高額賞金レース全盛期時代にあっても、ニューマーケットハンデキャップの格は揺るがない。
このレースがフレミントン競馬場で初めて開催されたのは151年前。華やかなシドニーの新設レース、ジ・エベレストのように高額賞金を誇るわけではないが、『ザ・ストレート・シックス』を使って行われるこのレースはオーストラリア競馬の魅力、つまりは多頭数、幅広い斤量、この国の競走馬が最も得意とする1200mという距離、そして国内屈指の名門競馬場の全てを凝縮したレースだ。
ニューマーケットHというレース名自体は珍しいものではなく、オーストラリア国内には14もの『ニューマーケットハンデキャップ』が存在する。しかし、単に『ニューマーケット』と言うならば、それが指すのはフレミントンのこのレースにほかならない。
意外なことに、競馬の本場、イングランドのニューマーケットとの直接的な関係はなく、その名はかつてオーストラリア最大の畜産市場だった施設に由来する。1850年代に『ニューマーケット』として知られるようになったその場所は、競馬場のすぐ向かいに位置していた。
オーストラリアでは「スプリンターのメルボルンカップ」とも称されるこのレースは、メルボルンC以外で唯一、最大24頭が出走可能なレースだ。ただし、実際にフルゲートとなったのは1990年が最後である。
その栄誉ある勝者一覧には、重い斤量を跳ね返した名馬や、絶妙なハンデを活かして勝利を手にした伏兵たちの名前が並ぶ。

ブラックキャビアのような名馬もいれば、2002年のルビターノのように、斤量の軽さを武器に勝ち馬8頭が1馬身以内にひしめく大接戦を演じた例もある。
また、このレースは種牡馬の輩出にも寄与している。例えば、カーインライジングの父として知られるシャムエクスプレスも、その一頭だ。さらに、ハンデ戦であるがゆえに、小規模な厩舎の馬でも強豪勢力と互角に戦う機会を得られる。
今週の土曜日は、ちょうど50年前にカップダンティーブがフレミントンの短距離二冠(ライトニングステークス・ニューマーケットH)を達成した記念日でもある。さらに驚くべきことに、この馬は前年の春にはG1・VRCオークス(2500m)で2着に入っており、翌週にはニューマーケットの2000mのレースに出走し、勝利を収めている。
こうしたタフなローテーションは、現代の競馬ではほとんど見られなくなった。また、ニューマーケットHの勝ち馬が同じ年にメルボルンCへ挑戦することも考えにくい。しかし、1884年にはマルアがこの偉業を達成し、史上唯一の両レース制覇を成し遂げた。
1991年には、シャフツベリーアヴェニューがライトニングSとニューマーケットHの二冠を制し、さらには距離を延長して日本のジャパンカップ(芝2400m)に挑戦。結果、ゴールデンフェザントの3着と健闘を見せた。
近年では、このレースがオーストラリア勢のロイヤルアスコット遠征の重要な試金石となっている。ニューマーケットの勝ち馬であるテイクオーバーターゲット、ミスアンドレッティ、シーニックブラスト、ブラックキャビアはいずれも英国に遠征し、南北両半球での勝利を経験している。
香港との関係も深い。かつてシャティン競馬場を拠点としたレッドカークウォリアーは、2015年の香港ダービーで1番人気に推された後、オーストラリアへ移籍。2017年と2018年にニューマーケットHを連覇し、同レースの複数回優勝馬としては5頭目となった。特に2017年には、休み明け初戦での勝利を達成。これは100年ぶりの快挙だった。

今週土曜日には、カリス・ティータン騎手が香港から遠征し、クリス・ウォーラー厩舎のギャツビーズに騎乗する予定だ。香港からの短期遠征騎手がこのレースを制すれば、2014年にジョアン・モレイラ騎手が同じウォーラー厩舎のブレイズンボーで勝利して以来、10年ぶりの快挙となる。
週末に向け、北部のブリスベンではサイクロンの接近が予報されているが、メルボルンの天候は晴れとなる見込みだ。これは、15年前の惨劇とは大きく異なる。当時、レースの最中に激しい雹が襲い、19頭の出走馬が文字通りスケートリンクの上を滑るような状態になった。
今週のフレミントン開催では、オーストラリアの高額賞金レースの代表格であるG1・ジ・オールスターマイルが最高賞金額を誇るレースとして行われる。しかし、ニューマーケットHは、その歴史と格式の高さから、依然として最も注目を集めるレースであり続けている。