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アルベルト・サナ騎手の徹底したフィットネス習慣を止めるのは、簡単なことではない。

イタリア出身のサナは、香港時代は調教の合間に山を走り、カタールでは砂漠地帯の道路を何時間も自転車で走るなど、トップレベルの身体能力を維持するための鍛錬を欠かさないことで知られている。

だが、警報が鳴り、アラビア半島の青空にパトリオット防空システムがイランのドローンやミサイルを迎撃する爆発音が遠くに響く情勢下では、今は慎重に動くべき時だと悟る。

政府の助言に従い、ロードバイクは埃をかぶったまま。アルライヤン競馬場とアルウクダ競馬場の開催も中止される中、競走馬たちは今も運動を続けているが、自身は日課だった調教騎乗を休止した。

その代わりに、カタールのザ・パール地区にある家族で暮らすアパートのバルコニーで、エアロバイクをこいでトレーニングに励んでいる。

穏やかなターコイズブルーの海、白金色の砂浜、緑の公園、まばゆい陽光を反射するガラスと鉄の高層ビル群。いかにも21世紀のアラビア湾岸らしい景色だ。そこへ、警報が鳴る。

全員の携帯電話に一斉に警報が入り、けたたましいアラート音とともに、ミサイルとドローン攻撃が迫っていることを知らせるメッセージが表示される。終われば、今度は別のメッセージで警報解除が伝えられる。

ALBERTO SANNA / Doha, Qatar // 2026 /// Video supplied

攻撃の標的は、彼のいる場所から約45km、アルライヤン競馬場からも約20km離れた、首都ドーハの反対側にある米軍基地だとサナは話す。そうした距離感もあり、カタール競馬で2度のチャンピオンジョッキーに輝いたサナは、基本的には安全で守られていると感じているという。

遠くの爆発音について、彼は「雷雨みたいなものです。音も雷雨に似ています」と語る一方、1985年生まれで、安全なイタリアのサルデーニャ島で育った人間にとって、これがどれほど異質な体験かも口にする。

「よりストレスになるのは、やはり警報が鳴る瞬間です」とサナは話す。

「大体、3分から5分ほど前に警報が来ます。携帯をスリープにしていても、音を消していても、部屋中の携帯が一斉に鳴り始めるんです。それが、やっぱり少し怖い。それからミサイルが来るのを待つことになるんですが、ありがたいことに、パトリオットがすべて迎撃してくれています」

これが、もうほぼ2週間にわたる日常だ。恐怖と安心感が同居し、それでも爆撃に晒されるテヘランほどではないと感じてしまう。そんな非現実的な暮らしが続いている。

「今日もすでに2回ありました。今朝8時15分ごろに1回、そしてつい15分ほど前にも、また攻撃がありました。でも、ミサイルは迎撃されていますし、これが始まってからでも、人への被害は軽傷者が8人だけだったと思います」

「つまり防空システムはきちんと機能しています。ただ、人々もかなり意識していますし、強い不安もあります」

「外に出ること自体は安全だと思いますが、皆、理由もなく外には出ません。政府も必要な時以外は外出しないようにと言っているので、その指示に従っています」

サナ夫妻は、屋外にいる時間を減らすため、食料品の買い出しは週1回だけにする生活リズムに入った。カタール国内では学校も閉鎖されているため、子どもたちはオンライン授業に切り替えている。

そんな状況の中で、まるで影響を受けていないように見えるのが、家族で飼っている3歳の犬、白い顔をしたウィペットのモネだ。

子どもたちがギャラリーでその画家の作品を見たことから、印象派の巨匠にちなんで名付けられた。

「いつも寝ています。ウィペットは寝るのが大好きなので、こういうことは気にしません。外に出ても2分くらい走ったら、もう家に帰って寝たがる。ただ寝るのが好きなんです。自分のペースで生きています」

ALBERTO SANNA, RUSSIAN EMPEROR / Photo by Qatar Racing & Equestrian Club

サナ自身も睡眠時間は増えている。だが、良い睡眠ではないという。健康状態とフィットネスを把握するために使っているテクノロジーが、そう示している。

彼が使っているのは『Whoop』というアプリで、ジョッキーやサッカー選手を含む多くのアスリートが利用している。

「負荷、心拍数、回復状態を追跡できます。オーバートレーニングを防ぐのにとても役立ちますし、レース中の負荷も追えます。レースでも使える唯一のデバイスです」

「消費カロリーも分かりますが、レースの日にどれだけカロリーを消費するか、想像できないと思います」

「今ではダートで乗る日の方が芝より多く消費するのも分かっていますし、シーズン序盤は暑さも強く、オフ明けで体力もまだ万全ではないので、その日は5300キロカロリー以上消費することもあります」

だが、その基本データは同時に、サナ自身が気づかないうちに、紛争地にいることの無意識のストレスで身体面にも影響を受けていることを示している。

「僕はいつもトレーニング後の回復を確認しますし、Whoopでデータも確認します」

「普段はだいたいいつもグリーンゾーンなんです。よく眠れて、よく回復している。でも今は、この状況のせいで回復がイエローで、時にはレッドゾーンになることもあります」

「睡眠時間自体は長くても、それが回復につながる睡眠ではないからです。常に警戒していて、次に何が起きるか分からないですから」

この状況の数少ないプラス面は、サナが先月負った足首骨折から、よりしっかり回復する時間が取れていることだろう。だがその裏返しとして、怪我でシーズンの一部を棒に振り、今度は戦争による中断も重なってしまい、収入面には影響が出ている。

「ここでシーズンが再開されるか様子を見ますが、もし無理なら、騎乗を続けるためにヨーロッパへ戻るつもりです。怪我で戦線離脱していましたから、どこかの時点で戻って、また乗り始めないといけません」

「こんなに長く競馬から離れているわけにはいきません。でも、この時期は家族みんなとここにいて、より安全に過ごす方がいい。だから、この先どうなるかを様子見していくしかありません。数時間後のことも、数日先のことも、誰にも分からないのですから」

サナのもとには、バーレーン競馬で騎乗しないかという打診もあった。だが、そこも後に競馬開催が中止となった。この情勢下でサウジアラビアを車で抜け、全長25kmの連絡橋を渡ってバーレーンへ向かう気にはなれず、その話を断った。

そして、カタールとバーレーンで競馬開催を中止したのは正しい判断だったと考えている。

「レース中に、頭上で迎撃の爆発音が響くかもしれない状況で、どうやって騎乗するんですか。馬の上では時速70km近く出ていますし、馬は平均でも440kgほどあるんです。頭上でそんなことが起きていたら、集中なんてできない。自分の仕事にとっても、ほかの人にとっても危険になり得ます」

「今は昔と比べても分別があります。無茶はしません。この状況は先が読めないのだから、次に何が起きるか様子を見るべきです」

「結局のところ、競馬は僕たちにとってとても大切ですが、あくまでスポーツです。それを忘れてはいけません。何より大切なのは命です」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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