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キアロン・マー調教師が、世界最高峰の舞台に再挑戦する。今回の主役は、これまで一度もイギリスにもオーストラリアにも足を踏み入れたことのないワールドクラスの新星、カールスパクラーだ。

米国芝マイル界のトップホース、カールスパクラーを購入したとIdol Horseに明かしたのは、張月勝(チャン・ユエション)氏が率いるユーロン・インベストメンツ。マー厩舎が新しい移籍先、6月のロイヤルアスコット初日を飾るG1・クイーンアンステークスに挑んだ後、オーストラリアへの本格参戦が予定されている。

「張氏とユーロンのためにこれほどの能力の馬を管理させていただけることを、大変光栄に思います」とマー調教師は語る。

「チーム一同、本物のワールドクラスの馬、G1・3勝馬とともに世界屈指の舞台で戦い、クイーンアンSで豪州競馬を代表できることにとてもワクワクしています」

カールスパクラーの今後には、10月にランドウィックで行われるG1・キングチャールズ3世ステークスや、11月にフレミントンで行われるG1・チャンピオンズマイルなどマイル路線に加え、ムーニーヴァレー競馬場で行われる伝統のG1・コックスプレート(2040m)に距離を伸ばして挑むプランも本格的に検討されている。

一方で、ユーロン陣営はすでに昨年の勝ち馬ヴィアシスティーナや、トップ3歳牝馬のトレジャーザモーメント、さらに北米G1馬モイラとフルカウントフェリシアといった有力馬を揃えており、戦力は十分だ。それでもマー調教師は、コックスプレートが当面の目標であると認めている。

「アスコットでの競馬の後に豪州での参戦を本格化させるのも楽しみです。最終目標はコックスプレートで、ユーロンがこのレースでの成功をさらに重ねてくれることを願っています」

その前に、同馬はロイヤルアスコット開催の開幕を飾る直線マイルのクイーンアンSを目標とする。カールスパクラーが出走すれば、このレースに出走する豪州調教馬としては初となる。2008年に勝利した豪州産馬ハラダサンはアイルランドの名伯楽エイダン・オブライエン調教師のもとで臨んでおり、オーストラリアの調教師が管理した馬ではなかった。

「海外G1の勲章はまだ我々には遠い存在です。ですが、世界との距離は少しづつ縮まっていると感じています」とマー調教師は話す。

「それがただの意識の問題なのかは分かりませんが、多くの場合はそう感じます。イギリスのニューマーケットには、現地の調教師と提携を結んで預けている馬が数頭います。決して容易な話ではありませんが、価値のある挑戦です。将来的には、ニューマーケットにサテライト厩舎を構えることも視野に入れています」

なお、マー厩舎としてのロイヤルアスコット参戦は、2023年のG1・キングズスタンドステークスでクーランガッタが11着となった一戦(当時はデヴィッド・ユースタス調教師との共同管理)に続き、今回が2度目となる。

カールスパクラーは、アメリカのチャド・ブラウン厩舎で通算12戦8勝、賞金は200万ドル近くを獲得している。近走4戦ではG1・3勝をマークしており、サラトガのフォースターデイヴハンデキャップ、キーンランドのクールモアターフマイルとメーカーズマークマイルを制した。

昨年7月以降、カールスパクラーが唯一敗れたのは、モアザンルックスが勝利した2024年のG1・ブリーダーズカップマイルでの6着だった。なおそのモアザンルックスも、今年後半にはユーロンのシャトル種牡馬として豪州入りする予定だ。

「カールスパクラーとは本当に楽しい時間を過ごしてきましたが、これはビジネスです」と語るのは、カールスパクラーの元馬主であるボブ・エドワーズ氏。

デイリーレーシングフォーム紙のデヴィッド・グレニング記者に対し、「運にも恵まれましたが、アメリカで種牡馬としてどれほど馬産地に受け入れられるかには不安がありました。ちょうど良いタイミングだったのだと思います」と売却の舞台裏を明かした。

カールスパクラーの名前は、1980年公開のゴルフコメディ映画『キャディーシャック』でビル・マーレイが演じた芝の管理人に由来する。芝のスペシャリストである本馬にとって、これ以上ない名前と言えるだろう。

なお、クイーンアンステークスの第一次登録は4月末に締め切られており、カールスパクラーの名前は当時のエントリーには含まれていなかった。そのため新たな馬主であるユーロン陣営は、6月11日までに5万3000ポンド(約1000万円)の追加登録料を支払う必要がある。

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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