特に2022年天皇賞(秋)では猛追するイクイノックスにゴール寸前で差し切られるも堂々たる逃走劇を演じて見せた。

18. ネイチャーストリップ
賞金総額 (USD) | $15,416,560 |
国 | オーストラリア |
調教師 | ロバート・スマードン、ロバート・ヒックモット、 ジョン・サドラー、ダレン・ウィアー、クリス・ウォーラー |
主な勝ち鞍 | ジ・エベレスト(ランドウィック・2021) |
現役期間 | 2017-2023 |
出走国 | オーストラリア、イギリス |
ネイチャーストリップは若駒時代、才能を示しながらも多くの課題を抱え、潜在能力を十分発揮できずに終わるかに思われた。しかし実戦を重ねるにつれて折り合いがつくようになり、ついには豪州スプリント界の頂点へと上り詰めた。
彼のキャリアは、豪州短距離路線の賞金バブルと重なり、特にその筆頭であるジ・エベレストでの安定した成績(2019年4着、2020年7着、2021年優勝、2022年4着)が総賞金を大きく押し上げた。さらに海外でも才能を示し、ロイヤルアスコットのG1レース、キングズスタンドSを制覇している。

17. フォーエバーヤング
賞金総額 (USD) | $15,555,610 |
国 | 日本 |
調教師 | 矢作芳人 |
主な勝ち鞍 | G1 サウジカップ(リヤド・2025) |
現役期間 | 2023- |
出走国 | 日本、サウジアラビア、UAE、アメリカ |
フォーエバーヤングはサウジカップ勝利でこのリスト入りを果たした。国内では東京大賞典やジャパンダートクラシックを勝っているが、海外での成功がなければランクインには遠く及ばなかっただろう。
参考までに、前走人気を集めるも敗れたドバイワールドカップをもし制していたのなら、このリストの3位に入っていた。2,000万ドルクラブの3頭目、しかもゴールデンシックスティに15万ドル差に迫っており、順位を現在の17位から大きく押し上げていたことになる。

16. ベラニポティナ
賞金総額 (USD) | $15,667,332 |
国 | オーストラリア |
調教師 | デヴィッド・ヘイズ、ベン・ヘイズ、トム・ダバーニグ、キアロン・マー、デヴィッド・ユースタス |
主な勝ち鞍 | G1 ジ・エベレスト(ランドウィック・2024) |
現役期間 | 2019-2024 |
出走国 | オーストラリア |
16位には引退を発表して間もないベラニポティナがランクイン。キャリア初期の豪ドル高の時期にさらに稼いでいれば、このリストでより上位に入っていた可能性がある。
しかし、彼女は年を重ねて円熟味を増し、2歳時に重賞勝ちを収めていたにもかかわらず、最良の成績は6歳から7歳で達成された。昨年のジ・エベレストでの勝利でキャリアを締めくくったが、それと同時に同レースがG1へ昇格後初の勝ち馬となった。

15. ゴールドシップ
賞金総額 (USD) | $15,774,364 |
国 | 日本 |
調教師 | 須貝尚介 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2013) |
現役期間 | 2011-2015 |
出走国 | フランス、日本 |
日本で走った競走馬の中でも屈指の人気を誇った彼は、常軌を逸した“問題児”ぶりと同時に、抜群の才能でも知られていた。戦績は華々しく、皐月賞と菊花賞というクラシック二冠に加え、有馬記念、宝塚記念2勝、天皇賞(春)などを制覇。
しかも、2015年の宝塚記念で1番人気に推されながら発馬で後方に立ち上がるアクシデントさえなければ、総賞金でテイエムオペラオーを抜き、歴代トップ10入りしていたはずだ。その一戦は今も日本で「120億円事件」として語り継がれている。

14. キタサンブラック
賞金総額 (USD) | $15,782,342 |
国 | 日本 |
調教師 | 清水久詞 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2017) |
現役期間 | 2015-2017 |
出走国 | 日本 |
キタサンブラックは、この中で2頭しかいない親子でトップ20入りを果たしている1頭だ(もう1頭はオルフェーヴルで、産駒のウシュバテソーロがランクイン)。現役時代はスタミナとしぶとい末脚で有名だったが、種牡馬としてその持ち味が真価を発揮しつつある。
現役ではジャパンカップ(2016年)と有馬記念(2017年)を含むG1を7勝、2000mから3200mまで幅広い距離で実績を残した。

