レイチェル・キング騎手は来月、オーストラリアでのチャンスを捨てて、アメリカで歴史的偉業を狙う。
地元で行われるフレミントン競馬場のヴィクトリアダービーデー、ローズヒル競馬場のゴールデンイーグルデーという2つの一大イベントではなく、アメリカのブリーダーズカップに挑戦することを選んだ。
キングは、11月1日にデルマー競馬場で行われる1マイルのG1・BCジュヴェナイルターフで、堀宣行厩舎のサトノカルナバルとコンビを組む。BCの40年以上の歴史において、オーストラリアを拠点とする騎手が騎乗するのは初だ。
そのため、昨年ビョルン・ベイカー厩舎のオズモシスで制したフレミントンのG1・クールモアスタッドステークス(1200m)は騎乗不可能となり、騎手としての連覇の夢は諦めることになる。
キタサンブラック産駒の良血2歳馬、サトノカルナバルの遠征は堀調教師にとっても初のアメリカ遠征となる。しかし、これまでにモーリス、ネオリアリズム、サトノクラウンで香港のG1を計5勝、リアルインパクトではオーストラリアのG1・ジョージライダーステークスを制しており、海外遠征に不安はない。
堀調教師はこれまでオーストラリア、香港、サウジアラビア、ドバイに管理馬を送り込んでいる。G1またはG2での出走に絞ると、出走27回で6勝、2着5回に3着7回、4着2回という成績を上げている。
また、サトノカルナバルは日本からカリフォルニアに向かう19頭のうちの一頭だ。過去最多となる遠征軍の中でBCジュヴェナイルターフに出走するのはこの馬のみだが、2歳馬は6頭が含まれている。
デルマーでは3度目の開催となる今年のブリーダーズカップでは、BCジュヴェナイルターフは2日間開催の初日、『フューチャースターズフライデー』の最終レースに予定されている。現地時刻の午後5時25分、オーストラリアでは土曜日の午前11時25分の発走予定となっており、スケジュール的に2カ国での騎乗は叶わない。
11月初週の火曜日に行われるメルボルンカップでは、ビョルン・ベイカー厩舎のG2・ブリスベンカップ勝ち馬、アレグロンに騎乗する。アメリカでは、ライアン・ムーア騎手(ヤンブリューゲル)、ウィリアム・ビュイック騎手(ヴォーバン)といった、メルボルンカップへの遠征馬に騎乗するライバルたちとも一戦を交えることになりそうだ。
イギリス出身、2015年からオーストラリアに拠点を置く34歳のキングは、昨年札幌で行われたワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)で僅差の2位と健闘を見せ、日本で脚光を浴びるキッカケとなった。
今年初めには短期免許で来日、139レースで16勝、入着29回という成績を残した。チャックネイトで勝ったG2・アメリカンジョッキークラブカップ(2200m)、サクラトゥジュールで勝ったG3・東京新聞杯(1600m)もその中に含まれており、この2勝はいずれも堀厩舎の馬での勝利だ。
サトノカルナバルは今年の6月、同じくオーストラリア拠点のダミアン・レーン騎手とコンビを組んで1400mの新馬戦を7馬身差の快勝。2戦目のG3・函館2歳ステークスでは、佐々木大輔騎手の手綱捌きで1200mに距離短縮した一戦を制した。