今週末、ブエノスアイレスで行われるG1・カルロスペレグリーニ大賞は、世界との連携を深めようとする南米競馬界にとって、重要な一歩となる。
サンイシドロ競馬場を代表するこのレースは『La Gran Final(最終決戦)』と銘打って宣伝されているが、アルゼンチンの競馬シーズンは8月1日を境に年度が切り替わるため、本当のシーズン最終戦というわけではない。
しかし、この2400mのレースは大陸全土から集う、南米最高峰のステイヤーにとって年末の決戦である。今年はブラジル、ペルー、ウルグアイから遠征馬が参戦、南米で最も権威があるとされるこのタイトルを巡り、地元のアルゼンチン馬との勝負に挑む。
このレースは世界への登竜門でもある。2018年以来、ブリーダーズカップの『優先出走権』が指定されている82レースのうち、最初のレースとして開催されている。昨年の勝ち馬であるエルエンシナルは今年、この優先出走権を初めて使用。ブリーダーズカップターフに出走し、レベルスロマンスから16馬身差の最下位で走り終えた。

巨額の馬券売上が見込めるワールドプールとの提携は、このレースの重要性、そして世界的イベントとしての有望さを表している。売上の大部分は香港が担い、香港時間で日曜日の朝6時スタートという不向きな時間帯だったとしてもだ。
世界中の馬券売上が香港ジョッキークラブ主導の単一プールで合算される制度、ワールドプールで南米競馬のレースが発売されるのは、このカルロスペレグリーニ大賞が2回目だ。
南米諸国にて持ち回りで開催されるレース、ラテンアメリカ大賞が昨年10月にアルゼンチンを舞台に開催されたとき、ワールドプールで馬券発売が行われていた。売上は発売された222レース中の最下位、3330万香港ドルという平均売上に対して、たったの600万香港ドルに留まった。しかし、南米各国の馬券売上はワールドプールに統合されていないという背景があった。
今回もその状況は変わっておらず、海外からの馬券投票と国内の馬券投票は別々のプールで集計される。
売上はどうであれ、ワールドプールで発売されるという出来事は、南米競馬に対する国際的な認知を高める貴重な機会である。言語の壁、距離の壁、様々な理由で世界の競馬ファンコミュニティにとっては遠い存在と見られてきた。
では、今年のカルロスペレグリーニ大賞はどうなのか。
最有力馬と目されるエルコディゴは外枠を引いた。この馬は、ここを勝てば2024年中にG1を4勝以上した7頭目の馬となり、5勝のヴィアシスティーナとソーピードアンナ、ロマンチックウォリアー、レベルスロマンス、キプリオス、ミスターブライトサイドに肩を並べることになる。
エルコディゴのフアン・サルディヴィア調教師は、ブエンエスコセスとモゾデバーも含めた3頭態勢でこのレースに臨む。勝てば厩舎からは年内9頭のG1馬誕生となり、これはエイダン・オブライエン、クリス・ウォーラー、チャド・ブラウン、チャーリー・アップルビー、ボブ・バファート、キアロン・マーといった調教師に次ぐ記録だ。
南米競馬は世界から隔絶されているわけではない。ジョアン・モレイラ、ハビエル・カステリャーノ、シルヴェスター・デソウサのような名騎手、そして世界最多勝利記録を誇るホルヘ・リカルド騎手を輩出してきた。
BCダートマイルを制したフルセラーノ、カリフォルニアクラウンのサブサナドール、ニューヨークSのディディア、これらは今年に入ってアメリカでG1レースを制したアルゼンチン産馬の数々だ。また、アルゼンチンのG1馬、ラシティブランシュは香港ヴァーズへの出走を果たしている。

単勝21倍の人気薄ながら2022年のカルロスペレグリーニ大賞を制したザパニッシャーは、香港移籍後に馬名を改名し、今はブレイヴハーツという名前で走っている。先週の日曜日にはクラス3のハンデ戦で3着に入った。
これがカルロスペレグリーニ大賞も含めた南米競馬のレベルを物語っていると言うべきか、まだアジア圏で通用する南米産馬を発掘できていないだけなのか。それはまだ断言することはできない。
いずれにせよ、ワールドプールの後押しを受けたカルロスペレグリーニ大賞は、南米競馬が世界の舞台に足を踏み入れるための重要な一歩となることだろう。