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2014年の11月、ロージー・ナプラヴニク騎手がBCディスタフで勝利を挙げたとき、2日間15レースにわたるこの開催で女性騎手の勝利が10年間も途絶えると予想できたものは、決して多くなかっただろう。今年、ホリー・ドイル騎手とレイチェル・キング騎手が、その長い連敗記録に終止符を打とうとしている。

オーストラリアを拠点とするイギリス人騎手、キングは今回がブリーダーズカップ初騎乗となる。金曜日に行われるG1・BCジュヴェナイルターフでは、日本の堀宣行調教師が管理するサトノカルナバルに騎乗する。

同じくイギリス人のドイルは2020年と2022年以来の参戦となり、土曜日のG1・BCターフスプリントでは長年コンビを組んできた相棒のブラッドセルに騎乗する。

1984年の創設以来、ブリーダーズカップに騎乗した女性騎手はドイルが10人目、キングが12人目となる。記念すべき1人目はジュリー・クローン騎手、2003年にはハーフブライドルドに騎乗してG1・BCジュヴェナイルフィリーズで待望の女性騎手初勝利を挙げた。その9年後、ナプラヴニクが2012年のG1・BCジュヴェナイルをシャンハイボビーで制し、2人目の女性騎手制覇となった。

Halfbridled and Julie Krone
JULIE KRONE, HALFBRIDLED (R) / G1 Juvenile Fillies // Santa Anita /// 2003 //// Photo by Matthew Stockman
Rosie Napravnik wins at the Breeders' Cup
ROSIE NAPRAVNIK, UNTAPABLE / G1 Breeders’ Cup Distaff // Santa Anita /// 2014 //// Photo by Harry How

ナプラヴニクがそれから2年後にアンタパブルでBCディスタフを制したとき、騎手という仕事の男女の壁は急速に壊されつつあるように思えた。しかし、実情はあまり変化していない。1988年から2014年の間に8人の女性騎手がブリーダーズカップ初騎乗を果たしたが、2014年以降は3人まで減ってしまった。初騎乗の女性騎手は約3年半に一人、過去10年間変化は見られない。

北米にはトップクラスの女性騎手が不在となっている。しかし、競馬界にはドイルとキングという世界的な注目を集める女性騎手が2人現れており、クローンやナプラヴニクのようにG1レースでも実績を残している。

トップレベルの女性騎手は依然として少数派だが、それでも大レースでの女性騎手の活躍が増えているのは良い兆候だ。実際、ドイルやキングもブリーダーズカップでの女性騎手の少なさは気にしていないという。

水曜日の朝、デルマーでブラッドセルの調教を手伝う前にIdol Horseの取材に応じたドイルは、「気にしたことはないですね」と答えた。

「もちろん、ブリーダーズカップでの勝利は格別ですし、騎手としての目標です。外から見ると大きなことのように見えるかもしれませんが、自分にとっては仕事の一つであり、目標です」

Hollie Doyle wins on Nashwa
HOLLIE DOYLE, NASHWA / G1 Prix de Diane // Chantilly /// 2022 //// Photo by Julien De Rosa

キングも同様だ。騎手の一人として仕事に取り組むプロのアスリートであり、そこに男女の差はない。女性騎手として歴史に名を刻むことは、レースに臨む立場として考えていないと話す。

「それは考えていないですね。私が勝ったG1レースなんて、その殆どは自分が初の女性騎手ウィナーです。ですから、レース前に意識することはありませんし、考えもしません。レースに参加できることが嬉しいですから。もし、そうなれば無視はしませんが、レース前は気にしていないですよ」

キングは今週、サトノカルナバルの調教を複数回手伝っている。7月中旬のG3・函館2歳ステークスは新馬戦に続いて連勝、キングは仕上がりについて満足していると話す。

「今朝の走りは最高でしたね。今週は2度目の騎乗ですが、全て順調で、落ち着きもあります。こちらに来てからも順調ですし、金曜日に向けて準備は整っています」

Satono Carnaval and Rachel King at the Breeders' Cup
RACHEL KING, SATONO CARNAVAL / Del Mar // 2024 /// Photo by Shuhei Okada

キングの起用は日本の競馬ファンにとって驚きも多かったが、今年初めの短期免許来日で16勝を挙げたことがきっかけだったという。

「堀先生とは親しいですし、日本でも彼の馬によく乗せてもらいました。彼が海外に遠征させる場合、たとえテン乗りでも自分がよく知る騎手を使いたがるので、それで私に機会が回ってきました」

一方、ドイルはBCターフスプリントでブラッドセルに騎乗し、4度目のG1制覇を狙う。土曜日には前座としてG3・ゴルディコヴァステークスも組まれているが、ここで騎乗する3歳牝馬のカトマンズにも期待を寄せている。

「実はかなり気に入っているんです。2ターンのマイル戦は得意だと思います。フランス1000ギニーでは僅差の2着だったので、ここでもやってくれると期待しています」

ブリーダーズカップを終えると、キングとドイルの2人はメルボルンカップに向けて、オーストラリアに飛び立つ。ドイルは、火曜日のG3・ジーロングカップを制し、優先出走権を手にしているハリー・ユースタス厩舎のシーキングに騎乗するという。

「この馬は軽ハンデが見込まれているので、私に白羽の矢が立ったのでしょう」とドイルは語る。

「メルボルンカップの乗り馬はずっと探していたのですが、数日前には半ば諦めていました。出走馬の鞍上は埋まっているものだと思っていましたから。ですが、こうやってチャンスが回ってきましたので、何が起こるかは分からないですね。勝つためには乗らないと始まらないですから」

「昨年はキアロン・マー調教師のフューチャーヒストリーに騎乗しましたが、あれは良い経験でした。こうした大レースには乗れば乗るほど、いつか本当の大チャンスが訪れたときに機会が巡ってくるかもしれません。そのために経験を積んでいるのです」

Hollie Doyle rides in G1 Melbourne Cup
HOLLIE DOYLE, FUTURE HISTORY / G1 Melbourne Cup // Flemington /// 2023 //// Photo by George Sal

同じく軽い斤量でも乗れるキングはザマップ、ジェイミー・カー騎手はオキタソウシに騎乗する。今年は24頭の出走馬のうち、3頭の鞍上が女性騎手となりそうだ。メルボルンカップの長い歴史の中で女性騎手が制したのは、2015年のミシェル・ペイン騎手が唯一となっている。

フレミントンでの騎乗を終えると、ドイルは日本に向かい、短期免許を取得して11月から12月までのJRAで騎乗する。キングも1月から2月にかけて短期免許を取得し、日本で騎乗する予定だ。

このスケジュール自体が、女性騎手も男性騎手と同じ舞台に立っているという点で、競馬界の進歩を象徴している。ブリーダーズカップでの女性騎手の勝利は長い間待ち望まれているが、その待望の日は遂に来るのか。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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