13. ガンランナー
賞金総額 (USD) | $15,988,500 |
国 | アメリカ |
調教師 | スティーヴ・アスムッセン |
主な勝ち鞍 | G1 BCクラシック(デルマー・2017) |
現役期間 | 2015-2018 |
出走国 | UAE、アメリカ |
ガンランナーは4歳シーズンに飛躍を遂げ、ドバイワールドカップで(これまたランクイン馬であるアロゲートの)2着に入った後、スティーヴンフォスターH、ホイットニーS、ウッドワードH、ブリーダーズカップクラシック、ペガサスワールドカップを連勝。
もし、ドバイワールドカップまで走って勝利していれば、2,000万ドルクラブの最初のメンバーになっていたかもしれない。代わりに種牡馬入りし、昨年のBCクラシック覇者であるシエラレオーネなどを輩出している。

12. ミシュリフ
賞金総額 (USD) | $16,014,185 |
国 | イギリス |
調教師 | ジョン・ゴスデン、サディ・ゴスデン |
主な勝ち鞍 | G1 サウジカップ(リヤド・2021) |
現役期間 | 2019-2022 |
出走国 | フランス、イギリス、アイルランド、サウジアラビア、UAE、アメリカ |
ミシュリフはサウジカップを制覇後、それに続いて6週間後のドバイワールドカップ開催でも勝利を挙げた唯一の馬だ。ただし勝ったのはドバイワールドカップではなく、芝2410mのドバイシーマクラシックだった。通算21戦7勝と、このトップ20の中ではやや地味な成績に映るが、狙った大レースでしっかり勝ち切った点が光る。

11. サンダースノー
賞金総額 (USD) | $16,477,425 |
国 | イギリス・UAE |
調教師 | サイード・ビンスルール |
主な勝ち鞍 | G1 ドバイワールドカップ(メイダン・2018-2019) |
現役期間 | 2016-2019 |
出走国 | フランス、イギリス、アイルランド、UAE |
サンダースノーは、現在もドバイワールドカップを2連覇した唯一の馬として名を残す。ただしその2勝を除くと、戦歴はやや見劣りするかもしれない。しかし、近年では珍しい、ダートと芝の両方でG1級戦線を安定して走り抜いた万能型の二刀流馬だ。
また、同じ月にケンタッキーダービー(ダート)と愛2000ギニー(芝)を走ったという珍しい記録も持っている。

10. テイエムオペラオー
賞金総額 (USD) | $17,021,122 |
国 | 日本 |
調教師 | 岩元市三 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2000) |
現役期間 | 1998-2001 |
出走国 | 日本 |
テイエムオペラオーは引退した時点で、競馬史上で最高賞金を獲得した馬だった。この記録は、オルフェーヴルが2013年の有馬記念を勝利して引退するまで破られることはなかった。
3歳時も安定した走りを見せていたが、真に輝いたのは4歳となった2000年。天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、そして有馬記念と、わずか5戦でこれら全てを制する驚異の連勝を成し遂げた。
特に圧巻だったのは、激戦となったジャパンカップでの勝利。この勝利により、彼は世界で初めて獲得賞金が1,000万ドルを超えた競走馬となり、アメリカの名馬シガーの記録(9,999,815ドル)をわずか185ドル上回った。

9. アーモンドアイ
賞金総額 (USD) | $17,321,627 |
国 | 日本 |
調教師 | 国枝栄 |
主な勝ち鞍 | G1 ジャパンカップ(東京・2018/2020) |
現役期間 | 2017-2020 |
出走国 | UAE、日本 |
アーモンドアイは、日本が誇る歴代最強牝馬の一頭として今なお語り継がれている。2018年には桜花賞、優駿牝馬、秋華賞を制し、牝馬三冠を達成。その年の暮れには、ジャパンカップで初の国際G1タイトルを手にした。
4歳ではドバイターフを快勝し、5歳となった最後の年には、無観客の東京競馬場でコントレイルを下す記憶に残る一戦でそのキャリアを締めくくった。

8. アロゲート
賞金総額 (USD) | $17,422,600 |
国 | アメリカ |
調教師 | ボブ・バファート |
主な勝ち鞍 | G1 ドバイワールドカップ(メイダン・2017) |
現役期間 | 2016-2017 |
出走国 | UAE、アメリカ |
今は亡きアロゲートが初勝利を挙げたのは、2016年のベルモントステークスでクリエイターが勝利するわずか数日前だった。もし彼がもう少し早く頭角を現していたなら、アメリカンファラオとジャスティファイの間にもう一頭、10年のうちに3頭目の三冠馬が誕生していたかもしれない。そして、その中でも最高の存在として語られていた可能性すらある。
トラヴァーズステークスで見せた走りは息を飲むものであり、カリフォルニアクロームとの死闘となったブリーダーズカップ・クラシックは歴史に残る名勝負だった。創設されたばかりのペガサスワールドカップを快勝し、さらにドバイワールドカップでは圧巻の勝利。まぎれもない名馬であった。

7. イクイノックス
賞金総額 (USD) | $17,760,228 |
国 | 日本 |
調教師 | 岩戸孝樹、木村哲也 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2022) |
現役期間 | 2021-2023 |
出走国 | UAE、日本 |
イクイノックスは、サラブレッドとしてのあらゆる要素を兼ね備えていた。目を奪うような美しい馬体に、勝利への強い意志、そして爆発的な加速力と長くトップスピードを持続する能力、つまるところすべてを持っていた。
皐月賞と東京優駿で喫した2敗は、いずれも不利な枠順によるものが大きかったが、4歳シーズンに入ると運すらも味方につける存在となった。
13か月の間に、天皇賞(秋)を連覇し、有馬記念、ドバイシーマクラシック、宝塚記念、そしてジャパンカップを制覇。その走りから、日本歴代最高馬という評価には届かなくとも、『史上最高クラスの馬』であることに疑いの余地はない。

6. ウィンクス
賞金総額 (USD) | $19,049,695 |
国 | オーストラリア |
調教師 | クリス・ウォーラー |
主な勝ち鞍 | G1 コックスプレート(ムーニーバレー・2015-2018) |
現役期間 | 2014-2019 |
出走国 | オーストラリア |
かつて、キングストンタウンの持つコックスプレート3勝という記録は、誰にも破られないと思われていた。だがウィンクスはそれを上回り、2018年に4連覇を達成した。
この偉業は、1300mから2200mまでの距離で世界記録となるG1・25勝を含む、33連勝という驚異の記録の一部であった。多くのレースでは持ったまま大差での勝利を収めたが、最も印象的だったのは、逆境を跳ね返して勝利したレースだ。
2017年のウォリックステークスでは、スタートで大きく出遅れながらも、同厩のフォックスプレイをゴール寸前で差し切った。まさに『奇跡の末脚』だった。
ただし、彼女にとって唯一の残念な点は、国外で一度も走らなかったことだろう。この点はゴールデンシックスティにも通じるが、ロマンチックウォリアーのように海外での実績を積んだ馬との差別化要因とも言える。
なお、ウィンクスは引退後、度々『世界最高賞金馬』と称されることがあるが、実際には金額面で頂点に立ったことは一度もない。

5. ウシュバテソーロ
賞金総額 (USD) | $19,145,239 |
国 | 日本 |
調教師 | 高木登 |
主な勝ち鞍 | G1 ドバイワールドカップ(メイダン・2023) |
現役期間 | 2019-2025 |
出走国 | サウジアラビア、UAE、日本 |
ウシュバテソーロは、2025年のドバイワールドカップで6着に入り、現役を退いた。この一戦の結果が決定打となり、賞金ランキングでウィンクスを追い越して5位に浮上した。
為替レートの関係による偶然も手伝って、日本円建てでの賞金では日本史上最高額を記録。そのため、本リスト上では必ずしも最上位の日本馬ではないが、円換算での実質的な日本最高賞金馬という称号を今も保持している。
これは、2023年のドバイワールドカップ勝利、2024年のサウジカップとドバイワールドカップでの2着、2025年のサウジカップでの3着、さらには2023年ブリーダーズカップ・クラシックでの5着など、海外での好走により稼いだ賞金が大半を占めるためだ。当時の円安が大きな追い風となった。
なお、父オルフェーヴルを実額で超えることはできなかったものの、仮に先月のメイダンであと一つ上の5着に入っていたとしても、差はわずか2万5000ドル以下にまで縮まっていた。

4. オルフェーヴル
賞金総額 (USD) | $19,290,228 |
国 | 日本 |
調教師 | 池江泰寿 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2011/2013) |
現役期間 | 2010-2013 |
出走国 | フランス、日本 |
この馬にとって、最大の問いはこれだ。2012年の凱旋門賞、あの歴史的な一戦を勝ち切っていたら、この馬はどんな記録を残していただろうか。
当時の1着と2着の賞金差は137万1200ユーロで、これは公定レートで換算すると178万9553米ドルに相当する。このレースを制していれば、彼は世界で初めて賞金2000万ドルを超える『クラブ』の一員となっていた。賞金総額は2107万9781ドルに達していたはずだ。
この記録は、2023年にゴールデンシックスティが香港マイルを勝つまで、しばらく誰にも破られなかっただろう。
現実では、オルフェーヴルは日本三冠(皐月賞・東京優駿・菊花賞)、有馬記念2勝、宝塚記念1勝、さらに凱旋門賞とジャパンカップでの2着といった実績を残し、堂々たる名馬としてそのキャリアを終えた。
そして、その栄光の座に君臨していたのはわずか1年。翌年、有馬記念を最後に引退したジェンティルドンナが、その地位を受け継ぐこととなった。

3. ジェンティルドンナ
賞金総額 (USD) | $19,691,454 |
国 | 日本 |
調教師 | 石坂正 |
主な勝ち鞍 | G1 有馬記念(中山・2014) |
現役期間 | 2011-2014 |
出走国 | UAE、日本 |
日本が生んだ歴代屈指の名牝、ジェンティルドンナは、額面上での日本馬最高賞金獲得馬であると同時に、史上最も『稼いだ牝馬』としても名を刻んでいる。
アーモンドアイと同様に、彼女も牝馬三冠(桜花賞・優駿牝馬・秋華賞)を達成。その後、2012年のジャパンカップでは、オルフェーヴルをハナ差で下し、圧倒的な強さを見せつけた。ジャパンカップを連覇した唯一の馬であり(アーモンドアイは非連続年での勝利)、その点においても際立っている。
ただし、彼女をこのリストの上位に押し上げたのは、やはり引退レースとなった2014年の有馬記念での勝利だった。
彼女はその後、世界ランキング1位の座を約10年間維持し続けることになる。ゴールデンシックスティが2023年の香港マイル3勝目で2000万ドルを突破するまで、その記録は破られることがなかった。

2. ゴールデンシックスティ
賞金総額 (USD) | $21,462,495 |
国 | 香港 |
調教師 | フランシス・ルイ |
主な勝ち鞍 | G1 香港マイル(シャティン・2020、2021/2023) |
現役期間 | 2019-2024 |
出走国 | 香港 |
かつて香港では「サイレントウィットネスほど人気を集める馬はもう現れない」と思われていた。しかしそこに現れたのがゴールデンシックスティだった。
新型コロナウイルスのパンデミックで街も世界も閉鎖される中、彼は香港における数少ない『変わらぬ希望の象徴』として支持され続けた。クラシックシリーズ4歳三冠を達成し、マイル戦では無類の強さを発揮。グッドババと並び、香港マイル3勝を達成。31戦26勝という驚異的な成績を誇った。
唯一残念だったのは、香港以外で一度も走ることがなかった点だろう。これはパンデミックによる渡航制限が主な理由であり、本来であればドバイターフは『彼のためにあるようなレース』だったはずだ。
なお、彼がランキング1位に立ったのは、2022年12月に3度目の香港マイルを制した後のことだった。しかし、その栄誉はわずか1年でロマンチックウォリアーに譲ることになる。

1. ロマンチックウォリアー
賞金総額 (USD) | $28,595,253 |
国 | 香港 |
調教師 | ダニー・シャム |
主な勝ち鞍 | G1 コックスプレート(ムーニーバレー・2023) |
現役期間 | 2021- |
出走国 | オーストラリア、日本、サウジアラビア、UAE、香港 |
ロマンチックウォリアーについて、これ以上何を語れるだろうか。
ここ2戦で『無敗神話』のベールがはがれたとはいえ、その評価はむしろ高まったと言っていい。香港の中距離路線が手薄だったとはいえ、国内で圧倒的な強さを誇っただけでなく、海外でも勝利を重ねたことこそが彼の真価を示している。
コックスプレート、安田記念、ジェベルハッタと、いずれも名だたるG1レースを制し、その強さが『偶然の産物ではない』ことを証明した。
中でも、サウジカップでフォーエバーヤングに敗れての2着は、キャリアで最も評価されるパフォーマンスの一つとされている。さらに、ドバイターフでは本調子ではないながらも、ソウルラッシュに僅差まで迫った。ちなみに、サウジカップとドバイターフを両方制していれば、賞金は3800万ドル目前にまで達していた計算になる。
しかし、そうでなくとも――彼の『世界最高賞金馬』としての座は、当面揺るがないだろう。

獲得賞金額が1000万ドルを突破した競走馬のリストはこちら: